【感想】十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞

内館牧子 / 幻冬舎文庫
(73件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
35
26
8
1
0
  • 弘徽殿の女御にスポットライトを当てた物語です。

    面白い!かなり面白い物語です。
    出来がよすぎる弟をもち、本人いわく「二流の中」である主人公「雷」はある日突然 平安時代にトリップしてしまい そこで陰陽師としての日々を過ごす。
    源氏物語という雅な群像劇と現代青年の葛藤が 不思議に交錯して 読むものを飽きさせないストーリー展開でした。 
    ☆5つとしたいけれど 平安時代の人々の言葉づかいがもう少し格調高ければと ちょっと惜しまれるところで ☆4つと評価しました。
    私、物語の中の言葉づかいに ちょっと小うるさいタイプでございまして、、
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    投稿日:2016.04.27

  • 源氏物語を囓ったことのある人もない人も、是非!

     できの悪い主人公が、ひょんな事から平安時代というより、源氏物語の物語のにトリップしてしまうという、奇想天外なお話なんですが、とても面白かったです。
     あまりに完璧すぎる弟にコンプレックスを持つ主人公は、源氏物語の中の第一皇子と第二皇子である光源氏の関係を、自分と弟の関係に、なぞらえていきます。そして、ストーリーとしては、源氏物語の中では、あまりスポットが当たっていなかった人物達を、作者の想像で、その実像をあぶり出していくという展開になっていきます。これがなかなか面白い。私自身は、源氏物語にさほど詳しいわけではありませんが、それでも、源氏物語の登場人物達が、実際の物語以上に活き活きと描かれているのはわかります。まさに、視点を変えて、源氏物語を楽しむことができました。
     また、平安時代から男も女も変わらんなぁ、と思ったり、その一方で、現代と比べて、「日本人はいつからあんなに幼稚で、軽薄で、騒々しくなってしまったのか?」「千年前まではこうだったし、戦中戦後の映像などを見ても、やはり人々は凜々しく美しい。」なんていう独白もあったりして、作者の思いが伝わってきます。
     このあたりは、日本の文化に詳しいと言うよりも、日本の文化が大好きな作者の面目躍如といったところでしょうか?女性初の大相撲・日本相撲協会の横綱審議委員を就任されていただけのことはあります。
     物語は、当然のことながら、主人公が現実の世界に戻ってくることになるのですが、その戻り方が今一つ、弱いような気がしますが、エンディングは、実にさわやかな形で終わるのは、とても好感が持てます。
     源氏物語が好きな人も勿論楽しめますし、源氏物語の中身はあんまり知らないなぁ、と言う人も、あらすじとまではいかないまでも、その内容は把握できますので、これを読んでから、いくつかある源氏物語の現代語訳に挑戦しても、良いと思います。
     そうそう、とても素敵な台詞がありましたよ。「女が幸せな人生を勝ちとるのに、必要なものは二つだけ。決断力と胆力だ。それさえあれば、たいていのことはどうにでもなるわ」これは作者の人生訓なのかなぁ。これこそ、男も女も関係ないと思いますけど、決断力も胆力も、持とうと思うと、これがまたなかなか難しいんだよね。
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    投稿日:2017.07.31

  • なんという面白さ!

    この本に巡り会った幸せを、しみじみ噛み締めながら今、読了した。
    まずはこの本を世に送り出して下さった作者と出版社にお礼を申し上げたい。
    世に源氏物語の解説本や登場人物たちを描いた同じような物語は掃いて捨てるほどもあるが、この本こそが決定版であると、声を大にして私は言いたい!
    これほどまでに千年昔の京の都を生き生きと、人々の息遣いまでが聞こえてくるようにハッキリと描き出した物語が他にあっただろうか?
    そして、ここまで細やかに人の心を鮮やかに映し出した物語があっただろうか。
    私の心は主人公と共に平安時代の京へ飛び、当時の美しく素朴な風景を味わい、同じように亡き人を偲んで涙し、そして予想はしていたが、主人公のその後に同じように苦しみを感じた・・古の都が恋しくて。
    そのくらい、のめり込んで読み込んでいた。
    この物語では、源氏物語では脇役でしかなく、しかも悪役で恐らくは嫌われ者であろう人物が主体となっている。だが、なんと魅力的で愛すべき人物であろうか。全く目の覚める想いであった。そうか、この人物の真の姿はこうだったのかと。
    登場人物たちは皆生き生きとしていて個性が溢れ、そしてとても良い台詞を言う。どれも皆心に染みて、胸に迫る。
    この本は私の愛読書の一つとして、生涯大切にするだろう。何度も読み返して、私もまた、平安の昔へタイムスリップするのだ。何度でも!
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    投稿日:2019.11.28

  • 初めて源氏物語にふれファンになりました。

    現代と巧みにクロスさせた展開は素晴らしく、感情移入してとても楽しく読めました!
    源氏物語ファンを拡げる1冊としておすすめです!

