【感想】もう年はとれない

ダニエル・フリードマン, 野口百合子 / 東京創元社
(57件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
6
19
22
0
1
  • おじーちゃん、何やってんのっっ!!

    そんなツッコミを入れずには居られない、ハードボイルド(?)な作品です。
    主人公のバック・シャッツは偏屈で皮肉屋で元殺人課刑事で、そして愛妻家の87歳。
    かつての戦友が『「あんたに親切とは言えなかった」(←この言い回しが面白い)ナチス将校が生きている』と遺言を遺したばっかりに、トラブルに足を突っ込む事に…。「そんな無茶な」って事の連続で目が離せなくなりました。
    「年寄り扱いするな」と言いながらも、都合が悪い時は聞こえてない振りをしたり、寄る年波に勝てない事実を突き付けられるとしょぼんとしたりするおじいちゃんのキャラクターが秀逸です。コンビを組む孫のテキーラもなかなか変な性格で楽しい。
    その他、日本人にはあまり馴染みのないユダヤ人コミュニティの様子が詳しく描写されていて興味深かったです。

    年末恒例の各ミステリーランキングで読者部門の上位を占めていましたが、それも納得の面白さです。
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    投稿日:2015.03.13

  • 最高齢ハードボイルド?それとも年寄りの冷や水?

    元刑事で今は引退し、愛妻ローラと悠々自適の日々をおくるバック・シャッツ。その彼が昔馴染みの臨終の際に聞いた仇のナチの生存と金塊話。この謎を孫のテキーラと追うハメになるのだが周りには怪しげな人物が沢山出没し出し、連続殺人事件まで起こる始末。武器は強烈なジョークと三五七マグナム、果たして彼は動かない身体にムチ打って事件を解決に導けるのか。

    87歳で棺桶に片足突っ込んでいるバック・シャッツが主人公なのでアクションシーンは無理。(過去の回想シーンでは登場しますが)骨は脆くなり、脳梗塞にならないよう抗凝血剤を処方されているので手を握られただけでアザになる程の身体の弱さ。捜査は孫のテキーラの車とITツール頼み。昔取った杵柄と警官時代の捜査経験を引っ張り出して来ても、私物の三五七マグナムでの力押しと全然役に立たない。心は昔のままなのに身体がついていかないというジレンマに悩ませながら、最近は自分の記憶も曖昧という事で記憶帳をつけているというかなり残念な主人公だ。

    この小説の上手い処は、このマイナス設定を逆手にとって話を組み立てているところにある。つまりシャッツが記憶が曖昧や思い違いをしていてもこの設定でスルー出来るので色々ミスリードさせられる。また本作の魅力はこのマイナス設定の主人公シャッツが沢山のハンディを背負ながらも決して折れない心で喫煙とジョークを楽しみながら記憶帳と三五七マグナムを頼りに前半はナチの戦犯とその金塊、後半は連続殺人の犯人と対決する。

    まあムリは効かないので謎解きや話の展開は、もろハリウッド映画的で主人公シャッツもなかなか活躍しないのですが最後の最後に最大の見せ場が用意されているので安心して読んで欲しい。きっと爺さん、やるじゃんとなる事請け合い。

    ※解説でのネルソン・デミルの賛辞には笑った。デミルの代表的キャラ、ジョン・コーリーが年老いたら、まさに本作のバック・シャッツになるなぁと想像出来たからだ。
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    投稿日:2015.03.28

  • 年寄りだと侮ると、火傷するぜぇ!

