【感想】ドストエフスキー人物事典

中村健之介 / 講談社学術文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.8
3
1
0
0
0
  • 最強☆変人カタログ!

    タイトルも堅いし、講談社学術文庫だし、値段も高いし敬遠されそうな予感のする本だが、
    すごく面白いので、語ってみたい。おつきあいください(笑)

    ドストエフスキーの魅力って何だろう?
    哲学的・宗教的なところにそれを見出す人もいる。
    それはもちろんあるのだろうが、初読で夜も眠れないくらいの勢いで読んでしまうのは、
    ストーリーが面白いからで、登場人物が魅力的だから、ではないだろうか?
    小説とは本来そういうものだろう。

    しかも、ストーリーがわかってもなお読み返したくなる。
    何故ならドストエフスキーの作品に登場する妙な人々に魅了されてしまうからだ。
    その人たちにもう一度会いたい、だから再読する。
    そういう中で哲学的な深みが見えてくる読者もいる。
    もし人物が魅力的でなければ、そうはならないだろう。

    本書は、そういう妙な人達を網羅した、変人カタログのような本である(笑)

    紙の本で数センチある分厚い文庫本で、デビュー作『貧しい人達』から遺作『カラマーゾフの兄弟』まで
    すべての作品のあらすじ紹介、人物紹介からなる。
    執筆順になっているのもポイントである。
    何故なら、ドストエフスキーはどうしても書きたい人物像があるようで、
    それがいろいろな作品の中で試行錯誤を繰り返すように何度も登場するからである。
    だから、年代順に見るとああ、あの人物が進化してああなったのか、とわかって楽しい。

    タイトルとは裏腹に、小説のように前から読んでいくタイプの本なので、電子リーダーとも相性がいい。

    しかし、こうして見て見ると・・・改めて・・・奇人変人しかいないな。

    ・自分は社会の異物だと感じている
    ・友達は0人か1人
    ・自意識過剰
    ・夢想家
    ・世のため人のために何かしたいと思う
    ・が、できないので実際はひきこもり
    ・時々異様なハイテンションになる
    ・しゃべり出したら止まりません
    ・どうしようもないマゾ
    ・そんな自分に酔ってます

    ・・・本当、まあ、なんだかなあ・・・(笑)

    でも、一番強いのはやっぱり上に書いた「異物感」ではないかと思う。自分は何か人と違う。
    世界の中で浮き上がっている気がする。人とうまくつきあえない。

    これが、ドストエフスキー作品に登場する人々の多くが抱えている問題である。
    劣等感の場合も、優越感の場合も、孤独感の場合もいろいろある。
    どうにかして人と関わりたいが、うまくいかない、「奇行」になってしまう。
    場合によってはそれが「犯罪」になってしまう。

    まあ、それはそれぞれの話の解説に任せるとして・・・。

    とにかくこの本を読むと、いかにドストエフスキーの作品が「人間」を中心に回っているかを感じる。
    ストーリーや思想よりも、まず人間ありき、だ。

    私はもとは紙の初版を買ったのだが、こんな帯がついていた。

    「読む前に、読むときに、読んでから」

    つまり、いつでもオッケー(笑)

    読んでない作品も本書で知ったりしたのだが、
    あらすじと人物紹介だけで爆笑してしまった。
    著者がすごいのかドストエフスキーがすごいのか(笑)

    とにかく、最高の変人カタログ。
    そして、最高のドストエフスキー入門書。

    続きを読む

    投稿日:2015.04.22

ブクログレビュー

"powered by"

  • ショータロー

    ショータロー

    ドフトエフスキーの全作品を俯瞰できる。登場人物に焦点をあててドフトエフスキーの文学を深く紹介説明してあり、大変便利だと思った。まだ読んでいない作品には意慾が、読み終わっている作品にはより深い理解が得られると思った。またドフトエフスキーの文学の理論にも触れていて興味深い。この本を参考にしてドフトエフスキーの作品を読んでいくのも良いと思う。僕はそうしていこうと思った。続きを読む

    投稿日:2020.10.02

  • bax

    bax

    [ 内容 ]
    「死せる生」にあって「生ける生」を求める―。
    作家の分身である登場人物たちが作品の中で繰り返し展開するテーマ、それは苦痛の中に生きる人間の現実である。
    処女作『貧しい人たち』から絶筆となった『カラマーゾフの兄弟』まで、全小説の内容紹介とともに百九十三人の主要登場人物を論じ、ドストエフスキー文学の魅力に迫る、読む「人物事典」。

    [ 目次 ]
    『貧しい人たち』
    『分身』
    『プロハルチン氏』
    『九通の手紙から成る長編小説』
    『ペテルブルグ年代記』
    『女あるじ』
    『ポルズンコフ』
    『かよわい心』
    『他人の女房とベッドの下の亭主』
    『正直な泥棒』〔ほか〕

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]
    続きを読む

    投稿日:2014.10.07

  • marutina

    marutina

    ドストエフスキーの全作品の登場人物を語りつくすという野心的な作品。ロシアの文豪という、非常にとっつきにくい作品の解説としても優れていて、入門書に最適なのかもしれない。

    ドストエフスキーがときどき仮死状態になる病気の持ち主だとか、妹に対する愛情から理想的な社会主義を追求していたとか、幻視的な人物像など、なるほど面白いと思う部分が多い。続きを読む

    投稿日:2012.04.11

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。