石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門

岩瀬昇 / 文春新書
(37件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
8
12
10
0
0
  • 化石燃料に関してこれ一冊でおおよそのイメージがつかめ、あまり難しいことは書いていないお勧めの入門書

    OPECは2015年の原油見通しを日量2892万バレルと従来予想から28万バレル引き下げた。サウジアラビアは11月に8万バレル減らし、リビアの政情不安などを背景に10月から39万バレル減少したというがそれでも、3005万バレルあり来年見通しは更に100万バレルの原産になる。サウジアラビアのシェールつぶしという話もあるがそれ以上にロシアやベネズエラが苦しんでいる様だ。

    2014年4月エネルギー庁が中心となり「エネルギー基本計画」を策定したが著者の岩瀬氏はその内容に違和感を覚えたという。「国の根幹に関わるエネルギー基本政策が、エネルギーミックスに関する比率目標を持たず、もっぱら電源エネルギーをどうするかを中心にきじゅつされているからだ。また、我が国における「緊急事態」「非常時」が「3.11」のように国内でしか発生しない前提で書かれているのも気になる。エネルギー基本政策とは、「根本的な脆弱制を抱えている」一次エネルギーをどうするか、から始まるのではなかろうか。地下資源に乏しい我が国が先ず考えるべきは、一次エネルギーをいかに確保するか、であろう」

    日本の一次エネルギー比率は石油44.1、ガス22.2、石炭27.1、原子力0.7、水力3.9、再生エネルギー2.0となっている。原発が稼働していた2010と比べると石油+4、ガス+5、石炭+2.4、再生+1で原子力の減を補った。次に消費の面から見てみると投入が21.1百万テラJに対し最終消費が14.5百万、6.6百万がロスとして消えている。2次エネルギーでは発電で投入が9.2百万に対し発電ロスが5.4百万で自家消費と送電ロスを除くと電力として使用されるのが3.4百万このうち産業用、家庭が各百万、民生の業務用が1.2百万ほどだ。最終消費は民生家庭が2.1百万、民生業務が2.9百万、運輸旅客が2.1百万、運輸貨物が1.3百万そして産業用が6.2百万となっている。電気が足りる足りないと言ってるのは一次エネルギー投入からすると16%ほどのことなのだ。運輸と産業用はまず石油が一番で鉄鋼などは石炭が必要になる。石化製品も石炭や天然ガスから作られるC1ケミカルが増えて来ているとは言えまだまだこれから。

    日本が高いLNGをスポットで買っているのもちゃんと理由がある。元々天然ガスは消費地が近くにないと輸送と貯蔵に問題がある。天然ガスのほとんどは生産地で消費されており、貿易量は生産量の30%さらにその70%がパイプラインで輸送されている。LNGは生産量のわずか10%しかなくそのうち37%が日本向けだ。日本では公害対策として発電用に使われた電力価格が原価積み上げ方式だったため天然ガスも熱量等価で原油リンクとしたわけだ。その後アメリカでは天然ガス先物市場が確立し現物決済をしなくていい先物市場ができたからこそ、スポット取引や買い手の決まっていない天然ガス開発プロジェクトも進められる様になった。天然ガス田の開発プロジェクトをするためにはどうやって需要地まで運ぶかもセットになり新たにパイプラインを作るにせよLNG基地とタンカーを作るにせよ1兆円規模のプロジェクトになる。売り手ー買い手と輸送方法がセットできないと銀行団のファイナンスが組成できない。これが長期契約の日本のLNGが高いといわれた原因となっている。

    石炭はほとんど生産国内で消費され世界最大の産出国の中国も輸入している。輸出余力があるのはオーストラリア、インドネシア、ロシアと南アぐらいしかない。これにアメリカ、インドを加えると世界生産の9割ほどになる。一次エネルギー全体では上位13カ国で需要の7割を消費している。中国とアメリカの2国で4割、5位の日本が3.7%となっている。産油国のイランとサウジが11、12位でイギリスよりも多いのが興味深い。日本が誇れるのはエネルギー効率でGDP当たりのエネルギー消費を見るとドイツには少し負けるがイギリスやイタリアと並んで高い。一人2000キロカロリー程度を食事として消費している人類はそれ以外に22万8千キロカロリーを別の形で消費している。1900年代以降人口が爆発的に増え、寿命も延びたのは基本的にはこのエネルギー消費によって支えられている。気候変動の対策が必要とは言えそうそうエネルギー消費を減らすことは出来ないし、途上国の人口増と経済発展は更なるエネルギーを要求する。

    エネルギーミックスを考える上ではダニエル・ヤーギンが「探求」の中で1章を割いた第5のエネルギー「省エネ」がおそらく日本の最大の2次エネルギーになる。札幌地下鉄の様に暖房オフにするというのも一つの考え方だが、輸出できるのは快適な省エネ技術だろう。ノーベル賞の天野教授は青色LEDのGaNの技術を次世代パワー半導体に生かそうと研究している。
    続きを読む

    投稿日:2014.12.11

  • 実践的エネルギー論

    元商社マンによるエネルギー論。なんといっても現代社会の基幹であるエネルギーについて手ごろな見取り図を与えてくれる。石油・ガスの話がおおむね中心。ブローカーの存在意義など「あれっ?」と思う記述があったり、電力会社の原油生焚きのようなわたくしのごとき浅学にとっては説明不足だった箇所もあるがご愛嬌レベル。