     書籍説明に惹かれて読みました。登場するのが90近いおじいちゃんとなれば、「三匹のおっさん」か「龍三と七人の子分たち」のアメリカ版と思うじゃないですか。ところがどっこい、内容はもっともっとハードボイルドでありました。
     認知症傾向で、皮肉屋で、口がめっぽう悪いおじいちゃんが、沈着冷静な(途中まで?)孫と一緒に元ナチが持って行ったという金塊を頂いてしまおうという展開。もっともおじいちゃんの方は、復讐の気持ちの方が強かっかもしれません。この筋立てだけでも、触手が動くわけですが、読み進めていくと、関係する人が次々と残虐な方法で殺されてしまうのですよ。しかも、コイツが怪しいなんて思っていた人が。。。その犯人捜しの推理小説的要素と、ナチの金塊をどうやって奪うかというスパイ小説的要素が相まって、最後まで読者を引きつけます。これには翻訳のうまさも一役買ってます。登場人物は外国人ですからカタカナ表記ですが、これがなかったら和物ミステリーと思ってしまうかも?また舞台が現代ってのもミソですね。
     それにしても、やっぱりアメリカだなぁと思う描写が沢山ありました。それを一つご紹介。
     作中に出てくるのですが、アイゼンハワーは、主人公にこう言ったそうです。「しがみつくものが無くなったときには、きみの銃をしっかり握っておけ。」勿論フィクションなのかもしれませんが、これがすんなりアメリカでは受け入れられるんですよね。東条英機も吉田茂も、そんなことは絶対言わないでしょう。
     タイトルの「もう年はとれない」は、まだまだこれから色んな事が起きるだろうから、老いぼれてはいられないって意味かな?カッコよすぎるぜ、じいちゃん!
     なお訳者のあとがきに寄ると、既に映画化権を取得しているプロデューサーがいるそうな。新しいヒーローが誕生するかもね。となると、主演は誰がやるのかなぁ。個人的には、クリント・イーストウッドがいいかな?
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    投稿日:2015.06.19

  • 300万ドルの金塊

    第2次大戦時 ナチスの収容所で過酷な経験をし その後刑事となって 今や「伝説の刑事」ももはや引退して 現在齢87歳。当然 足腰は往年の頃の面影もなく弱り、あまつさえ、いつか いや既に認知症になっているのではないか と怯える毎日。
    ある時、収容所時代の旧敵が 豊富な逃亡資金をもとに身分を偽り アメリカ国内に潜伏していることを知り、孫の助けを借りながら捜索を始るハメとなった。 というのが主なブロットであるが ハードボイルド小説ではありがちなことではあるが、読ませるものは、主にストーリーだけではなく、洒脱で粋な(やせ我慢的な)生き方にある。アナログでしか生きてこれなかった主人公が、孫の駆使する先端技術ご結局理解できないまま しかし その優秀さを認めつつ進行する過程も面白い。 最後は…。 ネタバレになりそうなので。

    (粋な)主人公の
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    投稿日:2015.05.14

  • 粋で面白いおじいさんですよね。楽しかったです。

    登場人物のキャラ設定の妙ですね。ちょっとコミカルで素敵な物語です。
    シャッツの繰り出す自虐的な発言で、ナチスドイツの大虐殺や老人問題などの深刻な話題が陳腐にならずに
    浮き彫りになってきます。

    小説を読む楽しみの一つは、主人公に乗り移って疑似体験を味わえること。いつの間にかシャッツになって、探偵になったり、追手から逃走したり、銃を構えたりしている自分がいます。
    銀行の貸金庫からお金をかすめるシーンは自分がその場にいるような緊張感さえ味わえます。

    しかし粋で面白いおじいさんですよね。楽しかったです。
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    投稿日:2015.11.30

ブクログレビュー

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  • 1729623番目の読書家

    1729623番目の読書家

    87歳のユダヤ人で口の悪いジジイのナチスへの恨みやら金塊探しの話、殺人事件おきて、結構エグい殺され方するけどまあ面白いかな?孫に少しイラつく

    投稿日:2024.04.14

  • 山川欣伸

    山川欣伸

    スゴ腕の警官としてかつてブイブイ言わせていたバック・シャッツ。しかし、腕を鳴らしていたのも遠い昔、退職した今は現役時代のような動きのキレもすっかりなく妻と近くに住む孫と余生を過ごす毎日。そんなバックの元にある日、旧友が死の間際に最後の願いを口にします。その依頼とは、かつての大戦の際に収容所で2人を凄惨な目に合わせたナチスの将校の行方を突き止め、大戦終了時に持ち出したという金塊を手に入れて欲しいと言うものでした。最期の依頼を託した旧友はほどなく息を引き取り、バックは弱った足腰に鞭打って、宿敵ともいえる件の人物を追跡を決意します。しかし、お宝の噂をどこから聞きつけたのか、金塊を狙う複数の人間達が現れ、バックの調査はいきなり困難を極めることになりました。

