藝人春秋

水道橋博士 / 文春文庫
(27件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
9
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4
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  • “芸人”という人間の奥底

    「芸人を引退する」。
    そんな覚悟を持って書き始められたのが、『藝人春秋』。

    自身も芸人として30年以上芸能界で活躍し、たくさんの芸能人の活躍をそばで見つめてきた水道橋博士。
    その中でも強烈に印象に残る15人の怪人たちのエピソードを、完成度の高い言葉で紹介していきます。

    目標を立てると必ず成し遂げ、ついには早稲田大学合格、宮崎県知事にまで登り詰めるそのまんま東のストイックさ。
    死と隣り合わせの難病の息子を育てながら、テレビの前では笑いだけを提供する稲川淳二の辛苦。

    テレビで見る“演じる姿”だけではない、清濁併せ持った芸人という存在の奥底をあぶり出していきます。
    個々のエピソードも濃厚ですが、それを数十ページの原稿に圧縮して表現してしまう博士の書き振りも見事。

    「文芸にしたかった」という彼の言葉に、噓偽りはありません。
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    投稿日:2015.06.26

  • 良かった

    博士の人物批評はプロレス的で脚色もあるのかもしれないけど、とてもリアル。
    松本人志の稿は秀逸なので、彼のファンは必読です。

    投稿日:2014.07.29

  • 芸能界という、この世のものとは思えぬあの世。 テレビの裏側の物語を残したいと書き始めたのが、この『藝人春秋』だった。

    日本初かつ最長の芸能人ブロガーであり、なぜか石原慎太郎に文章力を評価されている水道橋博士。たけしに憧れ弟子入りするがどうやってもたけしにはなれない。芸人でありながらいわゆる芸能人以外との仕事相手に特化しもはやルポライター芸人と呼ばれるだけあり登場人物は多彩だ。

    そのまんま東 「東国原、軍団やめるってよ」と知事選に出馬し、正月番組「朝まで暴走たけし軍団」で60cmのチョウザメをブリーフに突っ込み暴走するも見捨てられなかったのに、「政界進出というあなたの夢についていけない」とかとうかず子を失う。

    甲本ヒロト なんと博士と同中。しかし博士はヒロトが売れてからも歌は知っていながら気がついていなかった。
    「楽しいことは楽(ラク)じゃないだよ。同じ字だけど、よく勘違いしている人がいるんだぁ」
    「『アイツの鳴らしたあの音を自分でも鳴らしたい』って思っちゃもうダメなんだよぉ。アイツがあの音を鳴らした時の”気持ち”をコピーするんだよ。衝動を。」

    石倉三郎 「辛抱ってなぁ我慢とは違うんだよ、分かるかい?」「辛抱ってのは、辛さを抱きしめるってことだからな」 たけしの引っ越しを手伝い部屋に帰らぬたけしの変わりにそのまま住み着く石倉師匠。

    草野仁 芸能界「最強」伝説は限りなく事実に近い。『力士伝説』幻の現役東大生国体相撲選手は選手が足りずにかり出された長崎県大会で優勝。『レスラー伝説』NHKの取材で訪れた関大で現役学生にフォール勝ち。『スプリンター伝説』高校時代の短距離の記録は11秒2。当時のインターハイ優勝記録に並ぶ。しかしオリンピックには史上最年少アナウンサーとして出場。

    古館伊知郎 「オシャレ関係で手紙を読むとき、古館さんはどうしてあんなに冷静に読めるんですか?」「・・・博士ぇ、オレはね『人より心が冷たい』んだよ。でも、あれにはプロの企業秘密もある。うん。ある方法がね。それはまぁ、得意技は人には語らないし、教えないけどさ」

    三又又三 「じゃあ口説いたのはYOUさんだけじゃないんだ。」「YOUだけじゃない!ME(ピンクレディ)もです!」

    ホリエモン「最終的には宇宙ロケット飛ばしたいんですよ!」 10年前から言ってたのか・・・

    湯浅卓 あまりに頭が良すぎるのは、むしろ凡人からみれば単なるバカ、並外れたお笑いにみえる。
    「ワタシはロックフェラーセンターを売った男です!」

    苫米地英人 あまりに頭が良すぎるのは、ー以下同文ー
    「オレが、ロックフェラーセンターを買った男なのね!」

    テリー伊藤 「な〜にぃが文学部だよぉ! だからオマエの企画書には漢字が多いんだよぉ!ええぇ?わかってんのかぁああああ?!!」新人作家「か、漢字ですか?」「あのさぁぁ、テレビの企画書ってさぁ、ひらがなで書くもんなんだよぉお!」「よし、明日からさぁホモになれ!!」

    ポール牧 辞世の句「金のかからぬ 悲願の里で 亡者集めて 夢芝居・・・」 指を合わせてパッチン、合掌。

    ヒロト再び 「談志=ロックンロールだと思うんだ。俺にもうひとつ人生があったら、16才の時に全てを捨てて談志の弟子に鳴りたかったぐらいすきなんだよぉ」

    爆笑”いじめ”問題 太田光は少し出るだけでまじめなお話。ピエール瀧(あまちゃんの寿司屋のマスター)高校のとき飲酒が見つかりかばってくれると思った仲間がみんな知らんぷりされたエピソードの後で「今さ、巷で昨今のいじめ問題とかあるじゃないですか?いじめるヤツ、いじめられるヤツ。あのね、そいつらに言いたい。お前ら将来伸びるから、今、死んじゃダメ!(爆笑)」伊集院光「(笑いながら)ホントに青臭いことじゃなくて、その一瞬、お前ら敵に囲まれたと思うけどその外側にもっと凄い色んなことあるから!(爆笑)瀧「今、受けたそのひどい体験は、今のお前にとっては受け入れがたいかもしれないが、お前その経験をしとくと、将来伸びるから!!(爆笑)」

