【感想】荒木飛呂彦の漫画術【帯カラーイラスト付】

荒木飛呂彦 / 集英社新書
(158件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
53
55
29
1
0
  • 「指に針を刺すと痛い」というサスペンスが描きたい

    著者が漫画で描きたいと思った出発点は、何も「ジョジョ立ち」などの独特のポーズや「オラオラ」などの擬音語が描きたかったのではなく、「指に針を刺すと痛い」というサスペンスの部分だったという。
    「傷み」という"見えないものを可視化する"というのは、漫画ひいては絵の本質的な役割で、大友克洋がエネルギーの破壊力を表現するために壊されたものを精緻に描写したように、氏はポージングやスタンドで見えないものを可視化している。
    火を描くには風を、光は影をというように、傷みもその傷口からは一歩引いた全体の視点が必要なのだとわかる。

    「重要なのはキャラクターであってストーリーではない」、むしろ"キャラが物語を決定する"であるとか、ストーリーも常に「プラス」を積み重ねなければならず、作者は「マイナス」に持って行きたいという誘惑とは徹底的に対峙する必要があると説く。
    このあたりの現場の苦労も凄まじく、具体的には、第4部のラストの吉良との戦いで、あまりに主人公に不利な状態を作ってしまい、キャラクターと悪戦苦闘してピンチを乗り越えたと告白している。
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    投稿日:2015.11.27

  • 「ジョジョ」の描き方、教えます。

    1986年からの連載以来、今なお根強いファンを持つ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ。その生みの親である荒木飛呂彦が、漫画の描き方について自ら語ったのが『荒木飛呂彦の漫画術』です。本書の特徴は、単なる精神論やアドバイスではなく、具体的な方法を明らかにし、彼の徹底的な仕事術を堪能できる。

    荒木は、漫画の「基本四大構造」として「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」の4つを挙げています。絵によってこれらを統括し、セリフで足りない部分を補足していく。ページをめくっていく内に、彼の語る「ジョジョは王道」という言葉もすんなりと受け入れられていきます。

    確かに、秘伝の情報まで明らかにしたハウツー本ではあります。でも、一番読者に伝わってくるのは、これらを考え、実行する荒木飛呂彦という漫画家のこだわり。事前に用意するキャラの設定には、生年月日や体重はもちろん、声の質や手術経験といった細部にまで考えを巡らす。海外への現地取材を行う時は、行く前に地理や歴史を頭に叩き込み、その上で資料にはなかったものを現地の取材ですくい取る。

    この本で明らかなになるのは、ただの”漫画の描き方”ではなく、荒木飛呂彦というひとりの漫画家の情熱と凄みなのです。
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    投稿日:2015.10.20

  • 物語の設計方法

    漫画の構造を分かりやすく解説してくれている本なのだが、その応用範囲はとてつもなく広いと感じた。
    そこら辺のビジネス書よりも仕事の役にたつと思う。

    漫画はストーリーが有り、世界があり、人物がいる。
    ても高度な表現なんだと思う。
    いつもは面白可笑しく読んでいる漫画だけれども、その裏側には精密な構造があり、高度な設計によって成り立っていると教えてくれる。

    この本を読むと漫画の面白さが増す。
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    投稿日:2015.09.08

  • タイトルどおり荒木飛呂彦の漫画術

    目次の小見出しを読んだらもう過呼吸が起きそう。ここここれくださいとレジに走ることだろう,マンガ家はプロアマタマゴ問わず。
    バオーやジョジョの原稿自体が荒木の精神のカタチみたいなもんで自由な発露かと思いきや,こう考えてこうしたという創作秘話がふんだんにあり,実におもしろかった(おれはファンとしてネ)。いやいや,ここまで書いたって荒木に「不利益」なんてないでしょう。続きを読む

    投稿日:2015.08.14

  • 「感謝」と「地図」を

    表現の心構えから物語の構造論など、ご自身の作品をサンプルにわかりやすく解説されていて、作劇のハウツーになったり、また枠組みにはあまり興味のなかった人にも関心を持たせるような内容です。
    一見ハウツー本なのかと思いますが、この書籍に書かれていることは、荒木先生が執筆25周年を迎えた頃より、各地で行われた講演会やテレビなどでファンに向けて発信されていたメッセージの集大成ともいえるものとなっています。

    そもそも講演会などに登壇しメッセージを発信するようになったのも、節目を迎えて振り返り、作品だけでなく直に感謝を伝えたいという気持ちになったからだと仰られておられました。
    この本もまた、初代の担当編集・椛島さんが定年退職を迎え、その感謝を示すために二人で作り始めてきたものを形にしたいと思われたからだそうです。


