【感想】【合本版】終わらざる夏 全3巻

浅田次郎 / 集英社文庫
(60件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
15
21
14
4
0
  • 戦争の悲劇と簡単に捉えられないものです

    これまで自分が全く知らなかった史実がもとに書かれた小説で、とてもショックを受けました。二度と戦争は起こしてはいけない。この世はカムイ ウン クレだから。

    投稿日:2015.04.11

ブクログレビュー

"powered by"

  • 近藤真弓

    近藤真弓

    大正生まれの人たちが次々と兵隊にとられたんですね。
    たしか、祖父の兄たちが何人もそれで亡くなりました。
    そのとき、曾祖母は何を思ったのか…。

    投稿日:2024.03.24

  • ibarakimaru

    ibarakimaru

    太平洋戦争末期にアリューシャン列島の最先端部である根室から1000キロ、ソ連のカムチャッカ半島先端と目と鼻の先の占守島(シムシュとう)に取り残された戦車部隊の奮闘を描いた作品。ぜひ実写化して欲しい。
    「終わらざる夏」は第11戦車連隊の顛末だけを描いた作品ではない。徴兵された元出版社勤務の45歳の老兵、缶詰工場に送られた女工達、上陸作戦に駆り出されたソ連兵、その後のシベリア強制労働など、さまざまな人の織り成すドラマ。
    第11戦車連隊の兵士の目線と上陸部隊のソ連兵の目線と、両方から語られる。
    心に響いたのはヤクザ者の萬吉が45歳老兵の子供(集団疎開中だが脱走)を助けるシーン。
    浅田次郎は戦争の悲惨さを伝える事に人生を賭けていると感じる。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.08

  • ysano911

    ysano911

    浅田次郎『終わらざる夏』集英社文庫 読了。終戦間際の夏、北千島の占守島で起きた知られざる戦い。盛岡管内における3名の補充要員(英語翻訳者、歴戦の軍曹、帝大医学生)の召集過程が丁寧に描かれる。登場する一人一人にささやかな夢があった。最後に出てきた藁半紙の辿ってきた道程に思い馳せたい。続きを読む

    投稿日:2023.12.09

  • tamazusa_do

    tamazusa_do

    このレビューはネタバレを含みます

    歴史物は、よく知られた事件に関してはおおむねネタバレである。
    現代に生きる我々は、昭和20年の8月15日に、玉音放送で全日本国民に敗戦を知らされるということを知っている。
    だから、昭和20年7月などという日付を見れば、ああ、もう少しで終わるのに、と思う。
    しかし、当時でももう少しで終わるだろうと予感していた人たちがいたとて、赤紙が来たならば逆らうことはできないのである。
    今私たちがこれを読んでどうすることもできない。
    しかし、知っておくことくらいは出来る。そして大切だろう。

    時に、昭和20年7月。
    すでに沖縄は陥落し、軍は本土決戦に向けて最後の「根こそぎ動員」にかかっていた。

    プロローグでは、その「動員」の仕組みが描かれる。
    今まで、よく知らなかった部分だ。
    参謀本部は動員の人数割を決めて下命するだけ。
    どこに何人。ここでは具体的な名前は上がらないし、個人の顔は見えない。
    それが地元まで下ろされて初めて、人数に合わせて名前が与えられ赤紙が下るのである。
    「地元」で、人員を選び出す苦悩。
    人口の少ない地方の村ゆえ、名簿のほとんどは顔見知りである。
    自分が兵隊に行くより辛い。
    戦争が終わったら腹を切って死ぬつもりだ、と村役場の戸籍係兼兵事係。

    この「根こそぎ動員」で岩手県から招集された、主要人物となる人たちが、最果ての占守(シュムシュ)島に集結するまでが上巻である。
    本土決戦を想定した、人数的にも異常な動員に加え、「特業」動員では単なる頭数合わせではなく、確実に「使える」人物を選定しなければならず、村の兵事係は血眼になって名簿を繰る。
    結果、【首を傾げるような招集】となったのは、彼らの持つ『特業』が理由だった。

    ・片岡直哉(かたおか なおや)は【兵役年限ギリギリの45歳もあとひと月残すのみ。極度の近眼】で、徴兵されたことはない。
    東京の出版社で翻訳の仕事に就いていた。『英語に堪能』である。
    ・菊池忠彦(きくち ただひこ)は【東京帝大医学部に在籍中】だったが、実は岩手医専を出てすでに『医師免許』を持っている。
    もう、岩手県は無医村だらけである。
    ・富永熊男(とみなが くまお)はタクシー運転手。この男だけは歴戦の軍曹で、金鵄勲章を授与されている。ただし、名誉の負傷で【右手の指が三本失われている】。
    現在と違い、『運転免許証』を持つ人物は多くはなかった。

