野矢茂樹 / 講談社 (32件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
2
"考える技術"とは"問う技術"であり、"待つ"ことこそ"考える"こと
哲学は、なにか固有の研究対象というのがあるわけではなく、あらゆる領域の前提というか、ゲームで言えばルールのような「メタ」を取り扱う。 自分がやっていることや、生きていくための「メタ」を問うのだから、生…活などしていられない。 だから哲学者は、世捨て人か学生に適していると言われているが、立ち止まって問い直す余裕は誰にとっても価値がある。 しかし大変である。 教職者であれば、気持ちが教科や教え子に向かわず、「教育とは?」という一般論に向かうし、恋愛中の男女であれば「そもそも恋愛とは何ぞや?」と考えてしまうのだから。 哲学者はどのように考えるか? いきなり心とは何か? みたいにそのまま問うことはしない。 まずは、もっとずっと小さい、手頃な問題を設定する。 「考える技術とは、どうやって答えを閃かせるかではなく、いかに問いをうまく立てるかという、問う技術である」。 かつて小林秀雄が「考える」とは「迎える」ことだと語ったように、最後は「雨乞いの儀式」のごとく閃きを待つわけだが、そのまえに下準備として論理的に詰められるところはきちんと詰めておくというのが著者らしいところ。 「待つことこそ、考えること」に他ならぬのなら、現代はますます「考えさせない時代」となりつつあり、野崎まどの『know』のような脳内に電子葉を埋め込まれ、「知らない」と思うまもなく瞬時にわかってしまう世界が到来するとしたら、哲学者はおそらく失業だろうな。 「バラは暗闇でも赤いか?」という話がもっとも面白かった。 著者は街なかでこの話を考えつき、うれしさのあまり散々周りの人に語ったのだが「まちがっている」と否定されたり反応がいまいちらしい。 ただ著者としては異論は大いに結構で、全面同意される方が気色悪いかもしれない。 バラは暗闇では赤くない。 色は物の性質ではなく、われわれの主観に生じる感覚でしかない。 著者はここでもやもやを覚える。本当に色は感覚なのか? と。 本のタイトルを『赤いバラと雷鳴』に替えてほしいほど鮮やかに推論する。 いま新聞でも雑誌でも哲学者の書くエッセイはどこも引っ張りだこだが、著者の書く文章はどこか味気ない。 接続詞の重要性を強調したり、文章には一家言があるのだろうが、著者独自の匂い立つような味わいがないので、前半のように短文になればなるど、淡泊さが余計に極まるのが残念なところ。続きを読む
投稿日:2015.12.05
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1682271番目の読書家
私たちはポリフォニー的世界の主人公。その物語の中にありながら、客観的に眺めることは可能。 丸裸の自分にこそ生きる力が備わっている。 本来無一物 手に入れたものは全部おまけ
投稿日:2025.06.22
2354142番目の読書家
急遽学校を休んで図書館に引きこもった時読みました 文体が緩く、内容も程よく、 ページをめくる手が止まらない 時折出てくるイラストがとても癒される
投稿日:2025.06.11
sokor
いつもあたたか朗らか野矢茂樹。前半のプチエッセイ集はもちろん、後半の中島義道『人生に生きる価値はない』への解説が好きだった。 「世界とはたえず新鮮な水が湧き出ている泉なのだと考えたい。」素敵な言葉〜〜…〜〜。野谷茂樹サポートがあれば論哲だって読めるのかもしれない。続きを読む
投稿日:2025.04.29
k-masahiro9
どこで見たか記憶になかったが、図書館で予約をしていたらしい。 「根拠のない自信は強い。なんたって根拠がないんだから。誰も覆せない」(p.47) 高校までの生活では、自分含めほぼこの自信だけで生きてい…た。自分たちの学校での強みは何かと考えた時に「根拠のない自信」という言葉が出てきたのを覚えている。大学以降はその自信が薄れてきてはいつつも、自分の根本にあるのはこれなんだろうなと思い返した。 「技術論よりも、もっとずっとだいじなことがある。自分の文章を読む相手をリアルに感じることだ。」(p.85) 「言葉は、頭で分かっているだけでは意味がない。習得すべき技術を繰り返し練習する。そのとき教師は、壇上から教える者ではなく、練習している生徒に寄り添うコーチでなければならない」(p.93) 読んでくれる物分かりの悪い人に伝わるように書かなければならないそう。最近は英文メールやチャットなどで伝わる難しさを感じる機会が多くなってきたので、この視点を持ち直しておきたい。 何を食べようかと思い、少し考えてチャーハンに決める。考えているしばしの間、私はとくに何かをしたわけではない。ただ、答えを思いつくのを待っていただけである。そう、この「待つこと」こそ、考えることにほかならない」(p.99) 「「物より心だよね」と言えばほとんどの人は反対しない。だから、このいかにもなフレーズはひとを思考停止に陥らせる呪文となる。(中略)こうした言葉が氾濫することで、言葉というのはそういうものなんだと思われてしまう。そして日常の言葉が内容を失い、掛け声化していく。考えを深めるために言葉が使われるべき場面で、考えを遮断するために言葉が使われる。そんな言語文化に私たちは浸食されてはいないか。」(p.103) 最近「考えているか?」と問われると、はいと答える自信がない。無意識のうちに答えをネットで調べ、AIに打ち込んでいる。どこかにある答えをそのように探ろうとしている。威勢の良い分かりやすい言葉を聞いて、理解したと思ってよいものなのだろうか。あ、今思考停止している、と気づくことができているだろうか。続きを読む
投稿日:2025.04.21
ぷんぷん
ぼくが読書好きになるきっかけとなった本。なんと言っても文体が柔らかい。あまりにもやわらかすぎる。その上、内容は重厚ではあるのだが、それを微塵も感じさせない。手頃なサイズに切り分けてあるからだ。それこそ…が問の本日であり、哲学の手ざわりなのだろう。何度読み返したか分からない。続きを読む
投稿日:2025.02.24
oshakichi
面白い。ほっこり系だけど笑える。 著者の自虐的な態度とオチに知性を感じさせられる。 学校に入れたい良い本だけど、中学生にこの面白さはわからないかなあ。文体は平易なんだけど。 最後の方は、作者と恩師と…の話が多くなって、ちょっと中学生には退屈かもしれない。 作者おすすめの穴場には、行ってみたい。続きを読む
投稿日:2024.07.28
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