【感想】隠れた人材価値

ジェフリー・フェファー, チャールズ・エー・オライリー, 有賀裕子, 廣田里子, 長谷川喜一郎 / 翔泳社
(14件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • 小野不一

    小野不一

    統治形態には王政、貴族政、民主政がある(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。これを意思決定の形態と考えてみよう。
    https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/11/08/143719続きを読む

    投稿日:2023.11.12

  • 横

    本書は、1990代の米国企業における、人材という名の経営リソースに関する、ベストプラクティス論である。企業毎に記述があるが、全体の整合性を考えることを考えると、つらいものがありました。

    もちろん、他人の会社を外から見ただけでは、わからないこともあり、担当したポジションや、その時代からも同じことは言えないことはわかっている。
    各社のその当時の状況をそれそれ眺めてみて、項目というか、評価点を並べ替えてみた。
    だが、そのすべてを検討し、実施することはできない。その企業の価値観文化にはじまる制約が、その実行用件をきめるのである。

    総括
    ・秀逸な米企業であるにもかかわらず、極めて「日本的」な面をも持ち合わせている
    ・真の競争優位とは、優れた戦略ではなく、優れた実行力によってもたらされる、そのためにも、その優れた実行力を発揮するためには、すべての社員の資質を生かし切ることが求められる。
    ・いい業界とは、高い参入障壁があり、サプライヤーや顧客との関係で市場支配力がありライバルが限られている業界をいう
    ・スキルやノウハウが需要な業界では、優秀な人材さえいれば、結果は自然とついてくる
    ・成功のカギは、価値観を現実に、整合性、言動一致

    企業が成功しつつけるための条件とは
    ・優れた人材を引き付け放さないようにすること
    ・設立から20年以上のもの間、離職率は、一度たりとも、5%を超えたことはなかった。
    ・全社員を平等・公平に扱うこと、社員一人一人を責任ある大人として扱うこと
    ・社員に敬意を払い、愉しみながら仕事をしてもらうこと、カギを握るのは、「信頼」、そして、「互いの尊敬」である
    ・社員に権限と成果責任を与えること
    ・組織はフラットで、会社は3事業部門、本社の規模は小さい

    価値観・企業文化、あるいは仕事の哲学
    ・原点は、「自社にとって重要なのは何か」という価値観、社員の心を熱くし、そのポテンシャルを引き出せるような価値観にある。
    ・戦略が重要でないのではなく、戦略に関わる意思決定より、価値観を指針に経営を進めること、価値観に従って行動するように人材開発を行うことを重視する
    ・価値観と制度や実践との間を貫く整合性を保つ
    ・退職までに、3ないし4の業務を経験させることが標準的なキャリアコースとなっている
    ・マネージャーであっても、管理に特化せず、自信の担当業務をもっている
    ・価値観がなくしては、ビジネスはただの金儲けとなってしまいます
    ・アカウンタビリティを重んじ、レスポンシビリティを負うことを重んじる文化である
    ・オープンブック・マネジメント 経営情報を社員に開示して、経営者や株主と同じ視点を従業員にももってもらう
    ・4つの基本的な価値を大事にする ①誠実、②公平、③楽しさ、④社会的責任
    ・仕事の哲学 ①私たちの真価と尊厳を認める ②一人一人の成果を高める ③チームの成果を高める ④作業環境を改善する
    ・レイオフはしない 公正、信頼、相互の尊敬の文化を確立する
    ・企業の成功のカギは、人材獲得競争を勝ち抜いたのではなく、現在の社員を活用し、教育し、意欲、やる気を引き出したから