    皆の来し方が語られ、すっかり感情移入してしまっている。
    ここから、誰が生き残り、誰が命を終えるのか・・・
    タイトルが示すように、彼らの戦いは、8月15日には終わらないのだろうな。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.07.21

  • saga-ref

    saga-ref

    市ヶ谷台で行われる大本営・動員班参謀というエリートが起草したのは命を数値化した無機質な動員表だった。それは末端である東北の盛岡連隊区、そして村役場に伝達されれば、一人ひとりの顔と名前が想起しうるものとなる。動員の最前線に立たされた村役場吏員。赤紙に翻弄される国民。敗戦処理の通訳として動員されたとは知らぬ片岡。不足する軍医を補充するため召集される菊池。激減した運転要員の代替として召集された鬼熊。その3人が運命の渦中に巻き込まれる描写が、戦争の悲惨さを否応なく際立たせる作品。中巻へ読み進める。続きを読む

    投稿日:2023.03.12

  • じゅう

    じゅう

    「浅田次郎」の戦争小説『終わらざる夏』を読みました。

    「半藤一利」の『新装版 太平洋戦争 日本軍艦戦記』に続き、第二次世界大戦関連の作品です。

    -----story-------------
    〈上
    1945年、夏。
    すでに沖縄は陥落し、本土決戦用の大規模な動員計画に、国民は疲弊していた。
    東京の出版社に勤める翻訳書編集者「片岡直哉」は、45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取る。
    何も分からぬまま、同じく召集された医師の「菊池」、歴戦の軍曹「鬼熊」と、「片岡」は北の地へと向かった。
    ―終戦直後の“知られざる戦い”を舞台に「戦争」の理不尽を描く歴史的大作、待望の文庫化。
    第64回毎日出版文化賞受賞作。

    〈中〉
    「片岡」の一人息子「譲」は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。
    「譲」は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の「静代」とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。
    一方、「片岡」ら補充要員は、千島列島最東端の占守島へと向かう。
    美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。
    ―否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。

    〈下〉
    1945年8月15日、玉音放送。
    国民はそれぞれの思いを抱えながら、日本の無条件降伏を知る。
    国境の島・占守島では、通訳要員である「片岡」らが、終戦交渉にやって来るであろう米軍の軍使を待ち受けていた。
    だが、島に残された日本軍が目にしたのは、中立条約を破棄して上陸してくるソ連軍の姿だった。
    ―美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。
    戦争文学の新たなる金字塔、堂々の完結。
    (解説/「梯久美子」)
    -----------------------

    集英社が出版している月刊小説誌『小説すばる』の2008年(平成20年)6月号から2009年(平成21年)10月号に連載された作品で、第64回毎日出版文化賞受賞作です… 歴史の闇の中になかば隠れつつあった太平洋戦争終戦後(もしくは終戦準備・戦闘停止 期間中)における占守(シュムシュ)島での戦いにスポットをあてた物語、、、

    1945年(昭和20年)8月9日、ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破棄して対日参戦… ポツダム宣言受諾により太平洋戦争が停戦した後の8月18日未明、ソ連軍は占守島も奇襲攻撃し、ポツダム宣言受諾に伴い武装解除中であった日本軍守備隊と戦闘となり、戦闘は日本軍優勢に推移するものの、軍命により21日に日本軍が降伏して停戦が成立、23日に日本軍は武装解除されたが、捕虜となった日本兵はその後大勢が法的根拠無く拉致され、シベリアへ抑留された という史実を忠実に辿りながら、アメリカとの和平交渉の通訳要員として兵役年限直前の45歳で招集された翻訳書編集者「片岡直哉」、岩手医専卒・東京帝大医学部の医学生で軍医として招集された「菊池忠彦」、大陸でたてた手柄で金鵄勲章を授与された鬼軍曹で4回目の招集で占守島に送られた「富永熊男(鬼熊)」の三人の登場人物を軸に、過酷な状況下での人間の本質を照射しつつ、それぞれの場所で、立場で、未来への希望を求める人々を描いた巨編(上・中・下で約1,050ページ)です。

    重層的で物語の奥行が深く、人物造形にも優れている作品だったので、読んでいるうちに、どんどん作品の中に引き込まれていき、登場人物の目線で物語が展開していく感覚で読み進めていくことができました… 『終章』では、辛いとか、哀しいというよりは、胸が苦しくなるような気持になり、「鬼熊」の母親に宛てた手紙や、少年兵「中村末松」の遺した押花帖が出てくる場面では、涙が止まりませんでした、、、

