【感想】老人と宇宙

ジョン スコルジー, 内田 昌之 / ハヤカワ文庫SF
(51件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
15
19
13
1
0
  • ゼロ年代SFの傑作、SF好きなら読むしかないでしょう!

    さすがにヨボヨボの老人が戦争するはずないとは思っていましたが、コロニー防衛軍が持つオーバーテクノロジーと絡めて背景説明から入隊までの過程を紹介する第一部は素直に楽しく面白い。人類の永遠の夢である若返り。しかも経験値をそのままに若返ることができれば…という反則技は、SFの定番であり王道。読んでいてワクワクします。第二部では入隊後の訓練から実戦、理解できない決して相容れることない多種多様な異星人を相手に戦う日々。ここは数多あるミリタリーSFと同じく超人的な能力と新兵器で活躍する主人公ペリーに同化し興奮します。そしてクライマックスの第三部。コロニー防衛軍の最強部隊ゴースト部隊との共同作戦と運命の出会い。ナノテクなどのオーバーテクノロジーを超えた先にあるものについて考えさせられる展開に。最後はベタですが、嫌いではない終わり方。

    作者スコルジーのデビュー作にして代表作でもある本作は、「火星の人」と同じく(というかこちらが大分先)出版するあてもなくウェブで公開していた処、人気に火がつきアレよアレよという間にベストセラーに躍り出たと言うアメリカンドリームを成し遂げた作品。邦題を見るとヘミングウェイのパクりっぽく見えますが中身は至って野太いミリタリーSFで現在(2016年)5作品が出版されているシリーズモノ。
    どれも安定の面白さで内容はシリアスですがどこかユーモラスで洒落が効いた話ばかり。本作の謳い文句は「宇宙の戦士」の21世紀版ですが、私的にはブリンの「知性化シリーズ」っぽいかなぁと思いました。何せ異星人が沢山出てくるので。

    とにかくようやく電子化された海外ゼロ年代SFの傑作、SF好きなら読むしかないでしょう!
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    投稿日:2016.03.01

  • 老人だけの軍隊

    導入部で描かれる  入隊+新兵訓練
     妻に先立たれ一人戻れない旅へと旅立つ主人公の老人
    どうなるのだろうと思っていたら
     若返り?強化された肉体への精神移転の反則技
    SF大好き人間ならまず 大好物だと思います。

    メインディッシュである戦闘ではオーバーテクノロジーを駆使する異星人との戦闘が臨場感たっぷりに展開します。
     おまけではないですが、導入編で語られている移転する精神のない肉体はどうするのか? の答えが ゴースト部隊という名称で帰ってきます。
    そこには当然と言っていいですが、主人公の妻の肉体がいます。
    ラブロマンスっぽい描写は特にないですが、いろいろあってそこはそこで楽しめます。
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    投稿日:2016.07.21

  • 新しい老人の生き方?

    75才を越えた人だけが入隊できる部隊。
    地上では全てを剥奪され体ひとつで宇宙防衛軍に入隊する。そこで待ち受ける物は…
    読み続けると次から次へとイベントが発生していくジェットコースターストーリーですかね
    ものすごいハードなSFではないですがこんな世界もあっていいとつい思ってしまうのは自分がそっちの年に近いからかな?
    年寄りの哀愁がわからない若者でもちゃんと楽しめます。(^_^)
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    投稿日:2016.09.26

  • 高齢者の宇宙戦争

    75歳以上で編成された、意識を新たな身体にムーヴされた兵士たち。随所に作者らしいユーモアが散りばめられてるが、まだ押さえ気味かな。

    投稿日:2019.04.06

ブクログレビュー

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  • 山川欣伸

    山川欣伸

    ジョン・スコルジーは、ブログやノンフィクションでの鋭い洞察力でも知られるアメリカのSF作家です。彼の代表作である『老人と宇宙』は、2005年に刊行された後、その斬新さでヒューゴー賞の候補に上がるほどの注目を集めました。この作品の魅力は、宇宙という無限の舞台上で繰り広げられる、人間ドラマの深さにあります。

    『老人と宇宙』の中心となるテーマは、「歳を重ねた人々が未知の領域でどのように振る舞うか」という点です。主人公である75歳のジョン・ペリーが、地球を離れ人類コロニーを守る軍隊に参加するという物語は、ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』にインスピレーションを受けつつも、独自の哲学と人生観を交えたスコルジー独自の作品に昇華されています。

    本書のおすすめポイントは、痛快なアクションと人間ドラマのバランスの良さです。登場する老人たちの会話は、彼らの人生経験を反映しており、時に辛辣でありながらも温かみを持っています。戦闘シーンでは、エイリアンや武器、戦術が斬新で想像力をかきたてられるものとなっており、読者は主人公ジョン・ペリーと共に宇宙の冒険と戦争を味わうことができるでしょう。

    SFを好む読者だけでなく、人生の晩年にあっても新たな挑戦を恐れない精神に共感する人々にもお勧めできます。老いというテーマを通して、生と死、愛と友情、戦争と平和などの普遍的な問題が繊細に描かれています。また、本作はシリーズ化されており、ジョン・ペリーのさらなる物語が追体験できる点も見逃せません。

