【感想】ブッダをたずねて 仏教二五〇〇年の歴史

立川武蔵 / 集英社新書
(4件のレビュー)

総合評価:

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    ブッダの生涯と思想の基礎:苦からの解放を求めて
    本書は、ゴータマ・シッダールタ(ブッダ)が生老病死の苦に直面し出家を決意したことから始まり、悟りを開くまでの苦行、乳粥の逸話、ヨーガの修行、そして最初の説法に至る彼の生涯を概説します。ブッダの核心的な思想である世界を「五蘊」として捉える観点、「縁起」の概念、「四つの真理(四諦)」と「八つの正しい道(八正道)」、そして涅槃に至るまでの教えが、彼の死の間際の言葉とともに強調されます。ブッダの遺骨(舎利)が各地に祀られたこと、そして彼がソクラテス、孔子、イエスと並ぶ「枢軸の時代」の巨人として位置づけられていることが紹介されます。

    仏教の展開と多様化:神格化、菩薩、そして様々な経典
    紀元1世紀頃からの仏教の展開では、ガンダーラでの仏像制作に始まる仏教美術の発展、大乗仏教の興隆と阿弥陀仏信仰、衆生済度を目指す菩薩(観音菩薩など)の登場が解説されます。『法華経』や『般若心経』といった重要な経典の内容が紹介され、図像化された密教、その中心的な仏である大日如来、そして瞑想に用いられるマンダラについても触れられます。インドでの仏教の衰退と、チベット仏教、東南アジアへの広がり、各地での仏像の表現の違いも概説されます。

    日本への仏教伝来と宗派の確立:祖先崇拝との融合
    日本の仏教の特徴として、家の祖先の遺骨を祀る側面が挙げられ、平安時代に最澄が開いた天台宗と空海が開いた真言宗の教えの概要が説明されます。鎌倉時代には、法然や親鸞による念仏による阿弥陀仏への帰依、道元による禅の重視といった新たな潮流が生まれたことが解説されます。道元の「一切衆生悉有仏性」の思想も紹介されます。日本の土着信仰である稲荷神と仏教の習合、そして仏教の歴史を通じて開祖であるゴータマ・ブッダのイメージが多様に変化してきたことが示唆されます。

    仏教美術の誕生と進化:信仰の視覚化
    紀元1世紀頃、仏教とヘレニズム文化が交わったガンダーラ地方で仏像が初めて作られ、信仰の対象となりました。マトゥラーで生まれた仏像はインド独自の様式を示しました。仏像が現れる以前は、仏塔がブッダの象徴として用いられていました。大乗仏教の発展とともに、仏は「神的存在」として崇拝されるようになり、阿弥陀仏はその代表的な例です。菩薩は、人々の救済を重視する存在として、様々な姿で描かれました。密教では、「いのり」や悟りのイメージがマンダラなどの図像として表現されました。

    大乗仏教の思想と実践:普遍的な救済を目指して
    大乗仏教では、自己の悟りだけでなく、一切衆生の救済を重視する菩薩の思想が中心となります。観音菩薩のように、時代や地域によって性別や姿を変える菩薩も現れました。すべての存在が仏となる可能性を説く『法華経』、空の思想を説く『般若心経』など、大乗仏教の教典は多様な解釈を生み出しました。念仏や坐禅といった実践を通して、人々は悟りや救済を目指しました。

    仏教の地域的な展開:インド、チベット、東南アジア
    インドで誕生した仏教は、時を経て衰退しましたが、その教えはアジア各地に広まり、多様な形で発展しました。チベット仏教は密教と顕教の両面を持ち、独自の文化を形成しました。東南アジアでは、仏教が王権と結びつくこともありました。それぞれの地域で、仏教は土着の信仰や文化と融合しながら、その姿を変えていきました。

    日本仏教の特質:多様な宗派と祖先崇拝
    日本に伝来した仏教は、平安時代に天台宗と真言宗という二つの大きな宗派が成立し、鎌倉時代には庶民にも広まる様々な宗派(浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗など)が生まれました。日本の仏教は、家の祖先の霊を祀るという独自の側面を持ち、これは仏教伝来以前からの日本の祖霊信仰と結びついたと考えられます。仏教は日本の文化や社会に深く根を下ろし、今日に至るまで大きな影響を与え続けています。
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    投稿日:2025.05.14

  • 一心向佛

    一心向佛

    著者自身が浄土宗立の中高卒業した経験や、家の宗旨が浄土真宗だったというバックグラウンドをもって、インド、タイ、ラオス、中国などの仏教が伝播していった地域を訪問した感想が1テーマ2ページほどでまとめられている。
    過去の事実を解説している中で時折著者自身の話が混ざり込んできて混乱することもある。
    仏教に広がりをざっと短時間で旅情的に雰囲気を感じとりたい人にはおすすめするが、しっかりわかりたい人には物足りないが、テーマを与えられた課題としてさらに深堀りするキーワードとして活用できるので、よい整理がされていると思う。一方でミャンマーや密教の話が多かったのでバランスがいいわけではない。
    仏教美術として曼荼羅や六道輪廻図のガイドがあり、その点は学びになった。
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    投稿日:2024.01.20

  • 「おやっさん」

    「おやっさん」

    インドに始まり、アジアを貫く一大思潮である仏教の初期からの歴史を素人にも解りやすく書かれた本です。
    ブッダ、阿弥陀仏、大日如来の違いも理解できました。
    第1章 ブッダの一生
    第2章 ブッダの面影と新しい仏
    第3章 アジアに広がった仏たち
    第4章 日本に花開いた仏教
    終章  回帰するブッダ
    読んでみて、釈迦が始めた仏教と、今現在日本で信じられている仏教は、まったく別物であるということ。しかしながら日本人の価値観・風土に馴染んだ仏教もそれはそれですばらしいモノです。
    人間生まれて死んでいくわけですが、生きている限り幸せに暮らすため、お釈迦さんの教えをどう生かすかのか、自分自身で納得いく人生をどう作り上げるのか、ただひたすら自分自身でその価値を創造するしかありません。
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    投稿日:2022.05.07

  • kakapo1233

    kakapo1233

    立川武蔵先生の「ブッダをたすねて」を読んで、もっと仏教のことが知りたくなった‼️

     この『ブッダをたずねて』では、ゴータマ・ブッダの生涯を紀元前463年頃に生まれ、紀元前383年頃没という説が有力だとしています。ドイツの哲学者K・ヤスパースは、ゴータマ・ブッダ、ソクラテス、孔子、イエスを含む時代を『枢軸の時代』と名づけました。

     この四人の巨人は、人間一人ひとりがかけがえのないものであると主張したのです。「人間には親族や仲間がいます。しかし、誰もが一人ひとりの生を生き、そして一人で死んでいかなければならない」という個々人の魂の救済をどうするのかという問題を、ブッダ、イエスたちは扱ったのです。

     高野山への旅の切っ掛けに始まった、空海の探求というマイブームも、段々盛り上がってきました(^^ゞ 1200年もまえの出来事ですから、多くの学者が研究していても、記録の解釈は、それぞれの知識の深さや広さに左右されるでしょうし、当然、同じような研究をされている他の方の影響を受け、引用する場合には、誇張されることも、逆に矮小化されることもあるでしょうし……。まずは、ブッダのことを知らないとね(^^♪
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    投稿日:2020.04.29

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