喪失

カーリン・アルヴテーゲン, 柳沢由実子 / 小学館
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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  • 推理小説というよりサスペンスです

     書籍説明には、ホームレスがある日突然、猟奇殺人の容疑者となると、あっさり書かれていますが、このホームレスの女性は、只者ではありません。生活の糧は、高級ホテルで男を引っかけ、食事と暖かいベットを頂くこと。ただし、カラダは与えないという、したたかな女です。でも、ホームレスになったワケは、リストラとかそんな話ではなく、普通ではない家庭環境、成長期の体験が原因らしく、精神病院の入院経験もあり、裕福な家を飛び出して10年以上ということが読んでいるうちにわかってきます。
     そんな彼女が、ある男をカモにした翌朝、別室でその男が殺されたことを知ります。しかも、内蔵を切り裂くという猟奇殺人。当然、容疑者として追われることになりますが、なぜか次々と同じように人が殺され、ワケがわからないうちに、容疑者として世間の話題の人となってしまいます。様々な要素が彼女を犯人であることを示しており、逃げ回る彼女は、最早絶体絶命!
     次々と殺される男女に共通点はあるのか?なぜあのようなむごたらしい殺し方なのか?はたまた彼女は本当に無実なのか?そうならば、どうそれを証明すればよいのか?
     絶望感漂う展開の中、過去の回想シーン、幻想シーン?が挿入されるので、ホントは無意識の内に彼女がやったのか?なんて思わせるシーンもでてきます。
     スウェーデンの作家が書かれたモノなので、なじみのない地名が沢山出てきますし、人の名前もロシア文学ほどではないにせよ小難しいものがあります。しかも、翻訳物特有の言い回しが、少々読みにくい。それでも、物語の結末がどうなるか知りたくて、ページをめくる手が早くなります。そして、ようやくたどり着いた結末は、思いもかけぬ動機と犯人でした。
     推理小説としては本格モノではないと思いますが、この緊張感溢れるサスペンスは、殺し屋とかスパイとかが登場するものではなく、日常にも潜在するであろう狂気として、逆に怖いものがありました。
     訳者のあとがきによれば、原題は「SAKNAD」というそうで、これには失踪という意味と喪失という意味があり、英語のタイトルは「MISSING」となっているとか。訳者の方は作者にお会いして、その意図を聞いた上で「喪失」としたそうで、確かに、読んでみると「喪失」の方が的を射ていると思います。
     全てのモノを打ち捨てて身軽になれば、お気楽な生活が出来るかも、と思わないわけではありませんが、自分に関わるモノ全てを喪失することが、こんなに恐ろしいことになるとは思いも寄りませんでした。
     初めて読んだ作家の作品でしたが、他の小説も読んでみたくなりました。
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    投稿日:2016.02.20

  • ミステリーとしてはややぬるめ

    ホームレスである主人公の女性が猟奇殺人の容疑者にされてしまい、自分で真犯人を突き止めるしかないと考える話。

    猟奇殺人自体の描写は新聞記事に書かれている程度で具体的ではなく、全体にあっさりめで、長さもあまりないのでわりと気軽に読めました。

    ミステリーの密度としてはそんなに濃くありません。どことなく、博物館で暮らしたりするような児童小説を思わせる雰囲気もあります。

    訳文がたまにやや読みにくくて意味をつかみにくいかも。
    続きを読む

    投稿日:2016.07.02

  • しゃんと生きる

    なかなか考えさせられるお話でした。
    舞台や話はわかりやすく自由なホームレスとして生きてきたが、とあることで猟奇殺人の容疑者にされてしまい自ら真犯人を探し出すという推理サスペンス。
    途中自分の意見は通らず、全て親や周りの人に決められて自分の人生を喪失した裕福な子供時代や親や子供への思いをオーバーラップさせることで、生きる強さを感じられる本でした。
    顧みると主導権とか面倒で諦めていたり、自分を喪失してることに気づかせてくれます。シャンとしなきゃ!
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    投稿日:2017.12.31

