食の終焉

ポール・ロバーツ, 神保哲生 / ダイヤモンド社
(36件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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  • 読んでると暗ーい気持ちになる重たい一冊

    現代の食システムはどんどん巨大なサプライチェーンがふくらみ慣性がついて抜け出せなくなる一方で効率とは裏腹に脆弱になっている。
    生鮮食料品だけでなく冷凍食品もは0−157やサルモネラ菌の混入を防ぐことはできず、最後に消費者が適切な調理をするかどうかにかかっている一方で外食も含めて料理はインスタト化する。元々Oー157は胃酸で死ぬあまり問題の無い菌だったのが牛を早くするために餌が牧草から穀物に変わったことにより耐酸性の菌が生まれた。

    食肉の解体も機械化され効率化されるが個体差によってうまく処理できず内蔵が混ざることで大腸菌などに汚染される。鶏も胸肉が好まれるため胸筋が早く発達するように改良される一方親鳥まではまともに成長できなくなっている。それでもこれは世界中が肉を求めた結果だ。100億人に人口が増え世界がイタリア並に肉を食べたとするとそれを支える穀物を作る農地は残っていない。中国の鶏や豚の生産を支えているのはアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、オーストラリアとわずか5カ国から輸出されるトウモロコシなどの穀物で中国のCPIに占める豚肉価格の影響と必死でインフレを抑える中国政府の努力を見ていると例え肉の消費を抑えるのが唯一の解だとしても実行は難しいだろう。「誰が中国を養うのか」が第5章のタイトルだ。

    10億人の飢餓人口がいる一方で10億人が肥満に苦しむ。肥満は比較的低所得者層で増えるのは安くカロリーを得る手段がファストフードやスナック菓子だからだ。スナック菓子は比較的利益率が高く消費者の好みに合わせて創られている。例えば単純に消費者を満足させる手段は糖分、塩分、脂肪分などを増やすこと。糖分は知らないうちにあらゆる加工食品に増やされている。

    エネルギーや水の不足も大きな問題で例えば緑の革命で遺伝子組み換え植物は生産性の向上をもたらしたがそのために大規模な灌漑のため利用できる地下水は減り続けている。また肥料を撒いても養分は土壌にとどまらず表土は流出し農薬と肥料はもはや使わずに生産量を維持できなくなる。

    利益を上げるために農場は大規模化し単一食物に走る。農家にコストダウンを迫る食品会社も同様にウォルマートの様なスーパーマーケットからのコストダウン要求にさらされる。ちなみにウォルマートのコストダウンの最も大きな物は安い給料で働く移民など人件費による物らしい。スーパーマーケットはマクドナルドなどのファストフードとの安売り競争にさらされ、結局はより安く、より豊富でな食品を求める消費者がこの巨大なサプライチェーンを生み出したと言える。しかしこの巨大な食システムは例えば天候の不順やエネルギー価格、食中毒から鶏インフル、狂牛病等何か一つ狂うだけで大きなダメージを受ける。タイの洪水で歯車が狂ったジャストインタイム方式を連想してしまった。

    遺伝子組み換え技術や有機農法なども今の所は充分な解決策にはなっていない。特定の農薬に強かったり病気に強い遺伝子組み換え作物は作れても収穫を増やすにはもう限界が有る。小規模な有機農法と消費者を直結した取り組みで成功した例はある物の規模の限界を超える答えにはなっていない。どうも日常的に肉を食べるのをあきらめるしか答えが無さそうなのだがそんなことができるのか?
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    投稿日:2014.11.27

ブクログレビュー

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  • 徳島文理大学 徳島キャンパス附属図書館

    徳島文理大学 徳島キャンパス附属図書館

    SDGs|目標2 飢餓をゼロに|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/57742

    投稿日:2021.09.07

  • こどもおねむ

    こどもおねむ

    食に関する「危機」が書かれているが、なるほどジャーナリストが書いたのだなと思わせる執拗なまでの煽りに溢れた悲観論を感じる。
    ある章では、穀物が溢れて価格が下落し農家の生活が危ない、と煽ったかと思えば、別の章では、食糧確保が困難で危ない、などと、煽りまくる。
    つまり、ある場所だけでは溢れていたり枯渇していたりと極端であるが、世界的に目を向ければ、大体は食料が足らなくなるだろう、という事なんだろう。
    インフルエンザの爆発が危惧されているが、別のウィルスでパニックになっているとは著者も思わなかっただろう。
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    投稿日:2021.02.15

