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大江健三郎, 大江ゆかり / 講談社文庫 (1件のレビュー)
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総合評価:
nannryou
大江健三郎という"役割"
カズオイシグロがノーベル賞をもらいました。 存命の日本人の血を引くノーベル賞作家としての大江健三郎の"役割"は終わったといえるでしょう。 戦後異例の若さでノーベル賞を受賞した左翼寄りの中道作家とし…て、反核、反体制側に立ちながら、障碍児をテーマに取りつつ、日本人の戦後の立ち位置を辛辣に表現してきた大江健三郎。四国の田舎から東大に合格し、現役のまま作家となったまさに東西冷戦が行われる中、資本主義陣営としてマスコットを必要としていた日本にぴったりと当てはまった大江健三郎というピースが果たしてきた役割は非常に大きいと思う。冷戦構造が終わり、日系人のカズオイシグロという新たな偶像が誕生した今、大江健三郎の役割は確かに終わったと感じる。心からお疲れ様と言いたい。丁度この時期に改憲選挙が行われるのにも運命を感じる。 さて、作品内容ですが、文学は文学的でなければならないという"古臭い"概念をいつものように大江健三郎が正しいと断定できるように思わせてくれる流れとなっている。ノーベル賞作家としての像、大江光の父としての像、家長としての像、文学愛好者としての像。全てがきれいにエッセイとしてまとまっている。大江健三郎が自身の"役割"を自覚しながら、どこか突き放したように傍観する一種の達観を感じる。 文学者の本領は文学で決まるので、エッセイ読んでも仕方がない、というのは本当だが、読んでみるのも悪くないですよ? 続きを読む
投稿日:2017.10.16
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