中竹俊彦 / ブルーバックス (5件のレビュー)
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Rafmon
『はたらく細胞』という血液を含めた細胞を擬人化した不思議な漫画を思い出しながら読む。本書は擬人化したり戦闘シーンのない、例え話がない通常の教養本だ。だけど、この漫画のせいか、読めば読むほど、血液細胞に…も人格が宿っているような気がしてしまうのである。 それはそうとこうした本で気になるのは「健康への影響」。少しでもタメになる情報を求めて、原理的な話よりも生活に役立つ話を欲しがってしまう。 一つ例示するなら〝サラサラと流れる血液“議論。サラサラってどういう状態?と、雰囲気だけで良さげだと解釈していた事に気付く。じつは健康な血流はもともと自力で血管内を流れることができないほどドロリとしているらしい。で、それがサラサラ流れたら、むしろ不健康な状態。それなら、「サラサラ=健康」というのはまやかしだったのか。 サラサラ血液の典型は再生不良性貧血などの重症の貧血、と続く。強い放射線や薬剤など何らかの原因で、骨髄での血球再生能力が造血幹細胞の段階で損われた状態だと。一体、サラサラに何を求め、サラサラの何を信じてきたのだろう。詰まらない血管=サラサラ血液、という錯覚である。 後はコレステロールの話とか。ともかくコレステロール値が低いほうがよいと思って、不必要に総コレステロール値を気にするのではなく、HDLとLDLに注目すべき。コレステロールは体内で合成される量が圧倒的で、食品からの影響はほとんどなく、一日一個の卵でコレステロール値は上がらないので、気にしなくて良いというのはここ数年で卵悪者論を覆してきた。 『はたらく細胞』のように子供向けではないが、擬人化されなくても、血液がしっかりと働いてくれている事がよく分かる良書である。続きを読む
投稿日:2025.05.16
CHICKING
一言結論: 難しい話もたくさんあったものの、分かりやすい表現と専門的知識の絶妙なバランスで読み応えのある良本。 感想: 著者が前書きで「血液の語り部」と表現している通り、正しいことをヘンにうやむやに…せずしっかり伝えながらも、表現があまりに難しくなりすぎないよう配慮・努力されていて大変面白かったです。それでも分からない話は多々あったのですが、一つ一つを完全に理解しなくても血液についての理解が深まりましたし、さらに知りたい時にまた開きたいと思います。この本を通して血液や体の仕組みの素晴らしさを再認識できたことは大きな収穫でした。 個人的にとても興味深かったのは最後の章、血液の常識についてです。いかにメディアが不正確な情報を流しているか分かって衝撃でした。それが共通して「血液とは簡単なものだ」というイメージを植え付けていることに意図を感じずにはいられません。この本をもっと多くの人が読んで、いかに血液が素晴らしく複雑でよく運用されているか知って欲しいと思いました。続きを読む
投稿日:2025.02.10
yonogrit
902 中竹俊彦 1941年生まれ。1963年、熊本医学技術専門学校(現・熊本保健科学大学)卒業後、三鷹新川病院(現・杏林大学医学部付属病院)検査技師、杏林学園短期大学助手、助教授、杏林大学保健学部…講師、助教授、教授を歴任。一貫して臨床血液学の最前線で研究、指導に邁進してきた。2007年に大学を退職後も、かつての研究室での経験をもとに、「駅前塾」(東京八王子駅前の自己研修支援プログラム会場)で「血液の語り部」として後進の指導に当たっている https://www.evernote.com/shard/s469/sh/c12651fd-9f8a-cfe8-3455-24ae7cbdc909/ 私たちが暮らす世界はメートル(m)単位ですが、血球はその一〇〇万分の一のマイクロメートル()単位です。大きな白血球でも直径は約二〇、赤血球なら約八、血小板は約二 しかありません。もしも赤血球の直径が私たちに見える大きさの八 mm あったとしたら、身長が一七〇 cm の人は一七〇〇 km にもなる計算です。 血球数は一()の中に含まれる数で表します。一 はツマヨウジの先についたほどのわずかな量ですが、たったそれだけの血液中に、驚くほど膨大な数の血球が含まれています。 