    投稿日:2019.12.04

  • 笑と涙

    面白くて2度読みしました。
    「悪魔」に内館さんの大きな意図がありましたね。
    ここ2年以上レビューは書いて無かったのですが、他の読者にもこの面白さを分かって欲しくて久し振りにキーを叩いてます。
    容に触れると、どれもネタバレに成るので、「笑いと涙」が得られるストーリー展開で、思わず「源氏物語」読んでみようかなぁ~と思うところも有ります。
    「源氏物語異聞~その2」の方がいいかな(笑)
    内館さんお願いします。
    続きを読む

    投稿日:2020.06.04

ブクログレビュー

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  • ふみ

    ふみ

    「女が幸せな人生を勝ちとるのに、必要なものは二つだけ。決断力と胆力だ。それさえあれば、たいていのことはどうにでもなるわ」
    「人は老い、時代は動く。いつまでも同じ人間が同じ場所に立っていられるはずがない。必ず若い者の世になる。それをわきまえることが大切。若い者には負けぬと、あがいたりみじめな画策をしないことが、人の品性というもの。若い者には負ければよろしい」続きを読む

    投稿日:2024.02.11

  • おともはラテ*

    おともはラテ*

    痺れる程にかっこよく、ウーマンオブザイヤーだったら大賞クラスの弘徽殿の女御がメインのストーリー。
    源氏物語は、7年位講座に通っていたので元々興味がありました。
    「十二単を着た悪魔」は本家とはかなり違う視点で書かれていましたが、最初から最後まで楽しく読ませていただきました。

    ちなみに本家の弘徽殿の女御といえば、ヒール度100%の悪の帝王という感じです。
    内館牧子さんはそのイメージを全て覆し女御の知られざる?魅力を存分に引き出す方法として、現代の感覚と発想を持つ女性として女御を登場させました。
    とりわけ印象的だったのは彼女の言葉でしょうか。
    とにかく何でもズバッとハッキリ言ってのけてしまうのです。
    今の時代では好ましいかもしれませんが、平安時代では完全にNGです。
    周りに控えている人々は完全に引いてまい、帝ですら
    恐れていました。
    どこまでも強くて厳しい物言いなのですが、言葉の底には、世のために…という確かな思いがありました。

    光は気付いていたのだと思われます。
    人間離れした鋭すぎる感性を持つ人物だったので。
    そしてもう一人の主人公の雷。
    雷は元々現代の人なのですが、なぜか源氏物語の世界へトリップしてしまったのです。
    26年という長い年月を女御の側で過ごし、女御と他の様々な人物たちと喜怒哀楽を共有してきました。
    その中で心の機微というものを捉えられる人間に成長したのだろうと思われます。

    どんな時でも誠実に丁寧に向き合うという事は、相手の本当の思いに触れられる第1歩なのでしょう。

    今一度、本家の女御を見直してみようと思い立ち、昔の資料を発掘中です。
    当時読んでた本も出てきましたけど、それは又次の機会に。
    私の部屋はすっかり散らかってしまいましたが大満足な読書体験でした。
    (足の踏み場はありますよ…一応歩けますので…)

    最後に女御の決めゼリフ。
    「能力は形にして示すものだ」
    やっぱり痺れます。




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    投稿日:2024.01.26

  • ばあチャル

    ばあチャル

    源氏物語にワープしてしまった若者といえば、光源氏の関係者の頭中将か、源氏付き人の惟光の近辺にいる人にするのか、と想像するのは平凡。陰陽師を持ってきた作者の発想は、ヒロインが弘徽殿女御であるからなるほどと思う。

    なにしろ弘徽殿女御は超オカルトチックに、政的の恋人に憑りついて殺人までするのだから、陰陽師という現代から見るといかがわしくも怪しい職業なのでさもありなんと、一応は源氏物語を知っているのでわくわくする。

    その若者「雷」君はトリップする前に現代社会では、大学卒業したけれど受けた全社落ち、フリーターになってしまい、行き場を探している青年というわけで、古文の文芸の世界で何を得るのかが興深い。

    このエンターテインメントが幕開は、雷青年の現世では兄が容姿端麗・頭脳明晰とちょうど光源氏のようで、光源氏の兄に当たる弘徽殿女御の息子一宮という、皇太子候補なのに影薄い君に味方するのは、出来すぎの兄弟を持ったよしみで同情したので助けることになった。

    源氏物語の筋をたどり、そう来るかと、むふふふと作者の機知を楽しんだ。
    けれど、
    あれぇ?須磨の巻までなの?
    落ちがそれ!と思いがけなくて、脱落したのでありましたが。
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    投稿日:2023.12.19

  • show

    show

    源氏物語をほとんど読んだことがないのだが,この超大作は面白すぎる!
    浦島太郎の反対バージョンにもなってるのかな?

    投稿日:2023.11.05

  • 太陽がさん

    太陽がさん

    源氏物語はとても昔に漫画で読んだことがある程度で、前知識が零に近い状態で読みました。
    タイムスリップという実際にはお目にかかれないフィクションを交えて書いてあるこの本はとても読みやすく、それぞれのシーンが想像しやすい表現でした。

    私が源氏物語の世界に行けたら、一目でいいので光の源氏を見たいです。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.19

  • ろっく

    ろっく

    タイトルにひかれて軽く読み進めていたら、ぐんぐん引き込まれて一気に読んでしまったお話。
    歴史ファンタジー、ではあるのだけれど、登場人物の心情がとても繊細に描かれていて、切なくて泣けます。

    投稿日:2023.10.10

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