    主人公のかつての宿敵に対する因縁と200ポンドの金塊という財宝を追跡するという、ある意味分かりやすい王道のストーリーですが、本書を際立たせている設定は、『加齢』 すなわち、タイトルの「もう年はとれないDon’t Ever Get Old」という年を取る事への恐怖にあります。中年や初老を主役に据えた作品はいくつかありますが、今作の主人公のバックは第2次大戦のナチスの収容所を生き延びた(主人公はユダヤ人、宿敵はナチスの将校という設定)なんと87歳。後期高齢者どころかもうすぐ米寿のお祝いです。老いの恐怖をコミカルに描くという意味では、ジョン・スコルジーのSF「老人と宇宙」と共通する印象がある感じです。

    とにかく、いまやすっかり足腰の弱った主人公は事あるごとに身体機能の低下を訴えつつ、ダーティーハリーはクリントイーストウッドばり活躍をする本書は、ユーモラスなミステリーでありながら、バックの老いていく恐怖を説得力を持って表現している点で、本当に楽しくも魅力あるストーリーでした。

    惜しむらくは中盤に入ってからの展開。主人公を付け狙う関係者の連続殺人が発生し、こっちの捜査に軸足が移ります。「罪を犯す手段と同期を持っている人間が何人もいるにも関わらず、一人も殺人者として直感的にしっくりこないことだ」のセリフ通り、終盤まで全く予想できないフーダニットとして良い出来ではあるのですが、老いの恐怖という本作の魅力が隠れてしまう感じがして、個人的には微妙なところではあります。
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    投稿日:2024.01.22

  • じゅう

    じゅう

    アメリカの作家「ダニエル・フリードマン」の長篇ミステリ作品『もう年はとれない(原題:Don't Ever Get Old)』を読みました。
    ここのところ、アメリカの作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    最高に格好いい87歳、伝説の元刑事。

    ●「ネルソン・デミル」推薦――「自分が87歳になったときには、「バック・シャッツ」のようでありたい。」

    捕虜収容所でユダヤ人のあんたに親切とはいえなかったナチスの将校が生きているかもしれない──臨終の床にある戦友からそう告白された、87歳の元殺人課刑事「バック・シャッツ」。
    その将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られ、周囲がそれを狙いはじめる。そしてついにわたしも、孫とともに宿敵と黄金を追うことになる……。
    武器は357マグナムと痛烈な皮肉、敵は老い。
    最高に格好いいヒーローを生み出した、鮮烈なデビュー作! 
    訳者あとがき=「野口百合子」

    *第1位『IN★POCKET』2014年文庫翻訳ミステリーベスト10/読者部門
    *第4位『IN★POCKET』2014年文庫翻訳ミステリーベスト10/総合部門
    *第5位『このミステリーがすごい!2015年版』海外編
    *第5位〈週刊文春〉2014ミステリーベスト10 海外部門
    *第5位『ミステリが読みたい!2015年版』海外篇
    *第10位『IN★POCKET』2014年文庫翻訳ミステリーベスト10/翻訳家&評論家部門
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    2014年(平成26年)に発表され、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)処女長編賞を受賞し、アンソニー賞新人賞、国際スリラー作家協会賞にノミネートされ、マカヴィティ賞新人賞を受賞、2014年(平成28年)の翻訳後、日本国内でも高評価された作品です… 期待して読みました。


    思いかえせば、戦友の臨終になど立ちあわなければよかったのだ… どうせ葬式でたっぷり会えるのだから、、、

    捕虜収容所でユダヤ人のわたしに“親切とはいえなかった”ナチスの将校が生きているかもしれない――そう告白されたところで、あちこちガタがきている87歳の元殺人課刑事になにができるというのだ… だがその将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られて周囲が騒がしくなり、ついにわたしも、孫に助けられながら、宿敵と黄金を追うことに……。