    採用
    ・物の分かった人材を採用し、ふさわしい処遇をすれば、理にかなった行動を取るものだ
    ・非常に厳格な選考をおこなっている
    ・効果的な業務実績と行動を生み出す要素は何かを明確につきとめるために、選考基準の検討、面接マニュアルに長い時間をかけてきた
    ・チームの一員となって働く才能が重要
    ・人間としての姿勢がよくない人にどんなにスキルがあっても要りません。訓練次第でスキルアップは可能ですが、人間としての姿勢を変えることはできないためです。
    ・MBAの取得者が採用されることはめったにない
    ・MBAを採用したことがないわけではありませんが、みんなだめだったのです。連中は、何でも自分が答えを知っているという思い込みでごりごりに固まっていて頑として譲ろうとしないんです
    ・採用は新卒者優先です
    ・特定のスキルを重んじるのではなく、全般的な能力、資質、企業文化との相性に着目する
    ・技術的なスキルは入社してから身に着ければよい
    ・採用してはいけない人 ①不満ばかり、②ハッピーでない、③批判ばかり、④責任をとらない、⑤正直でない、⑥周囲を信頼しない、⑦作業待ち、自分から仕事しない、⑧融通効かない、自分の仕事でないという
    ・現業部門のマネージャーが、必要な人材を発掘・勧誘する責務を負う
    ・面接では必ず、候補者の長所と短所を記録する

    買収、統合
    ・敵対的な買収は行わない、そのために買収プロセス全体に通じて誠実さと信頼を大切にする、そして、できるだけ多くの社員に残ってもらえるようにする
    ・買収された企業の社員にはっきり伝える「臨機応変さと前向きさをできるだけ身につけるようにしてください、それがご自身のためです」
    ・買収したトップを引き付けておくことができなければ、一般の社員がついてくることはない

    教育・訓練・研修
    ・優れた人材を育てること
    ・他社より優れた人材を採用しているわけではなく採用後で社員の熱意や才能を引き出しているのである
    ・企業文化を重視しているので、教育研修は非常に大切である
    ・顧客サービスの質は社員サービスの質以上にはよくならない
    ・社員に失敗させて、その失敗から学ばせる
    ・内部の研修、および懇親会で対応、外部研修は利用していない
    ・社員に力を貸し、協力し、バックアップし、誰も考えてもみなかった人材に仕立て上げること、この会社こそ、人材育成会社である
    ・他人とは違う方法であるところに企業の競争優位が培われる、そのやり方を研修によって身につけること
    ・研修で、仲間、人間関係を形成する。教えることと、学ぶことは別と考える
    ・社員に大きな責任を与えること、新しい仕事を与えること、自分の判断に責任を持たせるようにすること、このことが社員に学習の意欲を芽生えさせ、将来のリーダーとして育てる最良の方法
    ・チームワークを重視する人を採用する
    ・終身訓練制度 問題解決、創造性、品質改善、産業工学、リーダーシップ

    処遇
    ・社員の熱意を高める
    ・知的資本のポテンシャルを解き放つことを重視する
    ・協調的な労使関係を維持するために、協約交渉に入る前に差し迫った問題を徹底的に調べ、従業員調査を行っている
    ・風通しのよさ
    ・ロイヤルティの高い社員の基盤がなければ、ロイヤルティの高い顧客基盤を維持することはできない
    ・社員が内部のものを着服したり、盗んでも、初犯でただちにくびになるとは限られない。金銭的に困っている社員には、無利子のローンを用意している
    ・社員が上司をくびにすることができる
    ・社員をサポートする仕組みを用意して成果が達成できるように支援する

    チーム
    ・必要な作業を、チーム全員で行っている
    ・社員志向の様式は、インフォーマルで平等主義的である。
    ・パート社員はほとんどいない、また、外部委託もそう多くはおこなっていない(自前主義)
    ・店舗で働く社員はみな店長と友達同士になれる、店長も地区のマネージャーと親しくなれる
    ・チームプレーヤーとして、チームーの利益を優先する。スタンドプレイを好んだり、目立ちたい、スター扱いされたいという人材は敬遠
    ・仕事は、個人ではなく、チームを基本とすること
    ・チームや、会社全体で情報を開示し、情報を共有する
    ・仕事が難しすぎたり、安全に問題があれば、チーム全体で仕事の進め方を見直す
    ・現場の従業員が、驚くほど、作業のしやすいシステムにすること
    ・作業を安全に、効率的より遂行するため、絶えず、努力を行うこと
    ・チームの根幹にあるもの、助け合い、友情、規律の正しさ、誠実、一生懸命さ、生産性と品質の重要性の強調

