【感想】世界が日本経済をうらやむ日

浜田宏一, 安達誠司 / 幻冬舎単行本
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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4
3
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0
  • ガテンのいったアベノミクス本。

    イェール大学教授であり、 現内閣官房参与でもある浜田宏一氏のアベノミクスのこれまでの評価とこれからの課題の提案である。

    2014年4月の消費税増税を除き、アベノミクスには合格点を付けている。私も何冊かのアベノミクス本を読んだが、一番合点のいく内容だった。

    ただある程度経済学の知識がないと難しいかもしれない、と言っても理解不能というほどでもないから考えながら読めば十分楽しめる本だと思う。
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    投稿日:2015.04.06

  • 『経済学派の仁義なき戦い』

    不況脱出に金融緩和が効くか効かないか?

    マクロ経済における「貨幣」の役割について、喧々諤々の議論がされてきた歴史があります。
    経済の父であるアダム・スミスは『国富論』で有名な「神の見えざる手」が働くから介入は行わない方が好ましいから、それに異議唱えたのがケインズでした。ケインズはマクロ経済学を立ち上げ、不況時には神の見えざる手に経済を委ねず、金融財政政策を用いることを主張しました。

    ここで一つケインズ経済学の弊害として、不況時には金融政策よりも財政政策が効果があるとケインズが結論づけたこと。なぜなら、ケインズの時代は固定相場制であったから、金融緩和を行うと為替レートは通貨安の方向に動きますが、固定相場制の維持をすると外貨準備が枯渇するために、金融政策は封じられていた事実が無視されていることです。現在、変動相場制になったというのに、未だケインズ経済学の教科書に旧時代の記述が残されたことが弊害となっています。
    このあと、フリードマン、トービン、ルーカス、プレスコットを紹介しながら、要点を交えて経済学の歴史をおさらいしていきます。
    経済学の論争の歴史は「金融緩和は効くか否か」であり、金融緩和は経済に効くという考え方は少数派どころか、異端扱いされていたことにビックリしました。

    そして、この状況で著者が怒り心頭なことが2点あります。
    ひとつは、経済の歴史を真摯に学ばず、「デフレは、生産年齢の人口の減少によって生じた現象である」などという本がベストセラーになる日本の情けない現状。
    もう一つが優秀な日本の若者がアメリカに留学して、新しい古典派的な経済学に毒されて帰国する現状。
    事実、著者はこう言われたこともあるそうです。「浜田は昔の経済学を学んだ人間であって、私のほうが新しい経済学を知っている」

    さて、現実問題としてアメリカ経済の復活は、FRBの金融緩和政策が正しかったことを示していますし、
    「なぜ、これまで金融政策が効かなかったといえば、それは金融政策がアメリカですらまもとに実行されてこなかったからです。効かない、効かないと言って、試されたことがなかったからです。」
    と、経済学者のクリスティーナ・ローマーが身も蓋も無いことを言ってます。

    さて、デフレは生産人口の減少による減少を著者は否定してましたが、本書ではデータを用いて反論しています。単純に人口減少している日本以外の国と比べるとデフレが起きているのは日本だけという事実です。
    したがって、外国人労働者の受け入れで労働人口を増やせば、デフレ脱却に効果があると短絡的に考えることは危険だと感じました。

    このあと、浜田氏、安達氏の共同著者が対談形式として、アベノミクスを反対している勢力分析とヘッジファンドの投資戦略を語っていきます。
    なぜなら、日本の経済復活した富を奪われないためには我々も知恵をつける必要があるからです。知恵がないといくら情報が目の前にあっても、正しい決断ができませんから。

    本書は、アベノミクスに対しての記述がメインではありますが、今回はあえてそこは省いての感想文にしました。なぜなら、そこを抜きにした「経済学の仁義なき戦い」が面白く、また為になったからです。
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    投稿日:2015.08.18