    そんなこの本はとてつもないお宝にも見えるのですが、同時に奇妙な寂しさを感じずにはいられません。

    荒木作品を胸に抱く者にとっては、その意味も為すべきことももうわかっているはずです。

    より前に一歩を踏み出すために。
    これまでの道を肯定していただけたからこそ、この先の道も見えています。見えるはず。

    聖書に星を付けるとかナンセンスなことはしたくないのですが、★8。



    紙書籍を購入していましたが、いつも持ち歩いていたのでヨレヨレです。
    電子書籍で買い直し。帯の露伴&荒木先生のイラスト画像がページで入っていました。ご参考までに。
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    投稿日:2015.08.04

  • 期待以上

    私は荒木先生のファンではございますが、この本は漫画家になりたい人が読む本なんだろうなーと特に期待することなく購入しました。
    しかしっ!内容はもちろん漫画の描き方や表現の仕方だけでなく、ものづくりの考え方や新しいアイデアの出し方、などなどとても勉強になりました。引き込まれるように一気に読んでしまいました。まず読んでおいて損はない1冊です。
    荒木先生がますます好きになりました。
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    投稿日:2015.08.04

ブクログレビュー

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  • よし

    よし

    自身の経験も余すことなく踏まえて漫画の描き方について書かれている。正直ここまで明かすのかって思ったけど、これを真似するだけでも大変なことだし、積み重ねからの自信があるからこそできたことなのだろうと思った。自分は描く側ではないが、これからは一コマひとコマに対して作者の意図を見つける読み方ができそうで楽しみ。続きを読む

    投稿日:2024.03.18

  • ねむぷれっそ

    ねむぷれっそ

    これからは荒木先生を「天才」と一言で片付けるのではなく「努力する者そして楽しむ者」と認識し一層敬意を払おうと誓った。漫画家志望ではないが分析の重要性を理解したい自分にとって大切な「地図」になった。

    投稿日:2023.09.21

  • トモ

    トモ

    このレビューはネタバレを含みます

    荒木先生がこういう考え、やり方で漫画を描いている事を知り、今度ジョジョを読む際に一コマずつじっくり読みたくなった。

    読み手の立場になった考える

    自分と違う意見に興味をもつ

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.09.09

  • ゆみー

    ゆみー

    このレビューはネタバレを含みます

    創作をするという視点で読むと、凄く良本でした。
    個人的に参考になった点は以下のところ。

    ・主人公に読者が感情移入できるように書く(どういう目的を持ってストーリーの中にいるのかを序盤で読者に伝える)
    ・主人公の動機は読者の共感や興味を得るものにする
    ・キャラの身上調査書は大事
    ・キャラクターと設定がきちんとできていれば、キャラは勝手に動く
    ・説明してはいけない。表現する
    ・読者が本を読む最大の動機は「その著者が書く世界観に浸りたい」=世界観の作り込みが大事(細かいところまでリサーチする。実際に自分が体験するのが良い。手抜き禁物)
    ・良い作品を読んだ時は「なぜ良かったのか」を考えるクセをつける
    ・取材やインプットをする為にも、〆切を守ったり一定のリズムで書き続けることが大切
    ・一度書いたものは忘れる
    ・「自分はこれを書くんだ」というテーマをきちんと心に決める
    ・「売れるテーマ」から考えるのは間違い
    ・自分が「これだ」と思うテーマならどんな「テーマ」であっても、作者自身の心を打つ「キャラクター」や「ストーリー」にのせていけば、絶対に面白い作品となって読者に受け入れられる。

    自分の創作に活かしたいと思います。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.06.09

  • 充実大豆

    充実大豆

    荒木飛呂彦が漫画を描くときにに何を考え、どのように描いているのか、本人が詳細に語っている書籍。

    ほかの漫画や創作物をかなり細かく分析して、その分析を自分の漫画に落とし込んできたことがよくわかる。
    た自分の漫画におけるルールがしっかり定まっていて、だからこそ荒木作品は安心して読めるのだと感じた。
    何十年もトップを走り続けている作家であっても、いまだに悩んで分析を続けながら創作しているということが知れてよかった。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.03

  • 佐藤佐藤

    佐藤佐藤


    小学生のころ藤子不二雄 のまんが道 を読んでちょっとだけ漫画家に憧れた。
    しかし、絵が下手なのであきらめた。
    ストーリーもよく妄想していたが、全部何かの作品と似ている。
    つくづく漫画家ってすごいも思う。
    いろんな漫画、小説、映画を見れば見るほど、新しいストーリーは出てこない・・・。
    続きを読む

    投稿日:2023.05.20

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