白血球は赤血球のように多量の色素タンパクを含まないので、透明で比重も小さく、血液を遠心沈殿したときに赤血球の上層になって白く見えます。そこで白血球と名づけられたのです。顕微鏡で観察するとき透明では不都合なため、染色したのですが、そうすることで形態が詳細に解析でき、それぞれ名前をつけて区別できるようになりました。 血液は液体で循環器系統を絶えず流れていますが、まとまった働きがあるという点では心臓や肝臓などと同じく「臓器」といえます。 しかし一七世紀になって、イギリスのハーベー(一五七八~一六五七年:図2‐1‐1)は、一回の拍出量は三〇gと見積もり、そこから計算すると一時間で体重の二倍以上の血液が必要になると推測しました。そして、これだけ膨大な量の血液が体内で絶え間なく産生されたり、食物などから補給されたりするのは不可能だと考え、血液は循環するとして、それを解剖学的にも確認したのです。 ちなみに首の長いキリンは、高い位置にある脳まで血液を届けなくてはならないので、血圧が二〇〇~三〇〇 mm/ Hg という超高血圧な動物です(写真2‐1‐1)。そうなると心臓より下になる部分には大きな血圧がかかるので、普通なら脚がむくんでしまいますが、キリンは厚い皮膚がピッタリと覆っていて、それを防いでいます。 いわば下水となった静脈血はこうして心臓に戻ります。心臓から出た血液が、もっとも遠い足のつま先まで行ったとしても、心臓に戻るまで一分とはかかりません。言い換えると体中の血液は一分間ですべて入れ替わっているのです。 心臓に戻った静脈血は、いったん肺へ送られ、炭酸ガスを酸素と交換して動脈血に戻ります。したがって、もしもからだの一部で血液が流れなくなると、酸素と栄養補給が途切れて、その部分の細胞(組織の一部)が死んでしまいます。 血液の働きは、大まかには次の六つにまとめられます。 水分保持(アルブミンやイオン類の働き) ガス交換(赤血球と血漿の働き) 栄養・ホルモンなどの運搬(血漿の働き) 体温調節(主に血漿の働き) からだの防御(血漿中の抗体などと白血球の働き) 傷口の補修(血小板と血漿中の凝固因子の働き) これをもう少し詳しくみていきます。なお「 ガス交換」にかかわるヘモグロビンについてと、「 からだの防御」にかかわる免疫、「 傷口の補修」にかかわる凝固と溶解については、後ほど、それぞれより詳しくお話しします。 よく、「ラクダのコブには水が蓄えられている」といわれますが、それは誤解です。コブの中身は脂肪組織です。エサになる植物が極端に少ない砂漠で生きるラクダは、いざというときにはこの脂肪を栄養分にしています。同時にこの脂肪から必要に応じて代謝水を作ることで、長期間水を飲まずに過ごすこともできるのです。そのため栄養状態がよいときにはコブも大きいのですが、絶食状態になると段々と小さくなっていきます。 日本の長距離スポーツ界では、国際試合の前には高地でのトレーニングに取り組むそうです。また海抜の高いエチオピアやケニアなどの高地出身者は、マラソン選手として大活躍しています。なぜ高地トレーニングがよいのでしょうか。 たとえば乗用車で富士山の五合目まで行き、そこから山頂を目指して歩くと、元気な人でも呼吸が苦しくなると思います。ましてエベレストなどの高所登山では、酸素マスクを装備して登るのが普通です。高所では空気が薄く、酸素量が平地よりかなり少なくなるからです。 高地順化を赤血球数の変化で見ると、平地で暮らす人は、一 あたり平均五〇〇万個程度ですが、ヒマラヤなどの五〇〇〇mの高地で六~七週間過ごすと、これが六〇〇万個ほどに増えます。しかし、もともとそうした高地に暮らす人々の七四〇万個というレベルに達することはむずかしいようです。 前述のように白血球は大きく顆粒球、単球、リンパ球の三種類に分けられています。 この「血液は冷えるから固まる」ということは中世を通じて絶対的な考えでしたが、一八世紀末にイギリスのヒューソンが、実験でその誤りを指摘しました。体内で血管の一部をしばって血流を止め、そこを二時間冷やしても、その血液は固まりません。ところが、そこから血液を取り出すと数分で固まったのです。 このように、血液がなぜ凝固するのかはなかなか解明できず、ようやく一九世紀末になって、血液凝固に四つのタンパク質(因子)がかかわっていることが明らかになりました。 