【感想】百年法 上

山田宗樹 / 角川文庫
(141件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
39
70
21
5
0
  • 不老不死を司る独裁者の恐ろしさ

    あの『嫌われ松子…』の作者の初長編SFとの評を見て手にした。時はあたかも国政上で”独裁者”の誕生かと思われる時期だった。
     中身は確かにSFの衣を被ってはいるが、実は政治小説ではないか?いや『感染列島』のような恐怖小説か?と思わせる程、訴求力は凄い。
     主人公の登場は端から察そうとしていた。ぐいぐい引き込まれるテンポと内容。シチュエーションが交互に代わり、まるで線路のポイント交換の如く、頭の切り替えが大変だった。
     「百年法は是か非か」国民の総意はいずれに傾く?施行に注力する主人公軍団。しかし結果は?
     やがて独裁者が仕立てられてゆく。仕立てた主人公さえ独裁者の魔の手に握られてしまった。さあいかなる展開が可能なのか。とその時、集団自殺が発生する。その背景にある個の葛藤、また制度の否定集団、さらに対症療法さえ見つからない新型ガンの出来。根本からの解決策に挑む国家中枢。”軍”のらしからぬ法に基づく道理ある遂行。
     米国や中国、ロシアなど外国の影響はとの思いには全く触れず、舞台は国内を出ない構築も素晴らしい。
     自然人としての人間の生き様にも切り込んだ傑作だった。
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    投稿日:2013.09.25

  • 大著だが、一気読み必至のエンタメ本

    寿命を制限する法律をめぐって社会や人びとがどうなっていくかが描かれる。
    奇抜な設定も最初のアイデア倒れに終わらず、その後の展開もしっかりと練り込まれていて、あぁなるほどと納得させられることもしばしば。
    小説の中で流れる時間も長丁場だが、折々の時代の細かな変化を説明調にならず、流れの中で自然と語っているのうまいと思った。

    ただ、映像系に近しい文体で、「目を瞑る。サイレン。真下で鳴り止んだ。目をあける。背筋を伸ばす。夜空を見上げる」など読むと、およそ文学書を読んだ気にはなれない。
    続きを読む

    投稿日:2013.12.11

  • 上下巻通しての感想です。

    「不老不死」という禁断の果実を手に入れた日本人が国の未来に向けてどのような選択をとるのか。非常に重いテーマを扱った作品となっています。「不老不死」は夢の技術ですが決して幸せだけを生むわけではなく、人口爆発を避けたり新陳代謝を即すためには法律による強制的な死が必要となります。それが「百年法」なのですが、その必要性がわかっていながらも自らの命は絶ちたくがないために導入を拒む国民。このあたりのジレンマは実にリアルで、最近関西であった地方選挙を思い出してしまいました。設定はSFそのものですが、中身は人間ドラマあり、政治ドラマありと娯楽性たっぷりに描かれています。重厚な読み応えと高いエンタメ性を両立させている一押し作品です!続きを読む

    投稿日:2015.07.18

  • この本を読めて今週末は満足!著者初SFとは思えない高い完成度

    「不老不死」をリアルな現実として描いた近未来SF。科学の進歩により永遠に老けない、死なない世の中が実現した近未来の架空日本を描いた作品。100歳なのに見た目20歳の女子大生が実現する世の中って、どんな感じ?興味を持った人は手にとって間違いナシ。珍しい設定のSFというだけでなく、人は本当に若いまま100年生きたらどんな風になるのか、という空想にリアルに応えてくれてます。ああ、きっと自分も社会もこんなになるかもと納得感を持って読むことができました。このあたりの人も内面をえぐる表現は、「嫌われ松子の一生」にも通じる作者の本領が発揮されていると思います。政治局面や警察機構、軍隊組織まで登場し、SFファンだけでなく社会・政治小説が好きな人にもお勧め。続きを読む

    投稿日:2014.04.08

  • 大著だが、一気読み必至のエンタメ本

    寿命を制限する法律をめぐって社会や人びとがどうなっていくかが描かれる。
    奇抜な設定も最初のアイデア倒れに終わらず、その後の展開もしっかりと練り込まれていて、あぁなるほどと納得させられることもしばしば。
    小説の中で流れる時間も長丁場だが、折々の時代の細かな変化を説明調にならず、流れの中で自然と語っているのうまいと思った。

    ただ、映像系に近しい文体で、
    「目を瞑る。サイレン。真下で鳴り止んだ。目をあける。背筋を伸ばす。夜空を見上げる」
    など読むと、およそ文学書を読んだ気にはなれない。
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    投稿日:2015.03.26

  • 単なるSFではありません

    肉体が永遠に老化しない技術が見つかった戦後日本のパラレルワールド。
    世の中から(見た目の)老人がいなくなったら・・・
    いつまで経っても世代交代が起こらなくなったら・・・
    そして
    終わりのない毎日が続いていくとしたら・・・

    いろいろな問題提起がなされ,下巻につづきます。
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    投稿日:2016.12.23

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ブクログレビュー

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  • 桜

    百年法の施行へ向けたストーリー。

    設定にリアリティがあり、現実を想起させる分、心に刺さる言葉があって、感情が揺さぶられた。

    投稿日:2024.06.22

  • 佐山 諒

    佐山 諒

    #百年法 上 #読了

    人生が如何に『死ぬこと』が前提として成り立っているのか思い知った

    そして、老いることは死を受け入れるためのとても重要な要因の一つだと感じた

    どうなる日本共和国

    #山田宗
    #角川文庫
    続きを読む

    投稿日:2024.06.09

  • Naoty

    Naoty

    2048年。不老不死が実現した日本。
    HAVIという不老技術によって永遠の若さを手に入れることができる。
    しかし、法律により百年後には人権がなくなり、必ず死ななければならない。

    こういう近未来設定好きだー。
    自分だったら何歳でHAVIを受けようかな。

    でもみんなが100歳まで生きると色々問題が出てくる…。

    確かに長生きすれば幸せってことではないよね、と考えさせられる。

    設定とストーリーは★5なんだけど、女性の描き方が気持ち悪くて、生理的に無理だったので−3。
    男性は活躍してて、なぜ女性は娼婦が多いのか理解できなかった。
    ストーリーは面白いけど、女性が出てくる度に不快になったので下巻に進まないかな…。
    Audibleにて。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.22

  • くろひょう

    くろひょう

    上巻を読んで感想なんて、そんな無粋なことは出来ません!
    (今までふつーに書いてる

    め、面倒じゃないからね(笑)

    投稿日:2024.01.26

  • にこ

    にこ

    ⚫︎感想
    これぞ、エンタメ本。読書が苦手な人もきっと楽しめる。パラレルワールドから、百年法、生存制限法が適用された近未来。見た目は日本共和国民はほぼ全員HABIという手術を受け、老化しない世界。大統領の独裁体制で生存制限法をめぐる政治家と官僚の思い…さまざまなドラマがあり、読む手が止まらなかった。後半も楽しみ。

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―国力増大を目的とした「百年法」が成立した日本に、最初の百年目が訪れようとしていた。処置を施され、外見は若いままの母親は「強制の死」の前夜、最愛の息子との別れを惜しみ、官僚は葛藤を胸に責務をこなし、政治家は思惑のため暗躍し、テロリストは力で理想の世界を目指す…。来るべき時代と翻弄される人間を描く、衝撃のエンターテインメント!
    続きを読む

    投稿日:2024.01.17

  • とま。

    とま。

    近い将来にありそうな未来のお話。
    人の命とは、命の重さを考えさせられるお話です。
    官公庁の描写がリアルで好きです。

    投稿日:2023.10.08

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