    北野武と松本人志を巡る30年
    たけしと比較され「僕が一番だと思ってる」という松本、12年後の博士の質問に「博士ぇ、俺もアホちゃうから発言の意味は分かっとるよ。でもあの時は、ああ言わんと目の前の大きい壁を崩して前へ進めへんやろう。あれは、あのとき言うて正解やったわ〜」
    同じ頃のたけし「あいつらも昔の俺のように突っ張ってやってんだろうなぁ」「でも、俺のほうがより凶暴で、俺のほうがよりやさしい」

    稲川淳二 次男が難病にかかっていたことが分かったのは「すばらしき仲間」のリハーサル中。「ゆうちゃんだめかもしれない。」それでも本番では笑いながらギャグをやって、次は『夕やけニャンニャン』の司会へ。

    児玉清さんからの手紙 貴兄の心と勇気に感嘆した一夕でした。
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    投稿日:2014.12.24

  • “芸人”?

    浅草キッドの水道橋博士が、いわゆる“芸人”との「素敵な」エピソードを綴った作品。
    ホリエモンとか、湯浅卓とか、苫米地英人とか、“芸人”か?という人もいるけど、読んでいくと芸人以上に芸人らしくて笑っちゃう。
    個人的には、博士と中学校の同級生だという甲本ヒロトが紹介されていたのが嬉しかった。
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    投稿日:2018.02.12

ブクログレビュー

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  • sshige

    sshige

    近頃、水道橋博士のyoutubeを見る機会が多いので、そこから興味を持って読んでみた。2000年代中頃に書かれた文章が多い。

    時事人物批評本だと思っていたが、内容は古びてない。名前も顔も知らない人がいて、その章はさすがにキビシかったが、印象的な章がいくつかあった。章によってだいぶ味わいが異なる。書き手の器用さを感じた。書名は「文藝春秋」をもじったのだろうけど、「藝人春秋」は言い得て妙だ。夏でも冬でもなく、移ろいゆく季節である春と秋。そんな季節を生きる藝人の人生模様。

    そのまんま東の二面性は、ここで解説されて少し腑に落ちた。ポール牧の章には哀愁を感じたし、テリー伊藤の章では不条理ナンセンスギャグを体現したような人物像におののいた。ホリエモンは嫌いだが、この頃からロケットを飛ばすと言っているのはスゴイ。稲川淳二の章は何も言えん。

    いじめの章を読んで、水道橋博士はリベラル寄りの保守なのかもしれないと思った。いじめ問題に関しては「逃げてもいいんだよ」的なことが正論になっているし、実際正しいと思う。しかしそれだけでは生きていけない気もする。

    石原慎太郎はキライだが、しかし石原に象徴されるような理不尽で暴力的な壁や圧力のようなものは、案外大事なのかもしれない。枠があってこそ人は自由になれる、というような意味で。それに従って生きるのか、それとも反発して生きるのか。いずれの生き方にも覚悟が生まれるのではないか。今はその壁がリベラルによって壊されつつあって、そのせいで何処を目指せばいいのかわからなくなっている気がする。
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    投稿日:2021.12.07

  • フロッガー

    フロッガー

    通勤のお供にと思って読んでみたら、なかなか読み応えがあった。水道橋博士の人物に対するマニアックな審美眼がよいです。出てくる人たちが怪人物ばかりですが、その魅力を的確に説明して一般人にも分かる様に翻訳してくれます。良書でした。続きを読む

    投稿日:2021.07.13

  • よし

    よし

    題材となっている人たちはみんな個性の強い人たちなので、テレビ上ではもちろん知っているのだが、この本を通してそれぞれの人間性の部分や画面の裏側の部分も知れることで、それぞれの面白い部分や魅力が分かって楽しんで読めた。特に甲本ヒロトと苫米地の話が好き。続きを読む

    投稿日:2020.11.26

  • bunchinlove

    bunchinlove

    書いてあることは面白いんだけど文体が不快。博士のナルシシズムがダサいのかなー。解説の若林の文章は美しくて、何が違うんだろうと不思議に思った。

    投稿日:2018.09.07

  • kawaakami

    kawaakami

    たぶんどっかのwebでひっかかって読んだんだけど、よかったですよ。堅くて生真面目で、流れるような文体ではないけど、すいすい読める。尊敬とかが下敷きにあるからかな。三又の話とか、草野仁の話とか。

    投稿日:2018.03.17

  • lasttrainhome

    lasttrainhome

    著者の観察眼が鋭く、大変興味深く読んだ。ただ、そんな聡明な著者がそこまでビートたけしに入れ込む理由がよくわからない。たけしってそこまで魅力のある芸人かな?全然わからない。かつては輝いていたのかな?
    んだかんだでやはり稲川淳二の回が一番よかった。息子さんが障害者でお涙頂戴の美談というわけではなく、著者が稲川淳二のプライベートというリアルにもっとも真剣に向き合っていたからだと思う。お笑いブームとかクソみたいにつまんなくて大嫌いだけど、芸の道というものを見せてもらったという感じ。
    あとは湯浅卓と苫米地英人の回がよかった。二人とも狂っているので、著者の冷徹な筆致で正確に描写するだけで面白くなる。それをわかっているから著者も興に乗って軽やかに冷徹さを徹底している。
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    投稿日:2018.03.04

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