  • アカセン

    アカセン

    食糧危機への警告本というジャンルもいい加減マンネリ化してきたせいか、さすがに大手企業だけに責任を帰すような暴論にはなっていないが、それでも恐怖を煽るだけの本であるところは変わらない。
    それにしても本書は分量が多いせいもあってか、章が変わるだけで主張がブレるのには驚きだ。

    「大量生産のせいで穀物価格が安くなりすぎてヤバい!」といった次の章で「牛肉の消費急増で穀物が足りなくなってヤバい!」と言ってみたり。
    「後進国では他国から安価な食料が侵入してきて自国の生産業がヤバい!」といった次の章では「人口急増で食料が足りなくなる!」と言ってみたり。

    グラフや表どころか数値もほとんど用いられないのは、そうした章間での不整合に気づかれないようにするためか。
    「可能性がある」「可能性は否定できない」「最悪の事態が生じても不思議ではない」という言葉が多用されるが、それがどんな突飛であろうが確率が示されないのであれば、「豆腐の角で頭をぶつけて死ぬ可能性がある」とだって言えてしまう。

    また、数値で語れないので、意見は基本的に感情のみを重視したものとなる。
    家庭での食事が減って外食が増えることについては、女性の社会進出や分業による余暇時間の創出などのメリットを無視して『私たちの身の上に何か極めてよからぬことが起きるような気がしてならないのだ』と感情だけで危機感を煽る。
    『牛の運搬用トラックについては、ほぼ十台に一台の割合で病原性大腸菌が見つかった』などと食肉の不安を煽るが、筆者はすべての肉は生で食べられるようにするべきだとでも言うつもりだろうか?

    2008年に書かれた本書によれば、政府や巨大な食料組織に対抗するため『彼らの不満を爆発寸前の状態までふくらませた』二百万もの"組織"が『主催者もメディアも未確認だが、おそらく、人類史上最大の社会運動』に参加しており、『この大規模な動きがそのうち、ある種の臨界点に達し、頑強に抵抗する政治家や産業界のロビイストでさえ阻止できないほど、大きなうねりとなって、改革への原動力となることは十分に考えられる。』とのことだ。

    良書というのが何年も、時には何百年もの批評に耐えうるものだとすれば、そうでない本は数年でその正体が暴かれる。
    時事問題の理解のためには、新刊に飛びつくよりも、数年前の本と現時点での状態を比較すると、新しい側面で語れるようになるかもしれない。
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    投稿日:2019.11.30

  • なー

    なー

    このレビューはネタバレを含みます

    手軽で美味しいモノに低価格まで求めたら、食の安全が犠牲になる…なんて少し考えれば分かることだけど、それにしても凄まじい。無理が通れば道理が引っ込む、だわな。

    マクドナルドやウォルマートはこんなことやってます、「緑の革命」はこうなった、との事例報告で手一杯。ローカルヴォアとかオーガニック、シエラクラブや不耕起農法とかの話が駆け足になってるのは紙幅の都合か。日本人に馴染みのない言葉にちょいちょい訳者注が入っているのが親切。

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    投稿日:2019.10.12

  • おーた

    おーた

    食のシステムとしては全体を見るという意味ではよくまとまっているが、主義主張という点では著者の想いが先行し、複雑な背景も相まって綺麗にまとまっているとは言い難い。農業史的な意味では「食糧と人類」が、フードチェーン的な意味では「フードトラップ」が良い枕となったし、本書をきっかけに農業経済の分野としての必要性・重要性についても理解できたと思う。答えを知るための本ではないが、興味のきっかけを持つ本としては十分と思う(その割にはちょっと長いが)。続きを読む

    投稿日:2019.04.14

  • NAMI

    NAMI


    1.最近海外の農業形態について読むことが減ったので購入しました。

    2.キーワードとなるのはグローバル企業による搾取と消費者の気づきの2つです。経済効率を優先する社会を作りあげたのは両者であると著者は述べています。食料を商品としてしまい、大切なこたを見失ってしまっているのが現代の食経済の悪い部分で、どのように悪いのかを調査によって述べてくれている本です。

    3.大方の予想通りの内容でしたが、読み応えがある本でした。
    食料増産による人口増加という悪循環やグローバル企業によって搾取と利益を受ける立場の人間という複雑に絡んだ状況が現代を取り巻く環境の事実なので、消費者側は、なにが自分に出来るのかを今一度考えていかなくてはいけないと思わせる一冊でしたり。
    続きを読む

    投稿日:2019.04.14

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