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トルストイ, 藤沼貴 / 岩波文庫 (11件のレビュー)
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総合評価:
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太田豊太郎
このレビューはネタバレを含みます
トルストイの歴史観が最後や途中に展開されるあたり、司馬遼太郎感ある。最後の解説にあった、丸くなって輪になって平和、というのはなるほどなと思った。アンナカレーニナと違って、ナターシャは女性らしい魅力を失って太った幸せな母になる。プラトン・カラターエフは丸く表現されている。主人公ピエールも肥満。 アンドレイやペーチャは死んで、マリアとナターシャはそれぞれニコライとピエールと結婚して幸せになる。ソーニャがかわいそうすぎる気がするけどそこはあまり描かれない。ギスギスしないんだろうか。ソフィアは賢さを表すから、感情の争いには無縁なんだろうか。 関係ないけど、トルストイという名前は太っているという意味だと初めて知った。
投稿日:2023.07.05
makilovesbooks
ナポレオンとの戦争の前後の、ロシア貴族の家族のお話。 トルストイ自身も貴族だったんだとか。 戦争の話あり、恋愛の話あり、の大河ドラマだったな。
投稿日:2023.01.04
ravenclaw55
ナポレオン軍の退却 ピエールの救出 ナターシャとの再会 有名なエピローグ第一部はその後の後日談。 ナターシャが太り、健康な主婦となっている。 子供にアンドレイと名付けているのは泣かせる。 ニコライと…マリアは理想的な夫婦に。 ソーニャに対する冷たい扱いはどうしたことかと思うが、現実によく起こりそうなことであり、これぞトルストイのリアリズム。 エピローグ第二部はトルストイのナポレオン戦争に関する考察。 作品中にもところどころあらわれる論文部分は、最初はもっと大量にあって、まわりの反対で最低限まで切り詰めたそうだが、それでも多い。特に興味があれば別だが、そうでなければ作者がそうしたいんだから仕方がないとあきらめて、適当に読み飛ばすしかない。 というふうに、かなりいい加減に読んでしまいました。 トルストイはトルコとのクリミア戦争(1853-1856)に参加し、激戦を経験しているので、アンドレイやニコライやピエールが経験する戦争に関する描写はそのとおりなのだろう。 けれども、どこか牧歌的に思えるのは、われわれはトルストイの見ていない第一次、第二次世界大戦を経験しているからだろう(トルストイは1910年に亡くなっている)。 われわれはもっと悲惨で冷酷で残酷な戦争を経験しているが、トルストイが幸いにも見ずにすんだその戦争の方が、彼がこの作品のあちこちで述べている戦争哲学や歴史哲学、すなわち戦争とは、計画的・戦略的に行われるものではなく、誰も把握できないままでたらめに進んでいくものであり、また、ひとりの英雄や将軍が世界を動かしているではなく、かれらは歴史によって動かされる表象にすぎず、多くの人々の無意識の力、歴史の力が世界が動かしているのだという理論により近いようだ。 トルストイの先見を物語るものなのだろう。続きを読む
投稿日:2020.07.16
kazzu008
ついにトルストイの最高傑作の一つ『戦争と平和』を読破した。文庫本6冊で約3000ページ。長かったが、そう長さは感じなかった。 物語はナポレオン戦争で翻弄されるロシアとロシアの3つの貴族家であるベズーホ…フ伯爵家、ボルコンスキー公爵家、ロストフ伯爵家の人々を中心に描かれている。 その内容は、大きく分けるとナポレオン軍との戦闘シーン、貴族達の恋愛模様、そしてトルストイ自身の歴史観や世界観の3つが交互に織り交ぜられており、それぞれ興味深い。 なぜ約150年も前に書かれたこの小説がこれほど世界中の人々に時代を超えて愛されているのだろうか。「歴史的価値」と「人生における価値」の二つの点から考察してみたい。 第1点目は、本書は歴史的な価値が極めて高いからだろう。 当時のロシアはヨーロッパの中で『田舎者』的な立場であった。実際にトルストイは作中で登場するナポレオンにモスクワのことを「アジアの都市」と呼ばせている。 当時のロシアの上流階級の人々は、最先端の教育を自分の子供に受けさせる為(当時のロシアの初等教育システムはほとんど機能していなかった)、当時ヨーロッパ中心であったフランスからフランス人の家庭教師を雇い、自分の子供にフランス語で教育を行っていた。 その為、当時のロシアの上流階級の人達は日常会話でもフランス語を使用していたのだ。 そのような『田舎者』国家であったロシアが当時ヨーロッパの英雄であったナポレオンを打ち破ったことは、ロシア国民にとって、とてつもなく大きな出来事だった。 このように『戦争と平和』では、1800年代当時のロシアの状況が生き生きと描かれ、読者は時空を超えてトルストイの描くロシアの美しくも激しい情景を素晴らしい臨場感をもって味わうことができるのだ。 