【感想】哲学は人生の役に立つのか

木田元 / PHP新書
(21件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 古畑ぬん三郎

    古畑ぬん三郎

    題名はさておき、本書は哲学の有用性(あるいは無用性)について書かれた本ではない。むしろ木田元という哲学者の半生を振り返った自伝としての性格が強い。ただし、哲学という学問が個人の人生にどのような意味を与えたかという視点から読むことは可能であり、役に立つか立たないかだけを尺度とする価値観へのアンチテーゼへと敷衍することもできる。
    内容で言えば、ハイデガーはもちろん、フッサールやメルロ=ポンティなどの思想にも触れているが、予備知識がなくとも理解できるよう配慮がなされている。人生論的な切り口でありながらも、ハイデガー哲学を前期と後期に分けて考える一般的な見方とは一線を画し、一貫した存在論的な思想として捉えた独自のハイデガー観成立の契機を垣間見ることができ、思索の足跡を辿る意味でも興味深い。
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    投稿日:2025.02.18

  • medamaoyaji

    medamaoyaji

     アテもなく、人生のモラトリアムのつもりで入学した農林専門学校だが、農業をやりたいわけではない。いきおい学業には身が入らない。しかし、このままでよいのか、将来はどうなるのだろうという焦燥感に著者は駆られる。たまたま聞いたハイデガーの「存在と時間」の講演で、これが自分を救ってくれるという「確信」を持ち、これを読むためには大学へ行かねばならないと、東北大学の哲学科へ進学。授業はいきなりカントの原書講読なのでドイツ語が必須。集中的に勉強して夏休み頃には習得。そればかりか、二年目にはギリシャ語、三年目はラテン語、大学院の一年目でフランス語を、それぞれ三ヶ月でものにしたというから驚く。[more]
     様々な哲学書を読みながら著者は常に「存在と時間」に立ち返るが、どうしても今ひとつ腑に落ちない。長い年月の研究を経た後、どうやらこれは自分の原初の問いかけに応えてくれるものではないということに気付く。それでも、これまでの哲学者としての人生は充分楽しかった。
     若い頃は迷えばよい。少々回り道をしようとも、それは決して「回り道」ではない。そういう過程を経ることにより、自分のやりたいことが見えてくる。しかし今どきの若者は予め何でも与えられ、何不自由なく暮らしているから、却って悩むことがないのかもしれない。
     哲学が世のため人のためになるかといえば、そうではないだろう。しかし著者自身にとっては哲学が救いとなった。
     ・・・とまあ、タイトルだけに惹かれて読むと肩すかしを食らう。これは木田元の哲学遍歴の書なのだが、滅法面白い。一気に読了。
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    投稿日:2018.11.04

  • y_doka

    y_doka

    まあ斯界では知らぬ者のいない超ビッグネーム。
    こういう余技で書いたとも言えぬだらだらエッセイ本も、それはそれで味わい深いのではないでしょうか。

    投稿日:2017.12.02

  • sakabit

    sakabit

    結婚というのも歴史的な制度に違いない。子供を産んで労働力を安定させようという社会的な必要から出来た制度。ですから、社会の生産力が一定の水準に達し、それほど労働力の組織化が必要でなくなると若い男女が結婚しなくなります。続きを読む

    投稿日:2015.02.15

  • 大天使ポトフエル

    大天使ポトフエル

     今はなきハイデガー研究の巨匠、木田元の半生と、それに基づく彼の哲学観をまとめた一冊。
     戦後の荒廃した空気と、そこから学問を志した流れに納得。哲学への見方を少し変えてみようと思えました。

    投稿日:2014.11.15

  • キじばと。。

    キじばと。。

    現象学やハイデガーの研究で知られる著者が、自身の生涯を振り返りながら、若い読者に向けて人性について語った本です。

    終戦直後にはテキ屋で働き、農林専門学校に入学するもほとんど勉強せず遊んでばかりいたのが、ドストエフスキーの文学に出会いハイデガーの『存在と時間』を読みたいという一心で猛勉強し、東北大学で哲学を学ぶようになる経緯は、類まれな生涯というほかありません。

    そんな著者ですが、「やりたいことが分からない」という若者たちに対して苦言を呈するということはありません。ただしそれは、「優しさ」というよりも「おおらかさ」といいたくなるようなまなざしで、巷の若者論とはかなり違う印象を受けます。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.12

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