【感想】戦国の陣形

乃至政彦 / 講談社現代新書
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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7
5
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1
  • まだまだ謎

    筆者の推定によれば、古代=大和朝廷軍は国内や海外での戦いから原始的な陣形を駆使していたが、平和な平安時代に失われ、源平合戦~鎌倉期には陣形ではなく、騎馬武者を中心とした軍勢(ただの寄せ集め)となり、室町~戦国初期の激闘から徐々に陣形の必要性・必然性が生じ、武田信玄と激闘を演じた村上義清が日本的「陣形」の祖だとしている。

    なぜそうなったか、を大量の文献から理論的に推測しているわけだが、通説と大きく異なっている部分もあるので「目からウロコ」となるか「眉にツバ」となるか、分かれるところ。

    ・甲陽軍鑑は結構信頼できる
    ・川中島合戦、大将同志の直接対決はあり得る
    ・関ケ原布陣図を見たドイツ将校の「西軍の勝ちだ」は創作?
    ・大坂の陣の伊達政宗はやる気がなかった

    などと書かれたら、みなさんはどう思うだろうか?(本書にはそれぞれ根拠が示されてます) 昨今、歴史の教科書が大きく変わっているので、歴史好きを自称する自分も混乱するばかり。正直この本を読んでも謎が深まるばかりです(笑)

    筆者も書いているように、軍事研究は日本においてタブー視されているため、江戸時代並みに机上の空論がまかり通っているので、更に議論が深まることが望まれます。
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    投稿日:2017.04.26

  • 戦国の誤解

    戦国オタクや『信長の野望』ファンにはたまらない内容のはず。
    多くのドラマや映画の合戦シーンに陣形の妙を感じさせる描写がないという筆者の意見に強く共感。
    陣形に焦点を絞った内容ながら、えー、そうなの?と思うような主張が次々と繰り出される。
    村上義清が意外とすごい奴だってことがわかったし、鶴翼の陣ってV字型じゃないのか!
    関ヶ原は小早川秀秋の裏切りが最初?
    伊達政宗は眼帯してなかったの?
    ゲームで重要な陣形の相性なんて存在しないだと!
    などなど様々な資料を基に真相を突き付けてくる。
    もしかしたら今後の歴史解釈が大きく変わるかもしれない画期的な新説。
    結局、元凶は諸葛孔明ってこと?
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    投稿日:2017.09.20

ブクログレビュー

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  • Kぶんこ

    Kぶんこ

    定型的な戦いの陣形が無かったとの説は説得力があった。確かに、何万もの軍勢が、単純な陣形をとれるような地形はそうそうあったとは思えないし、兵種を上手く運用した方が勝てる気がする。

    投稿日:2021.02.23

  • たけ坊

    たけ坊

    陣形というものに抱かれていたイメージを一新させる。そもそも東国のほうが優れた軍制(兵種別編成)だった、その始まりは信玄を討ち取りにいった村上義清だった、それを長尾景虎が受け継ぎ、襲われる信玄や北条氏康もそれを採用した。
    甲陽軍鑑といった文献についつの研究も紹介されてて勉強になるし、白村江の頃から採用した集団戦も対外戦がなくなり蝦夷の散兵戦術と戦ううちに日本も集団戦ではなくなってバラバラ戦う鎌倉武士が、と、戦国の陣形だけでなく日本の戦いとはどうだったのかという点でも学ぶことが多い。
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    投稿日:2017.11.05

  • taru-mitsu

    taru-mitsu

    新聞の書評をみて読んでみた。
    戦国時代の有名な戦いの陣形図に根拠がないことを地道な文献検証に基づいた説明には説得力がある。
    確かに、10万人を超える陣立てと言われる関ヶ原の戦いが、なぜ半日ばかりで終わったのか、昔から不思議に思っていた。
    ちょっとした豆知識を身に着けられる。
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    投稿日:2017.08.21

  • kalitan

    kalitan

    「君も陣形博士になれる」みたいな本では決してないので、間違って買わないように。陣形を謂れから解説。巷間に流布する色々な無駄知識と誤解について知ることができた。「勘介は『それがし、軍学は体系的に学んでござらん』と天地神明にかけて告白しているのである」という部分など笑えます続きを読む

    投稿日:2016.09.21

  • reso100

    reso100

    甲陽軍艦等の文献の精査で,日本の古代から近代の軍隊の陣形の実態を解き明かした好著だ.村上義清と上杉謙信が五段隊形を編み出して実際に活用した事例紹介は素晴らしい.徳川時代が平和であったため,戦国時代の歴史がおざなりになったことで,当時の陣形に関する研究が不十分だったことは残念なことだ.関ヶ原の合戦の戦況展開図(p170-173)は具体的な形での考証であり,素晴らしいと感じた.続きを読む

    投稿日:2016.08.30

  • tagutti

    tagutti

    <目次>
    序章   鶴翼の陣に対する疑問から
    第1章  武士以前の陣形
    第2章  武士の勃興と陣形の黎明
    第3章  中世の合戦と定型なき陣形
    第4章  武田氏と上杉氏にあらわれた陣形
    第5章  川中島・三方ヶ原・関ヶ原の虚実
    第6章  大坂の陣と伊達政宗の布陣
    終章   繰り返される推演としての陣形

    <内容>
    簡単に言うと「鶴翼」や「魚鱗」などの陣形はなかった(これは中国においても)。若干のシステムはあったが、その場限りに近いものだった。強いて言えば、戦国期武田信玄に攻められた村上義清が、決死の陣として考案したものがあり、それを上杉謙信が学び、川中島などで使い、それを受けて武田信玄や北条氏なども使用した。しかし、それはせいぜい全体の陣の中の各部隊の陣形であった。関ヶ原では使われた痕跡はないし、大坂の役で苦戦した徳川氏が、その後の参勤交代の際に、陣立てを規定したところから、パクス=トクガワーナの中で、軍学者が机上の空論として少々編み出し、それを戦後の歴史学(軍事学)者が、さらに汎用し、ゲームなどで人口に膾炙した。というところか。
    だいたい、中国はまだしも山国の日本で、陣形を保って戦うなど無理だし(地形優先でしょ)、様々な思惑の武将の統制は相当至難の業だったと思う。
    逗子市立図書館
    続きを読む

    投稿日:2016.06.19

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