【感想】テロと文学 9.11後のアメリカと世界

上岡伸雄 / 集英社新書
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • kazzu008

    kazzu008

    いろいろな意味で9.11は世界を変えてしまった。ジェット旅客機がツインタワーに突っ込む光景は、あの時代に生きていたすべての人の脳裏に消すことのできない光景を焼き付けている。

    たまたま9.11の10日前に僕はニューヨークのマンハッタンにいたし、10年後の2011年にもニューヨークに住んでいて、そこで働いていた。このブクログの自分のアイコンも当時ニューヨークで見つけた絵を使っている。ニューヨークにとって9.11は今でも消すことのできない悪夢だ。

    この本は、9.11後の各作家たちが描いた小説を紹介している。アメリカ人作家だけでなく、イスラム圏の作家の小説も紹介しており、いろいろな角度から小説を紹介している。

    残念ながらここに紹介された小説は翻訳ものも含め一つも読んだことがないが、ぜひ、読んでみようと思う。とりあえず下記の書いたのを優先的に・・・。

    ○9.11の当日を描いた『墜ちていくゆく男』ドン・デリーロ著
    ○9.11で父親を失った少年の心情を描いた『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ジョナサン・サフラン・フォア著
    ○9.11メモリアルを建設する際の人々の葛藤を描く『サブミッション』エイミー・ウォルドマン著
    ○9.11の現場に駆け付けた警察官が精神の均衡を失っていく状況を描いた『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター著
    ○イスラム圏にルーツを持つ青年が住んでいるアメリカに幻滅していく状況を描いた『コウモリの見た夢』モーシン・ハミッド著
    ○一兵士の視点から描いた『一時帰還』フィル・クレイ著
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    投稿日:2019.02.25

  • stratton

    stratton

    著者は、2012年9月から2013年3月まで米国ニュージャージーの大学に滞在した米文学者。そこでの研究テーマは「9.11テロ事件後の文学」。
    映画化され、日本でも公開になった『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』をはじめ、9.11を扱った小説を取り上げて、テロに対して文学に何ができるかを検証している。かつてピカソが「芸術は飾りではない。武器だ」と語ったとされているが、著者のインタビューに応じた作家たちからはこの文学版とも言える言葉があふれ出る。「歴史において、人生において、われわれの時代を反映する最も強力な没入型の方法は今でも文学」「文学は他者の経験に共感するような形で関わる機会を与えてくれる」
    なにも9.11に関わる文学でなくても到達できそうなポイントではあるが、読後に残ったのは文学が持つ強さや永続性。もちろん、9.11ならではの指摘、すなわち、アラブ系やパキスタンの作家が描いた9.11の視点や、徴兵制がなくなった後の戦争小説の質の変化など、興味深いものもいろいろある。しかしながら、読後にもっとも強く残ったのは、やっぱり小説を読み続けようという思い。中途半端なビジネス本を3冊読むよりは良質な小説を1冊読みたい、と常日頃思っているのだが、その意をますます強くした。
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    投稿日:2018.11.18

  • kyokosue

    kyokosue

    日本を代表する米文学者・上岡伸雄先生の名著。複雑化しているアメリカと中東との関係性やテロの問題を、文学という切り口で多角的に論じている。第1章から終章まで、一分の隙もない緻密な論理展開で構成されており、一冊の本として非常に完成度が高い。本書の結論に当たる部分は、文学の力を切々と訴える名文である。続きを読む

    投稿日:2016.03.21

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