【感想】山怪 山人が語る不思議な話

田中 康弘 / 山と溪谷社
(75件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
12
26
19
8
2
  • 狐に化かされたこと、ありますか?

    山の近くで暮らす人々から、奇妙で怖い実体験をまとめた本書。とろえどころのない話ばかりなのに、不思議なリアリティを感じさせます。

    著者が訪れた秋田の集落では、雪の季節はみんな家にこもり、囲炉裏端で山の話が語り継がれてきました。しかし、収録の人口も減少し、テレビなどの娯楽も増えてきた今、こうした話は静かに消えようとしています。そうした”語り”を残そうとまとめられたのが、この『山怪』です。

    気がつけば全裸で沢に入っていた人もいれば、山の中で存在するはずのない真っ白で美しい道に遭遇した人も。
    語られる怪談は数ページの短い話ばかりなのだけれど、そのほとんどに分かりやすいオチはありません。
    実体験ならではの、答えがないモヤモヤとした恐怖。ただの怪談ではなく、山の持つ不思議な魔力を感じさせるお話たちが詰まっています。
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    投稿日:2015.11.19

  • まさに現代版遠野物語でした

     昔々の話ではなく、ついこの前、こんな体験をしましたよという話を丁寧に拾い集めた一冊です。
     だから怪奇小説のように結末がはっきりしているわけではありませんが、まことに不思議な話が沢山収められています。
     山というか森林の中というものは、確かに不思議な感覚に陥ることがあります。私も職業柄(実は、元林学職の地方公務員です)、1人で渓流調査に出かけ、大きな岩の上で、弁当を広げることが新人の頃は多々ありました。すると、様々な音が聞こえてくるのは確かなのです。それは川のせせらぎ、風のざわめき、ばかりではありません。そんな不思議な音に包まれていると、何とも形容しがたい感覚に陥ります。多分それは、海に小舟で漕ぎ出しても同じなのかもしれません。
     勿論、気のせいだ、頭の中で作り出された幻想だと片付けることもできるでしょう。でも、ついこの間の出来事などが紹介されているこの本を読むと、理屈にあわないことも、やはり確かに起きているんですね。
     完全に自然をコントロールすることなんぞ、人間に出来るわけがありません。科学が万能だったと過信した20世紀は、終わりました。自然に対する畏敬の念は、持ち続けなければならないと思います。
     この本を読んで、へぇ~、と思うか、まさか、と思うか、そんなこともあるかも、と思うかは読者次第ですが、かなり興味深い内容であることは、間違いありません。
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    投稿日:2017.06.30

  • レビューに惹かれて読んだら大当たり!

    多分面白いだろうなぁと確信めいた期待を持って読み始めましたが、実に面白い。勿論、笑えるという意味でも、役に立つという意味でもなく、ただただ面白い。

    さて、本書は山で起きた怪異、不思議なこと、それも基本的には些細な事を聞き取り調査し、その一部を収録したものです。怪談、オカルトに近いエピソード、人命に関わる事例も収録されていますが、基本的には恐怖を煽る内容ではありません。そのエピソードがいちいち面白く、興味深い。ですので、怪談好き、オカルトマニア向きではなく、民俗学マニア向きかと思います。

    エピソードに付けたられた筆者の言も、中々だと思いますが、個人的には2点、特筆したいと思います。
    一点目は、本書の調査の動機です。少数言語が消滅しているそうです。また、一民族一格闘技といわれる部族固有の体技も消滅しているとか。そのように古来存在した文化がフラット化した世界で失われることに対する焦燥感にも似た思いに駆られて本研究に着手したとのこと。正にその意気や良しと思いました。
    二点目は、近親者に関するエピソードに散見される「近親者の幽霊なら驚くものではなかろう」という趣旨のコメントですが、それも同感です。先に鬼籍に入った老妻が、同じく可愛がっていた愛犬の幽霊と一緒に、臨終がせまる夫である老人を迎えに来るなど、良いものだなぁと思います。