そして第2点目の理由は『戦争と平和』の500人を超える登場人物がそれぞれ我々読者の分身となってくれるという点だ。つまり、誰が読んでも『戦争と平和』に出てくるそれぞれの登場人物に自分を重ね合わせることができるのだ。 十代の男女から青年、中年、壮年、そして老人まで読者の誰もが「これ私のことだ!」とか「このキャラクターは俺の若い頃にそっくりだな」なんてことを思うはずだ。 さらに『戦争と平和』は、物語のなかで数十年間という長い年月が流れる。 最初は少年だったキャラクターが青年となり、少女は美しい女性に成長する。そして、年老いて死ぬ者もいれば、戦争で命を散らす人物もいる。 読者は『戦争と平和』を読みながら、多くの登場人物の生涯を追体験し、自分と重ね合わせ、自分のこととして理解することができる。 自分はいわゆる自己啓発本やビジネス本をよく読む方だが、この『戦争と平和』を読んで本書がそのような本の10倍、20倍の価値を持っていると確信した。 いわゆる自己啓発本やビジネス本は「その場ですぐ役に立つ」ことが書かれており、そういった本を読むと、その時は「分かった気分になる」が、そういった知識が役に立つ期間は短く、また、忘れてしまうのも早い。 一方『戦争と平和』のような古くから読み継がれている古典大河小説を読んだ場合は「人生を何度も繰り返した気分」に浸ることができるのだ。 誰でも『もし今の人生をもう一度やり直せたら、今度はもっと上手くやれるのになぁ』と思ったことがあるだろう。悲しいことにこの人生は一度きりしか無い。 『鉄血宰相』の異名を持つオットー・フォン・ビスマルクの言葉 『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』 ではないが、人間が経験できる人生の範囲は限られている。 しかし、本書のような本を読めば「人生を何度も繰り返した」ことと同じ体験を得ることができる、つまり、自分の人生経験値を上げることができるのだ。 先ほどの例を挙げて極論すれば『自分の人生をやり直し、人生の重要な岐路において、以前の自分(本を読む以前の自分)よりももっと上手くやることができる』のだ。 例えば、この『戦争と平和』なかで心も体も最も成長するのがヒロインの一人であるナターシャだ。 彼女は本書の中で少女から成熟した女性、そして母親になるまでが描かれている。その間、ナターシャは数多くの違ったタイプの男性と恋をし、そのたびに有頂天になり、あるいは絶望し、そして、また新しい愛を見つけ、最後には家族の為に身を捧げる慈悲深き母親へと成長する。ナターシャの彼女の人生において考え方はどんどん変わっていき、最後には自分なりの答えを見つける。 この過程を読者は追体験し、まるで自分が経験しているかのように彼女のなかに自分を見つけるだろう。 このように多くの登場人物の人生を読者が追体験することによって、読者はそれぞれ経験から数多くの教訓を学び取る。 戦場で命を散らす若き少年兵の人生ですら、我々に深い感銘をもたらしてくれるのだ。 今の現実世界ではビジネスや社会の動きはすぐに変わってしまうが、人間の本質は100年や200年では変わらない。 人間の本質を知るには、自分の人生だけでは短すぎるかもしれない。しかし、そこを補ってくれるのが、過去の賢人達が残してくれたこのような本なのだ。 このような本を読むことにより、我々は人間の本質に迫ることができ、そして自分の経験値を上げ、人生をより豊かなものにすることができる。 このような体験をもたらしてくれる読書とはなんと素晴らしいものか。 本書は6冊で数千円、もし図書館で借りるのであればお金すらかからない。 さらに本を読むことは何の資格もいらず、何の制限もなく、ただ文字を読むための二つの目さえあればよい。 そして読書をすることにより、自分の人生を何度でも好きなだけリブートすることができる。 こんなコストパフォーマンスの高い行為はこの世に存在しないだろう。 それを利用しないというのは、もはや犯罪的と言ってもいいのかもしれない。続きを読む
投稿日:2019.07.10
タカギ
完読してこその感動というのもあります。 エピローグの最後の最後は別物として(難しいので)後日、ゆっくりと読まなければ・・・・。
投稿日:2018.03.29
鴨田
トルストイ本人曰く、長編小説でも叙事詩でもないらしいが、こんなに長い小説は久しぶりに読んだ。(翔ぶが如く以来かな。) 登場人物はWikipediaによれば全部で559人とのこと。 歴史のうねり、という…言葉がぴったりくるような、大河小説。 ロシア人のヨーロッパに対する感情が漸く理解出来るようになった気がする。 小説の筋と直接は関係ない歴史論とかが異様に長いが、執筆動機を窺い知ることが出来るし、作者本人としてはどうしても端折れなかったんだろう。続きを読む
投稿日:2017.08.19
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