  • 冷たい重圧と過干渉で支配するという暴力なき虐待

    地方都市の富豪の一人娘シビラの不幸は母親がシビラの心を全く理解しなかったことから始まる。常に冷たい重圧と過干渉で支配するという暴力なき虐待を繰り返す母親だったのだ。
    ただただ自由を追い求め18歳で家出してホームレスとなった。ところが32歳になったシビラは殺人犯に仕立て上げられてしまう。
    物語は少女時代の追憶と現実の逃避行が交互に繰り返されながら進む。ミステリとしてのワクワク感は少ない作品だが心理描写が素晴らしい。
    育児放棄や暴力と違い周囲に理解してもらうことが難しいが故に深みにはまる絶望感を見事に表現している。
    著者カーリン・アルヴテーゲンは大叔母が「長靴下のピッピ」の作者という文学家族の中で育った。家族の死や離婚など様々な問題を抱えご自身も深い鬱状態になり死を考える毎日だった。
    そんななかで自分の心を見つめるために小説を書いた。自由を求めるだけでは社会に適応できないと悩む姿は多くの人が思春期に経験する葛藤でもある。猟奇殺人から始まる暗い作品だが読了後はなぜか癒しを感じるのだった。
    続きを読む

    投稿日:2018.07.03

ブクログレビュー

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  • 0071

    0071

    まだ北欧ミステリーが日本で知られていなかったころ、「ガラスの鍵賞」というものが知られていなかった頃、出版されたっぽい。
     ストックホルムで暮す32歳の女性ホームレスが突然殺人犯として追いかけられる。
     ほとんどの部分が主人公が生き延びるための方法が書かれていて、ほんとにラストのラストですべてが明かされびっくりした。続きを読む

    投稿日:2015.03.27

  • トト

    トト

    アルヴテーゲン2作目、推理小説というかドラマ小説?地名が多く出てくるので日本語で読むとちょっとくどく感じます。夏の別荘への思い入れとかはなるほどスウェ人らしい描写。ホームレスという背景も社会問題をうまく取り上げてるな~。スタッズミッションで薬もらえるのは知らなかった。Från Stockholmare till Stockholmareというのにはそういう補助も含まれてるんですね。続きを読む

    投稿日:2013.11.13

  • emi

    emi

    翻訳物としては読みやすいほうでした。
    ただ、クライマックスのサスペンス感や
    主人公の女性の生き様や暮らしぶりも
    全体にどこか物足りない感じが残りました。
    特に母親との関係の最後に出てきた件、
    もう少し丁寧に描いてほしかった、というか読みたかった。続きを読む

    投稿日:2012.07.12

  • Asako

    Asako

    スウェーデン作家によるミステリーです。
    主人公は富豪の元令嬢のホームレス、32歳。極力社会との接触を絶ち、微罪を重ねながらも目立たないように生きていたのが猟奇的な殺人事件にまきこまれ…。
    現在と過去を織り交ぜて話はすすんでゆきますが、犯人探しよりも母親との確執が徐々に顕わになってゆく過程のほうに興味を惹かれました。続きを読む

    投稿日:2012.06.24

  • sana

    sana

    シビラは、道端にいるわけではないが、ホームレス同様の暮らし。
    18歳で家を飛び出して以来、ずっと身元を隠し、ストックホルムの無料で入れる所や似たり寄ったりの知り合いの住処を点々としていた。
    時には古着のブランド物を着て、ホテルのバーで裕福な男を引っかけ、財布を落としたと騒いだりして夕食をおごらせていた。
    街全体に影響力を持つ会社を経営しているフォーセンストルム家の社長令嬢だったのだが。
    高慢で横暴な母親と無関心な父親に、ひどい生活を強いられていたのだ。

    ある時、食事をおごらせただけで別れた男性が同じホテルの別室で惨殺される。
    翌朝、警察の声にとっさに逃げたシビラは、犯人にされてしまう。
    しかも、次々に同じ手口の殺人が起こり…
    入院歴のあるシビラは異常者の連続殺人犯として指名手配されてしまったのだ。
    髪を染めて点々としつつ、絶望と無力感にさいなまれる。
    学校の屋根裏に隠れていたとき、忍び入ってきた少年パトリックと気が合い、ついに正体を打ち明ける。
    利発だが孤独なパトリックは、真犯人を捜そうと協力を申し出る。

    被害者の共通点をネットで探し、ハッカーにも依頼。
    シビラは虐げられたままではいないと決意。
    関係者の元を単身、訪れるが…?!

    著者は1965年生まれ。
    脚本家から作家に。2作目の本書がベストセラー。
    北欧ミステリの女王だそうです。
    続きを読む

    投稿日:2011.10.08

  • qp1

    qp1

     最終的にホモの呪縛から逃れられなかった。

     猟奇殺人の疑いをかけられたホームレスのシビラがパトリックと出逢い事件解決に向けて進んでいく。

     パトリックは15歳だから読んでいたいまは同い年。この子みたいな子になりたい。

     シャワーをばれないように使うところがいちばんドキドキした。
    続きを読む

    投稿日:2011.09.03

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