【感想】いちご姫・蝴蝶 他二篇

山田美妙, 十川信介 / 岩波文庫
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
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ブクログレビュー

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  • nt

    nt

     収録された4編は1887(明治20)年から1891(明治24)年の作。
     二葉亭四迷と同時期に言文一致の小説を切り拓いた作家だという。しかし山田美妙の場合は、内容が鎌倉から室町時代を舞台にした時代小説なので、地の文が口語体であっても登場人物の台詞が古めかしい古語なので、二葉亭四迷のような近代性は感じられない。その地の文も、
    「で、闇? 驚・・・あら、膝に加わる妖獣の手の生温い——ちッ! きっぱらってしまおうか。」
     といったふうに、感嘆符が頻出するとともに、妙に「調子の良い」リズムの取り方が際立ち、「日常の口語」とは差異がある。
     おまけに、どうもくどい文体で、一つのことを延々と「言い換え」し続けて無駄にページを費やし、なかなか話が進まないのがもどかしく感じられた。長編の「いちご姫」の前半はそれでじれったいような文章だった。
     この「いちご姫」は、室町時代の公家出身の娘としてはずいぶん破格な女主人公が数奇な運命を経て凋落していき、やがて破滅に至るという、明らかにエミール・ゾラの影響が濃厚。物語内容としては興味深いが、姫の人格にあまりリアリティが感じられないようにも思った。
     風変わりな「奇書」と言ってもよさそうな作品である。
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    投稿日:2022.10.18

  • 5757274

    5757274

    まじめなのかふざけているのか判らないほどぶっとんだ内容のいちご姫は面白い。古典を引いたり故事を引いたりもこの作品に於いてはユーモアに映る。ただ、稍冗長。

    武蔵と胡蝶は内容が薄く、同じように古典や故事を引いても、知識の披歴くらいにしか思えず、却って退屈だった。

    山田美妙のことは詳しく知らないので、どの作品がどういう経緯で書かれてどういう評価を受けているのかまで知らないが、言文一致に尽力したという以外で何か評価できることは特にはない気もする。言文一致させたのはしかも山田美妙だけではなし。

    この人は辞書も編纂していて、確かに語彙力とか古典故事には詳しかった模様。変態的に知識を蓄えていた森鷗外と比べてどうかまでは知らないが。
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    投稿日:2022.09.21

  • ゆーや

    ゆーや

    空き地で紙芝居を見ているような気持になる(経験はないけれども)。講談を聞いているような文章が心地良い。
    いちご姫が力強く、明治の作品でもこんな女性が描けるんだと驚き。

    投稿日:2021.08.16

  • Στέφανος

    Στέφανος

    校訂:十川信介、評論:内田魯庵、石橋忍月、依田学海、注:大橋崇行、福井辰彦
    武蔵野◆蝴蝶◆いちご姫◆笹りんどう◆山田美妙大人の小説(内田魯庵)◆蝴蝶(内田魯庵)◆近日出色の小説(抄)(内田魯庵)◆夏木たち(石橋忍月)◆国民之友二小説評(依田学海)続きを読む

    投稿日:2019.03.11

  • kandah

    kandah

    明治期の小説を読むのが久しぶりだったのだけれども、わりとすらすらと読めました。短編はラストの鮮やかなイメージがどれも素敵でした。いちご姫は思うところはあるけれども楽しめたのでよしとします。

    投稿日:2013.03.04

  • eteme

    eteme

    長編「いちご姫」のみ読了。
    <あらすじ>
    公家の息女いちご姫は、敵方足利義政の使・窟子(うろこ)太郎に恋をしてしまう。出奔し盗賊に身を堕としながら、美貌と気の強さを武器に戦国末世をわたり歩く。

    <感想>
    ・文体…短文を重ね、「!」を多用し、やたら文章の勢いが強い。美妙の造語かと疑いたくなるような間投詞が登場し、語注を見て驚くことしきり。
    ・ヒロイン…自己愛過多で気が強く貞操観念のうすい主人公は、現代以上に突き抜けた感覚の持ち主。こんな主人公にはお目にかかったことがない。
    ・構成・ストーリー…章回制。各回にきちんとクライマックスが用意されており、連続ドラマに仕立てられそうである。通俗的で波瀾万丈なストーリーとも相俟って、読者の期待をあおる。「大団円」の章名を裏切る、あまりにも衝撃的な結末には腰が砕けてしまった。

    強烈な女主人公といい、奇想天外なストーリーといい、明治時代の古臭い作品と思ってかかると裏切られる作品。なんとなく舞城王太郎を読んだときの当惑を思い出した。
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    投稿日:2012.11.11

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