飛行機や自動車の旅で座ったまま長時間眠っていると、座席で大腿部の静脈が圧迫されるのに加えて、睡眠で血圧が下がることもあって、両足のふくらはぎの鬱血がひどくなる恐れがあります。とくに飛行機のエコノミークラスで起きやすいということで、エコノミークラス症候群ともいわれています。 次が、普段は分裂・増殖しませんが必要なときには分裂・増殖が可能なグループで、肝細胞や骨細胞がそれです。たとえば胃や肺を切り取ってしまったら再生することはありません。しかし肝臓は三分の二切り取っても、肝細胞が分裂・増殖を始めて、元の大きさに戻ります。骨が折れてもまたつながるのは、この細胞の性質のおかげです。 そして第三のグループが、皮膚や粘膜の上皮細胞、血液の細胞など、常に分裂・増殖している細胞です。 血液中に鉄分があることは一七四七年にイタリアのメンギニが明らかにしたのですが、じつは古代ギリシャの時代から貧血の治療に鉄が使われていたそうです。一六五〇年代にはイギリスのシデナムが、ヤスリで削った鉄粉を浸したワインやシロップを貧血の薬としていた記録があります。 ところがこの値は、主にアメリカでの疫学調査・研究に基づいたもので、必ずしも日本の状況に合ったものではなかったのです。その後、日本でも疫学調査が進むと、コレステロールの血中濃度二二〇 mg/ dL 以上でも、アメリカの場合と違って、心筋梗塞やガンなどのリスクは必ずしも高くありませんでした。 そもそもコレステロールは、なくてはならない大切な栄養素です。 まずコレステロールは細胞膜の重要な成分です。たとえば血球(細胞)の膜は、ぎっしり並んだリン脂質の間にコレステロールが挟み込まれた構造をしています(図1‐1‐3参照)。また、コレステロールはいくつかのホルモンの原料になっています。 さらにコレステロール値が低すぎるとうつ病になりやすいことや、むしろ脳卒中やガンのリスクが増えて死亡率が高くなることも分かってきました。長寿者のコレステロール値は二一〇~二四〇 mg/ dL で、やや高めだという報告もあります。 そこでHDLもLDLもいっしょくたにした総コレステロール値ではなく、HDLとLDLを分けて診ようというのが最近の考え方です。 ともかくコレステロール値が低いほうがよいと思って、不必要に総コレステロール値を気にするのではなく、HDLとLDLに注目しましょう。 また、肉や卵などを「高コレステロール食品」として敬遠しがちですが、コレステロールは体内で合成される量が圧倒的で、食品からの影響はほとんどありません。一日一個の卵でコレステロール値が上がることはありませんから、遠慮なく卵料理を楽しんでください。続きを読む
投稿日:2023.09.18
hamakoko
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000057300
投稿日:2022.09.05
アカセン
酸素を運ぶ赤血球、侵入者を攻撃する白血球、傷を塞ぐ血小板。 ほとんどの人が、血液については他の臓器と違いその構成物まで知っている。 だからこそ、本書を読めば、血液について何も知らなかったということを知…れるだろう。 赤血球はどうやって酸素を受け取り、どこで手放すことを決めるのか。 白血球はどうやって血中を移動するのか。 血小板はどうやって傷口に集まるのか。 単純な疑問に真正面から回答してくれるが、決して簡単というわけではなく。 例えば「血液が固まる場合と固まらない場合」のメカニズムは 内因性凝固系、外因性凝固系、12種類の因子、抗凝固の4段階のシステムを用いて解説されるし、 ”二酸化炭素の運搬”という単純な役割に関しても、『血漿の水分に炭酸(H2CO3)として溶け込み、すぐに重炭酸イオン(HCO3-)と水素イオン(H+)とが解離して、イオンの平衡状態に達し、この平衡状態で肺へ運ばれている。』と説明される。 これだけの複雑性が明らかにされているからこそ、好塩基球の詳細やマクロファージの成熟過程など、わからないことがまだまだあるという事実が際立つ。 血液について、全く知らない人はその奥深さを、よく知っている人はその詳細を知れる、人体理解の入り口となる一冊。続きを読む
投稿日:2021.12.31
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