    最後に、一言、一応、科学を仕事にしている側ですが、これらを非科学的だと井上円了大先生のように切り捨てるのは、些かどうかと思います。科学で解明されている領域は実に微々たるものです。分からないものを、既知の知識で無理やり理論付けする姿勢こそ、科学的でないように思う次第です。

    ウチの犬が子犬のとき、散歩をしていたら、葬儀中の家の前でピタッと止まって空中をジーッと見ていたことがあります。こう言うことを、余り簡単に説明らしきものを付けてしまうのは、どうかな、という意味です。
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    投稿日:2017.04.27

  • 結構最近の話が多いのがビックリ

    怪談本ではない。全国の山村で取材した、何だか分からないけど本当にあった不思議な話を集めた本。未だに狐に化かされる話が結構多いのにビックリ(笑)

    怪談ではなく体験集なので、なぜ、どうして?は分からないのでモヤモヤしてしまらな話ばかりだが、それが逆にジワるとも言える。筆者も書いてるが、人間は不思議な体験をすると理由をつけて勝手に納得して、恐怖を紛らわせるようだが、それが正解かどうかはまた別の話。狐憑きの異常行動には、突然の脳出血によるものもあるのではないか?という説は結構、説得力ある気がするが、さて、どうでしょう?続きを読む

    投稿日:2017.11.18

ブクログレビュー

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  • 渡邉真生

    渡邉真生

    物語りとしてはオチが無いんだけど、それがリアルなんだよね。オチが怖ければもうこの世には居ないから。山って面白い。駈けたい

    投稿日:2023.03.07

  • はは

    はは

    思うことあって再度読み直したが、やはり怖い。マタギや木樵の人たちから聞いた話をまとめたものだが、とても怖い。
    夜一人で布団の中で読んでいたら、何かが屋根の上やベランダにミシミシッと乗ってきたような音がして、思わず防犯カメラで確認してしまった。何もいなかったが怖かった。夜に読むのはおすすめしない。
    でも、2巻も借りてこよう!
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    投稿日:2022.08.25

  • towa

    towa

    山での怪異を集めた聞き書き。
    マタギや猟師、狩猟に関する著作が多い田中さんらしく、マタギから聞いた話が多いです。
    山で起こる、説明できない不思議なできごとの数々。それを語る山に住む人々。
    暮らしに思いを馳せるもよし、純粋に怪異譚を楽しむもよし。
    登場する人たちの見解が出てくるのも面白くて、「疲れてるから」とか「昔から聞いてるからそう思うだけ」とか。こういう言葉が入ると、語る人に途端に親しみを覚えます。ふつうの、隣近所にいるような人が主人公なんだな、と。
    そういう人たちを探し歩いた田中さんの苦労にも感嘆する一冊でした。
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    投稿日:2021.12.31

  • tsuchinoko2021

    tsuchinoko2021

    マタギや山里に住む人々が語る、山で体験した不思議な話が多く収められているのが新鮮。現代版の『遠野物語』のようです。 30年以上登山をしてきた私ですが、一度もこうした経験はないです。鈍感なんでしょうね。

    投稿日:2021.01.25

  • naluカズ

    naluカズ

    普通の怪談話と違い、何か判らない物は判らないまま書いてある。発光体、狐火、魂、足音、気配だけ。本来の怖い経験ってこう言うモノだと思う。姿形は見えないけど、絶対そこに何かいる。って言う体験。続編も読んでたい。続きを読む

    投稿日:2020.06.12

  • あきよし

    あきよし

    このレビューはネタバレを含みます

    都会が舞台の怪異本はよくありますが、山を中心とする怪異本は珍しく思います。体験者の証言だけでなく、考えも掲載されているので、怪異を信じない人が、それらしい理由を述べているのも面白かったです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2019.12.15

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