    総評として、この小説は、老人と宇宙という斬新な発想で、SFの魅力を存分に味わわせてくれる作品です。
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    投稿日:2024.01.22

  • ダチョウ伯爵

    ダチョウ伯爵

    ローカス誌が選ぶ21世紀SF小説オールタイムベスト第1位。

    一言で言うと、小説の要素をすべて、バランスよく詰め込んだ佳作。

    理論はあるがSFにありがちなしつこくなりすぎることはなく、恋愛も深くなりすぎず、エロや暴力の描写も不快にならない程度にまとめられていると言う印象。

    最後が少し駆け足でわかりずらかったかな。違う宇宙の話と違う人生の話をかけているんだろうけど、何度読んでもしっくりこなかった。
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    投稿日:2023.09.09

  • ハマーン

    ハマーン

    SF小説のよくある王道的な展開なのかと思ったがよく話が作り込まれており、とても面白かった
    時々話の中のジョークでもクスッと笑い面白かった

    投稿日:2023.02.16

  • だまし売りNo

    だまし売りNo

    SF作品。人類が他の星系の惑星に植民した時代が舞台である。人類は文明を持った異星人を戦争をしていた。老人はコロニー防衛軍に志願すれば、若返った体に転移することができる。

    末期について含蓄のある台詞がある。「"末期"というのはいささか不明確な表現ですね。長い目で見れば、われわれはみんな末期の患者といえます」(76頁)。末期であることを根拠に治療中止や過少医療を正当化する見解があるが、危険である。命の選別になる上、やがては治療レベルの低い方がデフォルトになるだろう。

    異星人には人肉を好んで食う者もいる。それは問答無用の殺し合いを正当化するが、人間同士の争いでもコロニー防衛軍は使われる。石油堀削作業員がストライキを起こしたが、軍隊がスト破りのための労働者を輸送し、スト指導者達を虐殺した(261頁以下)。

    尋問官に調子はどうかと聞かれて主人公は「バラバラです」と答えた。これに対して尋問官は「われわれはジョークに付き合う気分ではないのだ」と切り捨てた(299頁)。主人公は惑星コーラルへの遠征で重症となり、ようやく話せるようになったばかりである。「バラバラです」との回答は正直なものだろう。尋問官はアリバイ作りのために質問し、単に「大丈夫です」と言わせたいだけである。

    一方で友達との会話は味がある。
    「だいじょうぶ?」とジェシー。
    「肋骨が折れたみたいだ」
    「そんなことをいいたいんじゃないわ」
    「いいたいことはわかってるよ。たしかに、なにかほかのものも折れたみたいだ」(321頁)
    ここでは「大丈夫?」の質問は「大丈夫です」との回答を期待した公務員的なアリバイ作りではない。反対に「身体的にも精神的にも大丈夫ではない」と回答しないと許さないくらいの雰囲気である。本当に相手を心配している質問である。

    公務員組織の公式発表が操作されたものであることを示す台詞もある。
    「いっておくが、これはみんな噂やゴシップのたぐいでしかない」
    「つまり、まずまちがいなく、公式な情報よりずっと正確だということか」(311頁)
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    投稿日:2022.07.05

  • mo12ino

    mo12ino

    面白かった。
    21世紀版宇宙の戦士とあるが当にそのとおり。
    続編があるのかと思ったらそうでもないみたい。
    ちゃんと終わってるのでこの一冊で十分でしょう。

    投稿日:2022.06.09

  • chuck

    chuck

    老人と宇宙(そら)。タイトルは知っていてずっと気になっていたけど、ついに手に取ってみた。

    やはり必読書として挙げられるだけあり、面白い。

    内容をざっくりと紹介すると、75歳を超えた地球の老人たちが、宇宙軍に入隊するという。非常に分かりやすいストーリー。

    だけど、感情をしっかりと書いてくれる。まさか自分が老人に感情移入する日が来るとは…。そして宇宙やエイリアン、そして戦闘についてもしっかりと描かれる。宇宙戦闘系の王道SFとして非常に読み応えがあった。

    宇宙戦争とは言え、老人たちはどこか飄々としており、サラサラと読めてしまう。シリアスとユーモアのバランスが良い。

    老人たちが宇宙軍から期待されていることについて、先輩から説明がある。それは少し泣けた。

    また、「特殊部隊」という宇宙で生まれた人々との対比は面白い。彼らにとって、老人たちは地球での「前世」がある。そう、老人たちにとっては、宇宙軍での生活は第二の人生。地球との隔絶も手伝って、まるで死後の世界のような、夢っぽさを感じさせた。

    ラストシーンは男性作家っぽいというか。ふーんと言った感じw

    それから、読みにくいところが一切ない。スラスラと読めてしまう。翻訳が良いのだと思う。

    SF初心者に強くオススメできる1冊。

    (書評ブログの方も宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E7%8E%8B%E9%81%93%E5%AE%87%E5%AE%99%E7%B3%BBSF_%E8%80%81%E4%BA%BA%E3%81%A8%E5%AE%87%E5%AE%99_%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%BC
    続きを読む

    投稿日:2020.11.26

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