    戦争は終わったのに、戦闘が始まる… この大いなる矛盾の中で、戦う兵、死にゆく兵、戦争の禍々しさと非情さ、そして愚かさに胸を打たれましたね。

    終盤の戦闘シーンは、その少し前から登場していたソ連の現場第一線の兵からの目線で描かれているのですが、彼らもまた、終わったと思っていた戦争で、再び命を賭して闘わなければならないという矛盾を抱えながら行動しており、戦争というものの非情さや非人間的な部分が、巧く描かれていたと感じました、、、

    この戦闘の矛盾を訴えた「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」の報告書には共感する部分が多かったですね… 略奪を目的とした大義なき作戦行為は、現場では誰も望んでいないんですよね。

    不条理な戦争(戦闘)に、国土とそこに暮らす人々を守るために誇り高く戦った人たち… 軍人も民間人もそれぞれの誇りと愛するものを守るために戦ったんですよねぇ、、、

    久しぶりに読書しながら泣いちゃいました… 涙が止まらないほど感動した、忘れられない作品でした。



    以下、主な登場人物です。

    「小松少佐」
     大本営参謀。参謀本部編制課動員班の動員担当者

    「甲斐中佐」
     陸軍省軍事課員。参謀本部編制課に合流

    「佐々木曹長」
     盛岡聯隊区司令部第三課動員班長
     
    「蓮見百合子」
     盛岡聯隊区司令部の庶務係。岩手高女の女学生

    「遠山敬一郎大佐」
     盛岡聯隊区司令部司令官。地元の名士

    「佐藤金次」
     滝沢村役場の戸籍係兼兵事係

    「勇」
     滝沢村役場の給仕の少年

    「片岡直哉二等兵」
     東京外国語学校卒の翻訳書編集者。岩手県の寒村出身。
     英語通訳として招集され占守島に向かう

    「片岡久子」
     片岡の妻。女子高等師範卒の文学書編集者

    「片岡譲」
     片岡の息子。国民学校四年生。信州に集団疎開しているが疎開先を抜け出す

    「吉岡静代」
     譲と同じ国民学校の六年生。信州に集団疎開している。譲とともに疎開先から東京を目指す

    「小山雄一」
     国民学校の教師。四年男子学級の担任

    「朝井マキ子」
     国民学校の教師。六年女子学級の担任

    「岩井萬助」
     渡世人。懲役に服していたが、召集のため放免される

    「尾形貞夫」
     片岡と同じ出版社に勤める、翻訳書出版部の部員。
     警視庁で洋書や英文記事の検閲を行う

    「尾形佐江」
     尾形の妻。夫妻で久子の住まいに引っ越す

    「野中良一」
     久子の異父弟。フィリピンで戦死

    「野中きぬ」
     久子の母。久子の父親との離婚後、良一の父親と暮す

    「安藤仁吉」
     東京で岩手県出身者たちの面倒をみる篤志家

    「菊池忠彦軍医少尉」
     岩手医専卒の医師。東京帝大医学部に在籍。
     招集されて占守島の軍医となる

    「富永熊男軍曹」
     盛岡のタクシー運転手。金鵄勲章を授与された軍曹。
     四回目の招集で占守島へ向かう

    「吉江恒三少佐」
     第五方面軍司令部参謀。敗戦処理の任務を負う

    「大屋与次郎准尉」
     戦車第十一聯隊第二中隊段列長。旭川出身

    「中村末松兵長」
     戦車第十一聯隊第二中隊段列の少年兵。東京出身

    「池田大佐」
     戦車第十一聯隊長

    「岸純四郎上等兵」
     南方帰りの船舶兵。三陸の宮古出身

    「工藤軍医大尉」
     野戦病院の軍医。菊池の岩手医専での先輩

    「渡辺中尉」
     第九十一師団副官。札幌出身

    「森本健一」
     日魯漁業社員。占守・幌筵島の漁場と缶詰工場の責任者

    「石橋キク」
     缶詰工場で働く女子挺身隊員。函館高女の卒業生総代

    「沢田夏子」
     缶詰工場で働く女子挺身隊員。キクの同級生

    「ヤーコフ」
     占守島出身のアイヌ。色丹島の診療所で助手を務める

    「池田大佐」
     戦車第十一聯隊長

    「アレクサンドル・ミハイトヴィッチ・オルローフ中尉(サーシャ)」
     ソ連軍の将校。シベリアに住むコサックの子孫

    「ボクダン・ミハイトヴィッチ・コスチューク兵長(ボーガ)」
     ウクライナ出身のソ連兵
    続きを読む

    投稿日:2023.02.27

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。