【感想】イスラーム国(集英社インターナショナル)

アブドルバーリ・アトワーン, 春日雄宇, 中田考 / 集英社インターナショナル
(8件のレビュー)

総合評価:

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  • 原著のサブタイトルは「ディジタル カリフ」

    彼らは急に現れた野蛮人集団などではなく、残虐性も込みで計算され尽くした最前線の運動であること、また、あの残虐性さえもオリジナルではないということを、イスラーム過激派などへの長年の直接取材と学究的整理を踏まえてまとめられた力作。特にサウディアラビア王国の及ぼしている力場を解析することで、とても見通しが良くなるところが感動的だった。
    超速で行われた翻訳も訳注もとても良かった。監訳者解説が端的で切れ味鋭く、これを先に読む方が理解の助けになるかも知れない。
    イスラーム国のある世界は、当分続くと思っておく方が良さそうだ。
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    投稿日:2015.11.19

ブクログレビュー

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  • sacty

    sacty

    アラブ革命が起こった時、人々は社会的公正、平等の実現、腐敗根絶、貧困からの脱却を希望した。
    しかしアラブ革命によって成立した新政権下で世俗かイスラームかで政治は混乱し、
    世俗的革命は混乱のみをもたらすとアラブ革命を否定した厳格なイスラーム主義なら現状を打破できるかもしれないと注目が集まった。
    イラクでは汚職、失業、政府の弾圧にスンナ派が苦しんでおり、彼らを圧政からの解放者として歓迎した。
    また欧米では疎外、差別されていたムスリムが分かりやすい広報によって惹き付けられた。
    イスラーム国の支配地域ではシャリーアを強制しトラブル処理、汚職撲滅、治安回復を試みた。
    一方でイスラーム共同体をより良いものにするため、偶像崇拝の一掃し、異分子は背教者として残虐な方法で処刑する事で戦略的に共同体の純化を進めた。
    またサラフィー主義者はイスラーム共同体の発展段階として信仰を広める→支配地域に移住→ジハードを通して真のイスラームが実現すると考えたが、イスラーム国の誕生により移住の段階に入ったとして全世界の過激派組織から一般ムスリムまで合流するよう求め、少なからずのムスリムがこれに応じた。
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    投稿日:2022.03.07

  • velikiy99

    velikiy99

    アルカイダなどイスラム主義組織の人脈を持つ著者の手になる,イスラム国の組織・活動の背景を解説した書籍.イスラム国とサウジアラビアは表向きの敵対関係の裏に,思想的な共通点があるというのは勉強になった.欧米でマイノリティとして差別を受け不満を募らせる若いムスリムがイスラム国に赴くという状況は,欧米の極右勢力の台頭と表裏の関係にある.本書から2年が経過し,イスラム国は有志連合に加えロシアの軍事介入により,その版図を大幅に狭めることとなり,国家としての性格は失いつつあるが,依然としてヨーロッパでのテロ活動が発生していたり,フィリピンの反乱など東南アジアに進出したりと,アラブ世界にとどまらない新たな局面を迎えているようである.続きを読む

    投稿日:2017.07.14

  • おーた

    おーた

    アル=カーイダの広がり方については池内さんのイスラーム国の衝撃が詳しかったが、本書はウマイヤ朝・アッバース朝・オスマン帝国とイスラムの歴史に沿った補助線が引かれている点、またキープレイヤーでもあるサウジアラビアの建国の歴史からワッハーブ派とサウード家の微妙な関係、ワッハーブ派とイスラーム国の親和性に関する話、チェチェン(ロシア)とイスラーム国の親和性に関する話があったのはサウジアラビアやロシアとシリア・イスラーム国の関係を考える上で普通の報道だけでは見えてこない背景だったので色々とスッキリした。

    高校世界史程度のイスラムの歴史は復習してから読むことをお勧めします。
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    投稿日:2016.02.15

  • たけ坊

    たけ坊

    西洋に精通したアラブ人が書いた本なので、イスラーム国について考えるのにめっちゃ参考になる本。イスラーム国がなぜここまで伸長したのか、その組織の歴史や信奉しているもの、戦略などを解説してくれる。

    投稿日:2015.12.28

  • mishuranman

    mishuranman

    素晴らしい分析。そして、それがこの時期に日本語で読める幸せ。女にとってのイスラムは難しいと留学生の女性が行ってたけれど、それにしても厳格なイスラムがクルアーンの戦闘性を引いてしまったのが立正安国論みたいで。続きを読む

    投稿日:2015.12.23

  • shimu2

    shimu2

    [破滅に見るもの]今やニュースでその名称を見ない日はないと言っても過言ではなくなった「イスラーム国」。残虐性の限りを尽くした戦略と組織の由来、そして懸念すべきその行く末について幅広い角度から考察を加えた作品です。著者は、ロンドンを拠点とする『クドゥス・アラビー』という新聞で編集長を25年にわたり務めたアブドルバーリ・アトワーン。訳者は、国立ダマスカス大学への留学経験も持つ春日雄宇。英題は、『Islamic State: The Digital Caliphate』。


    「イスラーム国」を内側から解析した一冊として非常に意義深いように思います。予断を許さない切迫性をもって執筆されていますので、西欧的文脈を踏まえたアラブ人/ムスリム及びムスリマが那辺に今日的な「イスラーム国」の脅威を感じているかを考える上で非常に有益な作品かと。


    見方についてはいろいろあると思いますが、様々な原理主義的潮流と「イスラーム国」の関係を記した箇所、そして残虐性を示す理由について踏み込んだ箇所は出色でした。それにしても、「イスラーム国」という現象はとんでもない課題を突きつけるものだということを再確認。

    〜私は、バグダーディーに近いある人物に、イスラーム国の最重要目標は何かと問うたことがある。この人物は即座に「ヒジャーズの地と、そこにある聖地だ」と答えた。〜

    とにかく重い読書でした☆5つ
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    投稿日:2015.11.30

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