【感想】オリンピックの身代金(上)

奥田英朗 / 講談社文庫
(44件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
14
19
6
0
0
  • 緻密なミステリー。面白かった!

    オリンピック開催往時の世相が非常によく書かれており、情景が目に浮かぶようだった。私が育ったのはそれからすでに20年程度経ったころだったが、当時の雰囲気を残しているところもあり、懐かしい気分に浸りながら読書を進めた。
    ミステリーではあるが単なる謎解きではなく、当時の社会が(そして、現在の社会も)抱えている社会的問題を事件に照らして浮かび上がらせ、社会に対して課題を問う意味でも良著だと思える。
    併せて、全編を読むと登場人物に無駄がなく、非常によく練られた構成だった。
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    投稿日:2017.08.06

  • 竹野内豊&松山ケンイチ初共演のドラマ原作

    オリンピックとは誰のための、何のためのものなのか。誰かを犠牲にしてできあがる繁栄、経済成長は虚栄ではないのか。

    日本が世界のトップへ上り詰めようと高度経済成長期の1964年。秋田の田舎から、東京大学に入学した奇跡的な存在である主人公島崎国男。東京オリンピックを数カ月後に控え、急ピッチで進められる工事に出稼ぎとしてやってきていた兄が死を迎え、物語は動き始めます。

    大学院でマルクス経済を学ぶ国男が違和感を持った、労働者と資本家の関係、日本の繁栄を独り占めするかのような東京とその裏に存在する地方の関係、行動しない左翼学生たち。テレビ局に勤務し、オリンピック警備を担当する警察の責任者を父に持つ国男の同級生(資本主義側)と、妻と子どもと憧れの団地住まいを始めた公安の刑事(国/権力側)という、立場や考えの異なる三者の思惑と行動を、時間軸を巧みに操りながら交差させていきます。

    かつての東京オリンピックは、戦後復興を世界にアピールする日本の誇りなのか。それとも、オリンピックは国民をだます隠れ蓑であり、革命をひとり叫ぶ国男の行動はひとりよがりなのか。まるで今回のオリンピックを見るような部分も多く、3年後のオリンピックへ向けて、変わっていく東京の街を見ながら何を思うのでしょう。
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    投稿日:2017.04.21

ブクログレビュー

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  • ゆうゆ

    ゆうゆ

    プロレタリアートに敢えて飛び込んでいく青年の心理や時代背景がとても丁寧に描かれている。オリンピック景気に沸く人もいれば過酷な労働環境に身をおいている人、都市部と田舎の経済格差等々様々な視点から物語が進行していく。身代金を要求するに至るまで何があったのか、深くえぐっていくさまが刑事の目線だったり、伏線回収の匠さでどんどん引き込まれてあっという間に上巻読み終えてしまった。伊良部先生と同じ物語を書く人とはとても思えない(笑)続きを読む

    投稿日:2024.01.29

  • 例幣使

    例幣使

    随分と前に図書館で借りて読んでたけど
    『罪の轍が』を読んだら東京オリンピックの時代で、柳美里のJR上野駅公園口を思い出し
    この時代の作品を他にもと本作を思い出し購入
    事件が軸なんだけど時代背景とか
    ーギャンの『我々は〜 』を思い出した続きを読む

    投稿日:2023.06.24

  • ミスト

    ミスト

    タイトル、どういうことかと思ったけど、途中であぁそういうことか!と腑に落ちる瞬間が。
    時系列も順番に行ったり来たりするから、どう繋がるのかと思ったら上巻ラストでまた腑に落ちて。
    戦後日本の経済格差にびっくりするし、すごいリアリティ。
    頭が良ければ勉強できるけど、できなければ出稼ぎに行くしかない貧しい村。
    そんな格差への反発でオリンピックの開催で沸く東京の人たちへの脅迫。
    最初疑われた学生がどうしてそんな大それたこと?と思ったけど、読み進めると納得というかなるべくしてというか。
    下巻でどうなるか楽しみ
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    投稿日:2023.06.07

  • なおきち

    なおきち

    東京オリンピックの時代の街並み、流行など当時の描写がリアルに描かれ、当時の様子を脳内で再生する面白みがあった。また、高度経済成長の背景には、低賃金で過酷な労働を強いられる出稼ぎ労働者、東京を発展させるためにないがしろにされる郊外の犠牲があったこと、見える部分のみを大事にする警察の黒い部分など、国の裏事情の描写が鮮明で、今の二極化社会、政府の国民に都合の悪い内容を隠す体制など今にも繋がる内容になっているように感じた。
    主人公がよくモテる。
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    投稿日:2023.05.24

  • アヤカ

    アヤカ

    東京オリンピックに沸く日本の陰で確かに存在しただろう闇の部分を、暗くなりすぎずテンポよく、陽の部分と共に見事に描かれている気がした。

    投稿日:2023.05.14

  • Soooo

    Soooo

    東京オリンピックを通して再興する戦後の日本が舞台ではあるものの、利権争いが蔓延る国家のあり方はついこないだの2020東京オリンピックの話と聞いても違和感がない。東京オリンピックが終わって続々と不正疑惑、汚職などのニュースが出てくる中で読んだため、日本も成長しないなあと他人事のような感想を抱いた。

    爆破事件を起こすことで、オリンピックで浮き彫りになる階級格差、地域格差な一矢を報いようとする主人公はびっくりするほど純粋で正義感が強く、なぜか嫌いになれない。

    出稼ぎの描写、これから衰退していく日本ではどんどんこういう家庭が増えていくのでは、、と怖くなった。
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    投稿日:2023.03.08

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