【感想】常在戦場

火坂雅志 / 文春文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
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ブクログレビュー

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  • charlie-iruka

    charlie-iruka

    家康家臣列伝を集めた短編集。大河ドラマやってることやし家康さん周辺の話に興味あり。ドラマよりこっちの世界がしっくりくる。
    天下を取るにあたって優秀な家臣が重要。
    どの話もよかったけど商人が大事業を興して利と義を追求する角倉了以が主人公の川天狗がよかった。続きを読む

    投稿日:2023.05.09

  • wabisukegogo

    wabisukegogo

    高瀬川の開削、琵琶湖疏水を構想し、日本の物流効率を飛躍的に向上させ、全国に経済による「利」をもたらした水運の父、角倉了以。
    長久手の戦いでの失策で罪に問われ出奔の末、その立場を逆手にとって謀略役としての辣腕を振るい権勢に返り咲いた長岡藩初代藩主牧野忠成。
    日本の隠れざるヒーローたちの短編小説集。

    特に、義(おおやけ)のために働くことをモットーとしていた角倉了以の精神には、学ぶところ多く、そういう人物でありたいと強く思った。
    続きを読む

    投稿日:2019.12.01

  • Yukirobbinson

    Yukirobbinson

    鳥居元忠、井伊直虎、石川数正、大久保忠隣、阿茶、角倉了以、牧野忠成の7人を主人公にした短編集から徳川家康という人物を描いた作品。歴史の脇役を主人公に、主人公を脇役にして歴史の主人公を描く方法は火坂雅志さん独特で面白い。この方の新作がもう読めないのが非常に残念。続きを読む

    投稿日:2019.06.29

  • wankoronyan

    wankoronyan

    このレビューはネタバレを含みます

    徳川家康の周囲の人物にスポットを当てた短編集。直虎も出るでよー。これを読むと大河ドラマが整理ついて見やすくなる。

     家康は有名だからわかるけど、その家臣団は人数が多いし、名前が似ているのも多いし、大河だけじゃあ判別がつかなくて、なんとなくもやっとする。それを解消できる。

     常在戦場。戦は戦場だけにあらず。今でも大事な格言である。これは司馬遼太郎の『河井継之助』でもでてくるよ。




    「ワタリ」
     鳥居元忠のお話。もとはワタリ(山師とか白金売り、鋳物師とか)と呼ばれる商人の家系であるから、経済観が高かった。もとは熊野の出身の家系らしく、雑賀とかとも交流があった。鉄砲の導入も彼が促したりしたんだろうなぁ。こういう忍じゃないけど、裏の社会に精通する人材が必ずいるよね。

    「井伊の虎」
     井伊直虎の話。ここでは大河ドラマと違って、小野政次は悪いやつだった。これはこれで、戦国時代らしさがあってよいね。とはいえ、徳川の切込み部隊の井伊家のドラマがこんな劇的で、戦国時代は面白いなーとなる。これを読んでから彦根城行けばよかった。

    「毒まんじゅう」
     石川数正のおはなし。石川数正は清和源氏一門だったという良家の出で、三河の松平家の田舎臭くて朴訥な気風とは一風変わっていたという。源平合戦でもともと平家の家臣だった河内の石川家は、木曽義仲の京都侵入の混乱に乗じて寝返って、源治に味方して頼朝に家臣団入りを認められたという。
     良家出身だったゆえに雅を理解し、今川の京文化や京遊びに精通していたという。家康が出世して京都と通ずるようになった時にも貴族の窓口を務めた。
     秀吉に気に入られて、懐柔されるという裏切り者としてのレッテルを張られる最後で、なんか切ない。
     家康の最初の正室である築山殿(瀬名)との関係が噂されたり、浄土宗の徳川家で一向宗の家系であったり、醜いアヒルの子だったんだね。

    「梅、一輪」
     大久保忠隣のおはなし。大久保家は江戸時代になって、本多家との派閥争いに敗れるという切なさがあって、ドラマがある。
     大久保家は徳川家臣団のモノノフとして有名であり、数々の武功を上げてきた。長篠の戦いや三河の一向一揆で活躍した大久保忠世は息子を家康の近習に取り立ててもらい、お家の出世を果たした。
     大久保忠隣は猿楽師だった大蔵藤十郎を家臣にして金山経営を任せた。のちの大久保長安である。
     晩年の本田正純の父子との派閥争いは、武闘派には難しかったのかなーという印象。徳川家が法治国家を作っていくにあたり、本多正純のような切れ者が活躍していく世の中になるという魁だったんだな。
     岡本大八&有馬晴信の疑獄事件で本多を攻めるのに失敗したのち、逆に大久保長安の横領問題で配流させられる大久保忠隣が、潔くその処分を受け入れているところが、時代の変わり目って感じで、さわやかでよかった。