ブクログレビュー

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  • Tessei Hosokawa

    Tessei Hosokawa

    アベノミクスは成功だったのか。

    最後の章の以下の4つが今後重要なのは、2019年になった今でも変わらないように思う。

    「規制緩和」「女性の社会進出」「TPPの推進」「大幅な法人税減税の実施」

    も、その流れにはなりつつも、スピードが遅いかも、というのがあるよなぁ。世界が日本経済をうらやむ日は遠のいているような感覚。続きを読む

    投稿日:2019.04.04

  • miura1202

    miura1202

    社会人のマクロ経済学再入門ともいえる金融緩和をはじめとするアベノミクスの啓蒙書です。非常に分かり易く、アベノミクスの効果と仕組みを説明してくれています。一般人をはじめとしていろいろな方に読んで、アベノミクスに対する理解を深めてほしいと感じた一冊です。続きを読む

    投稿日:2016.05.27

  • yk

    yk

    読了。経済学の論争の歴史は「金融緩和が効くかどうか」に集約される。あとがきにも有るけど、この本は社会人のための「マクロ経済学再入門書」と間違いない。アベノミクスの思考整理にもなる。金融の分野で働くこれからの人には必読と思われます。オススメの一冊。続きを読む

    投稿日:2015.09.22

  • arafunesan

    arafunesan

    このレビューはネタバレを含みます

    2015/06/16:読了
     勉強になったこと。
     年金の株式保有割合が低いため、株価があがると、割合を減らすために売らなければならない。
     ただ、値下がりの時に、株の保有割合が多いと、年金原資を減らしてしまう。
     後者の問題をクリアできれば、株式保有割合をあげるのもメリットはある。それが出来ないと、食い荒らされるだけになる。

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    投稿日:2015.06.16

  • kakabalika

    kakabalika

    アベノミクスがなぜうまくいっているのかを解説している。特に金融緩和の効果について説明している。
    金融緩和は日銀が国債を買い取り、銀行のキャッシュを増やすもの。キャッシュとして持っておくのがもったいないと感じる銀行は資金の活用をはかる。
    デフレの小体を少子高齢化とするのを真っ向から否定している。
    デフレが景気が悪い原因。インフレ目標をもって、これから景気が上昇するという期待を持たせることで、景気が回復する。
    貯金をしておかなくても大丈夫という不安を取り除く必要がある。
    続きを読む

    投稿日:2015.05.03

  • housoushi

    housoushi

    『アベノミクス』の生みの親と言われているイエール大学名誉教授浜田宏一氏による現時点では成功?と言われている金融緩和による経済対策の解説。
    教育学部出身の私レベルにでも非常に分かり易い内容でして、まあ、この教授も色々叩かれているみたいですが、通貨安(円安)の必要性は理解できますし(実際に円高による名目GDPが減少してる事実)、失業率の低下等、その他色々と数字が良くなっている訳で・・・・それなりに評価していいのではないかと思いますが。
    ただ輸出で儲けている企業はGDPの14%と言われている中で本当に円安でいいのかと思っておりましたが、あらら、現実の株高。本当にありがとうございます。飲み代は確保できました。
    一部の大手企業の為のアベノミクスと言われている中、まあ、ある経済対策によって日本人全員の懐が一気に潤うって事はあり得ないわけで、まず大企業から儲かって長いタイムラグあって我々庶民に行き渡るってのが普通だと思うのですが、それを認めない社会主義者風の輩もいるのも事実でして、なら、そもそも大手企業が儲からなかったらその裾野で展開してる俺らはもっと死ぬぞって、分かってんのかよおい、と優しくお伝えしたい本日の株式市場を売り攻撃で昨日の損失を取り戻した私です。嫁にバレずに済みました。
    真面目な話、財政政策ではなく金融緩和による初めての成功例がリーマンショック後のアメリカでありまして、この事実をしっかり受け止め、このままいい感じで株高が続く事を高い所からではございますが御礼も込めて厚くお祈り申し上げます。
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    投稿日:2015.04.07

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