    マネジメント
    ・手法を「知る」だけではなく、「実践」しないことには成功は望みえない
    ・経営者の関心とは、①社員の監視制度への工夫、②人事採用や監視をしやすくするために自由裁量をへらし、業務の標準化をすすめる、③インセンティブ制度の導入、④部下の行動の監視、仕組みの導入
    ・厳しく監視されると、人々はモチベーションを失い、熱心に仕事をしていた社員ですら手を抜き始める。
    ・飛行時間、すなわち業務時間に応じた報酬を受けている
    ・資産の有効活用と可変費用の抑制
    ・事業計画を業界の動向に合わせ、1年から、四半期へと変更した
    ・必要なのは、マネージャーではなく、リーダーである
    ・カイゼンをおこなうこと、あらゆるところにひそむ無駄の追求と除去の徹底
    ・押し付けではなく、みなが自分の考えを胸を張って発言する機会を与える
    ・職種を減らす、自働化、自動化、品質の重視、IEを使った職務の設計と改善を管理する

    目次
    日本語版の刊行によせて
    はじめに
    第1章 人材VS組織
    第2章 サウスウエスト航空
    第3章 シスコシステムズ
    第4章 メンズ・ウェアハウス
    第5章 SASインステチュート
    第6章 PSSワールド・メディカル
    第7章 AES
    第8章 ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング・インク(NUMMI)
    第9章 サイプレス・セミコンダクター
    第10章 すべての社員の持てる真価を存分に引き出す
    解説 長谷川喜一郎
    訳者あとがき

    ISBN:9784798102245
    出版社:翔泳社
    判型:4-6
    ページ数:400ページ
    定価:2200円(本体)
    発行年月日:2015年12月10日第12刷
    続きを読む

    投稿日:2023.04.22

  • hikari1234

    hikari1234

    優れた企業の特徴は、社員の中に秘められている価値を引き出し、才能をフル活用している点にあります。会社の基盤となる価値観が、社員中心主義であることにより日常の細かい経営慣行がその価値観と一致していると説いています。推薦者:『人事課』続きを読む

    投稿日:2017.02.01

  • komoda

    komoda

    Hidden value:
    How Great Companies Achieve Extraordinary Result with Ordinary People ―
    http://books.shoeisha.co.jp/book/b72917.html続きを読む

    投稿日:2013.10.22

  • yu1kato

    yu1kato

    組織内で高い価値を持つ人材を育てていくために必要な要素は以下3点。
    ①明快な言葉で表明された価値観
    ②価値観と経営慣行の一貫性・整合性
    ③経営陣はマネージャーではなくリーダー

    組織のコア・バリューを経営戦略に的確に落とし込むことは何にも増してハードルが高いと思った。価値観を表明することは簡単だが、それと一貫した制度・仕組みを構築することは難しい。
    今自分がやっている「組織内で効果的に人を成長させる」ことをいかにして行っていくのか、ヒントになるポイントは数多く拾うことができた。
    まずは現状を整理し全てに対して理念への帰着がしっかりと為されているかを精査することが必要。

    今読めてよかった。今後の活動に着実に活かそう。
    続きを読む

    投稿日:2013.08.12

  • hideoshoji

    hideoshoji

    明快な価値観が示されており、経営陣が実践しており、社員がそれを共有していること。その価値観に基づいて、日々の経営慣行に強い一貫性があること。それらが「平均的な人材に秘められた価値」を引き出し、高い成果につながる。そのような企業における「採用」は、ただ優秀な人材を獲得するのではなく、その価値観を共有できる人材であるか(でないか)を見極めることが重要になる。続きを読む

    投稿日:2013.05.19

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