    孫の「テキーラ」とともにナチスの金塊を探る「バック・シャッツ」は、最高に格好いい87歳でしたね… 身体の衰えを孫の「テキーラ」にフォローしてもらい、まだまだ未熟な「テキーラ」の行動を「バック・シャッツ」がフォローするという二人の関係性も良かった、、、

    二人は、彼らを利用しようとしている? 戦友の遺族やカジノの集金部長、イスラエルの離散民省の職員、悪徳警官等と対抗しながら、徐々に秘宝に近付いていく… そして……。

    初期の認知症を患い、抗凝血剤服用中の87歳元刑事がこんなにカッコイイなんてねー 実際に身近にいたら大変だけどね、、、

    続篇も翻訳されているようなので、是非とも読んでみたいですね。
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    投稿日:2024.01.04

  • bauasano

    bauasano

    主人公の「バルーク(バック)・シャッツ」は87歳のユダヤ人で、常に強烈な皮肉な言葉を発し、何処かしこで紫煙を燻らすヘビースモーカーの爺さんだ。
    「バック」は、第二次世界大戦でノルマンディー上陸作戦に従軍し、ナチの捕虜収容所では生死に係る過酷な経験を経た後、何とか生きて母国のアメリカへ生還したタフな男だ。
    捕虜収容所で凄惨なリンチを「バック」に加えたナチ親衛隊の将校「ジーグラー」は、戦後のどさくさに紛れてユダヤ人から強奪した多くの金塊を持って海外へ逃亡したとの噂があった。
    この設定が核となって、タフな「バック」の物語が綴られる。
    アメリカへ生還後に社会復帰した「バック」は、メンフィス警察殺人課の辣腕刑事として、大いに名を馳せた実績がある逞しい男だったが、今では単に年老いた爺さんになってしまった。
    ある日、戦友だった「ウォルス」の臨終直前、「ジーグラー」はアメリカに逃亡後、未だ生存していて金塊をも隠し持っているとの言葉を「バック」に遺す。
    その噂を聞いても、「バック」は老いと初期の痴呆症を認識していたこともあり、当初は金塊には無関心だったのだが、孫の「ウィリアム」の力に助けられながら、憎き「ジーグラー」と金塊を追うことになる。
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    投稿日:2023.12.18

  • kimikokumiken

    kimikokumiken

    図書館の秋の読書週間の企画で、題名が分からないようにした袋に 入ったこの本を借りて来た!

    袋を開けてみて そういえば、久々に手にする海外物!
    昔は、推理小説を、よく読んだ物だが、この手の単行本は、文字が、小さく、薄い活字で、齢を重ねると、読みにくい!

    87才、元殺人課勤務の刑事と孫が、ナチの時代の金塊と生き残りを探しに!
    猛烈な 悪態を述べながら、ユーモアたっぷりに…
    ヒットラーの拷問の末、身体の一部も損傷しながら、この時代まで、その苦々しい体験が、蘇る。
    読んでいて、今、ウクライナで亡くなった人達も、拷問の末亡くなったと聞くと、日本の物価高ぐらい、我慢出来るような気がする。
    そして、アメリカという国の銃社会も考えさせられる。
    人種差別も当時は、ユダヤ人だけでも、差別化されていた!
    最後の方では、病室内でも、銃を携帯。
    瀕死の重傷でも、蘇るような主人公!
    ハラハラドキドキとするような、そして、言葉悪く浴びせる主人公なのに、何故か頑張れ!と応援したくなった!
    老化の認知症、メモ書きが、最後の取引に役立っている所も良いと思いながら、読み終えた!
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    投稿日:2022.11.12

  • don

    don

    ダニエル・フリードマン。87歳のもと刑事がかつて自分を酷い扱いをしてナチス将校が金を持って逃げ延びていると聞き、孫の手を借りながらそれらを追う話。将校自体は中盤で見つけるものの、捜索の過程で次々と同じく金を狙う者たちが殺されていき、その容疑が孫にかかる。
    皮肉とマグナムが武器の痛快な爺ちゃんがとても魅力的で
    婆さんのことをこころの中で本当に大切にしているのは良かったが、推理小説としては特に可もなく不可もなしオーソドックスな結末だったと思う
    続きを読む

    投稿日:2022.09.07

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