    「馬上の局」
     阿茶の局のおはなし。もとは武田家家臣の娘だったが、武田家滅亡で逃げ落ちた際に人売りに出されたところを家康に助けられた女性。子どものころに人身売買の経験のある家康は共感できたという。勇猛果敢で小牧長久手の戦いで騎乗で兵士を奮い立たせるシーンは凛々しい。
     阿茶は家康の戦場に付き添ったり、武士のように振舞ったり他の側室とは異なる姿を家康に見せて、その寵愛を得た。流産で子を産めなくなった後に、薩摩の局が生んだ秀忠の義母として養育係を任されるほど信任を得ていた。
     関が原に際して小早川秀秋の裏切りが勝負を決めたが、これは秀吉の正室の北政所が促したといわれている。その北政所の調略を任されたのが、阿茶の局だったという。同じく殿様の子を産めないながらも地位を持つ女同士として打ち解けたという。
     家康が天下を取った後、阿茶との間に亀裂が入る。阿茶の連れ後のお岩と家康がおイタをして身籠ってしまったのである。自分の娘が旦那と子作りしたっていうのは、流石にキレた。お岩は後藤庄三郎のもとに嫁いで事実を隠蔽した。そのために、後藤家は将軍家の血があるからという噂のためにずっと金座の管理を任される盤石なお家になったという。
     阿茶は家康が死んだ後も活躍した。仏門には入らず、お家のために働いて秀忠のサポートを続けた。秀忠の娘である和子は後水尾天皇のもとに嫁ぐときには守役として同行し、官位として従一位という高位を得た。
     一度は人売りに出された身が不思議なものである。

    「川天狗」
     角倉了以のおはなし。世のため人のためになるよ言うに儲けをした商人。阿茶の局の癪の病を、角倉了以の弟である吉田宗恂が治療したという縁で家康と交際を持った。豊臣時代にも朱印船貿易をしていた角倉家の分家の角倉了以に再び貿易をさせて外貨を稼がせたかったのである。了以の権力にこびないビジネスライクな人格を気に入ったとのこと。
     しかし、角倉了以の野望は貿易で富を得ることではなかった。河川工事で世の中を革新することだった。
     了以は貿易で稼いだ資産で保津川の開疎を行った。丹波から嵯峨野に通ずるこの川は岩場があって船が通れない。もしこの川で舟運が可能になれば、兵庫と京都が最短距離でつながって流通経済は飛躍的に向上する。了以はこの事業を先頭に立って推進していった。
     「利は義なり」公共事業は政治の担当だが、商人自ら公共投資を行って経済力を向上させる。一見相反しそうな利益と義心を成功させた。
     この功績から、了以は幕府から富士川の開疎と鴨川の整備を任された。そして了以を一躍有名にした高瀬川の開削も成功させた。鴨川の氾濫を防ぐために人工的に高瀬川を造成して、宇治川につなげる約10キロの工事は京都の物流と水難を大きく改善した。
     この高瀬川開通の後、了以は琵琶湖疎水を計画していたといわれる。その許可の手紙が林羅山から来ていたが、それを受け取る直前に角倉了以は亡くなったという。当時の技術では比叡山を切り開いたり、トンネルを掘る技術がなく非現実的だったかもしれないが、もし実現すれば日本海と京都が水運でつながる大革命が起きていたはずである。そして、琵琶湖から流れ出る水が増えて湖面が下がり、新田開発も進み、大きな変化があったに違いないといわれている。

    「常在戦場」
     牧野忠成のおはなし。関が原の戦いで秀忠軍が真田の上田城攻めに苦戦して遅参した際、戦いに苦しんだのは功を焦った牧野忠成たちのせいだといわれている。その責任を負って牧野康成は蟄居、忠成は出奔したという。
     その後、忠成は家康から京都の板倉重勝のもとでの密命を受ける。
     忠成は秀忠の失策の泥を被されて京都に配流された惨めな没落武士という役を演じて、京や大阪の内通を任されたのである。関が原で勝利しても、まだ大阪には秀頼が生きており、豊臣家臣団はくすぶっている。そこに入り込んで内情を探る、難しい役割を得たのである。こういう人材の活かし方ができるところ、家康は流石である。
     京都で活躍した牧野忠成は、朝廷の籠絡を行って和子の入内の道なりを整えたり、大阪冬の陣と夏の陣でも活躍して、その役目を大いに果たした。
     活躍を認められ忠成は長岡藩初代藩主となり、幕末までお家を続いた。お家廃絶の危機から一転して徳川の信頼を集める中心に復活を果たした牧野忠成は頑張った。
     長岡藩の家訓に「常在戦場」という言葉がある。これはいつ戦が起きてもすぐに出陣できるよう臨戦態勢でいろ。という意味ではないとこの物語の後には思う。
     戦は戦場だけにあらず、どんな場所でも戦場と考えて、あらゆる方面で手柄を立てろ。という意味がありそうである。
     そういや司馬遼太郎の河井継之助の物語にも出てきたな。これは現代のサラリーマンにも大事な格言だ。

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    投稿日:2017.09.10

  • hazelnuts2011

    hazelnuts2011

    井伊直虎を読みたくて手にとったが、結局全部読んだ。全員がとてつもない異能異才人。もちろんこの人たちあっての家康だったのだろうが、同時にこの人たちを動かした家康のカリスマぶりもまざまざと伝わってくる。驚愕と感動の歴史ここにあり、という感じ。最後の最後に常在戦場の意味を知った時、明日の自分へのエールを聞いたような気がした。続きを読む

    投稿日:2015.12.09

  • 文藝春秋公式

    文藝春秋公式

    【急逝した著者が愛惜を込めて描いた傑作】家康を支えた異能異彩の七人の家臣を描いた作品集。戦国武将を最も愛した作家・火坂雅志の人生もまさに「常在戦場」だった。

    投稿日:2015.05.19

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