    ガス田/油田開発の経済、なぜ日本の買う天然ガスは高いのか、パイプライン大国アメリカの市場、原油先物取引市場の成立史など
    続きを読む

    投稿日:2016.10.09

ブクログレビュー

"powered by"

  • higashihue

    higashihue

    エネルギー問題の著書である
    スイスは1時エネルギーにはならない
    石油天然ガス石炭電子力水力含む再生可能エネルギーが1時エネルギー

    投稿日:2021.03.10

  • osawat

    osawat

    ☆著者は商社でエネルギー関連業務に従事。
    ☆金曜懇話会の代表世話人(新興国・エネルギー関連の勉強会)

    投稿日:2019.09.09

  • naosunaya

    naosunaya

    石油価格はどう決まるのか?要するに「今や世界のどこでも調達できる市況製品」なのか、「地政学リスクにさらされた戦略商品」なのか、という点について、著者の結論は「基本的には市況製品。その気になればどこからでも買えばいい。ただし、戦争など一朝ことあれば戦略商品としての性質も出てくる」ということ。

    あと個人的には長らく腹落ちしていなかった「シェールガスってなんであんなに価格弾力性が高いんだろう?」(ちょっと石油価格は上がれば開発が一気に加速し、価格が下がれば開発が止まる。本来投資が莫大な資源開発は市況によってそう簡単には止められないし始められない。例えばLNG)。という点について、シェールガス開発のメッカである米国においては、資源開発は地権者の私的所有権の範囲で決められるから(普通は国との交渉)、というのはなるほど感のある見解であった。
    続きを読む

    投稿日:2019.01.01

  • bookkeeper2012

    bookkeeper2012

    元商社マンによるエネルギー論。なんといっても現代社会の基幹であるエネルギーについて手ごろな見取り図を与えてくれる。石油・ガスの話がおおむね中心。ブローカーの存在意義など「あれっ?」と思う記述があったり、電力会社の原油生焚きのような説明不足もあるがご愛嬌レベルと思う。

    ・天然ガスは液化してLNGにする技術が開発される前は、石油のほぼ役に立たない副産物でしかなかった。

    ・LNGプロジェクトには探鉱、開発に加えて液化、タンカー、再気化のロジが必要。需要地との距離により必要なタンカー船腹量が異なるが1兆円規模になる。よって典型的なLNG長期契約では引き取り義務を定めたり、仕向地規定条項があったりする。売主、買主が一体となって推進するわけだ。

    ・とは言え2013年の世界天然ガス生産量のうち貿易量は30%。さらにそのうちパイプラインが70%で、LNGが30%、天然ガスは地域性が強く、地域間の価格関連性は弱い。日本のLNG輸入量は世界の貿易量の約4割弱。

    ・日本向けLNGは原油代替だったので原油価格リンク。欧州の天然ガスは競合である重油や軽油価格リンク。パイプライン大国アメリカは国内需給で決まる。

    ・国境をまたぐガス田は早いもの勝ち。

    ・パイプライン大国アメリカは天然ガス消費量の22%、日本の6倍。アメリカでなら天然ガスをスポットで売ることができる。トリニダード・トバゴのようにアメリカ市場で売る前提でガス田開発をすると、長期契約と違って供給責任がないので設備の安全係数を低く見て低コストにできるそうな。

    ・ふつう地下資源は国家のものだがアメリカでは土地所有者のもの(海上は連邦と州)。イギリス法由来だが今ではアメリカとカナダだけ。

    ・アメリカの基幹パイプラインは第三者使用権が保障されている。入札などで誰でも使用できる。

    ・大手国際石油会社の代表だったセブンシスターズは73年には供給量の64%を占めていたが、石油ショックを経て国営会社が伸張し、最近では16%に過ぎない。

    ・契約に関するリスクでは支払リスクより履行リスクが厄介と。ここはもう少し説明してほしい。契約不履行をされると銀行によるLCも意味がないと。

    ・ロンドンのIPEは原油先物取引においてNYMEXに立ち遅れていたが、現物受渡し不要の差金決済に条件を変更したことで流動性が高まった。また湾岸戦争で時差による地の利もあった。東京は時差で言うと一般に不利な立場になる。アメリカと日本の間には海しかなく何も起こらない。

    ・コモデティ:その業界の関係者でない一般の人でもいつでも容易に取引できる商品

    ・シェール革命によりアメリカ産LNGが世界に出回るようになると、天然ガスもコモデティ化がある程度進むと予想される。

    ・平時のコモデティ、非常時の戦略物資

    ・消費エネルギー量 「原始人」2,000kcal/d、「高度農業人(AD1,000年)」24,000kcal/d、「技術人」230,000kcal/d

    ・日本では電気は投入エネルギーの43%を占めるが、ロスが大きいので使用エネルギーだと24%。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.05

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【由来】
    ・文春のメルマガ。ダイヤモンドかTKの佐藤優評でも見たか?

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・ニーモシネ

    ・ガスは液化技術が難しい。このため、ほとんどが現地消費であり、流通しているのは30%程度。

    ・アメリカのシェールガス・シェールオイルは、今後ますますアメリカの国力を増すことに貢献するというのが著者の見立て。

    ・石油の生成には根源岩、移動、貯留岩、トラップ、帽岩の5つの要素が絶対に必要。この中のどれかの存在が欠ければ、石油は存在しない。ちなみに、貯留岩ってのは、スポンジのイメージ。

    ・戦略物資と見なされていた石油もコモディティの一種と見なされるようになったのである(P173)。平時にはコモディティだが、非常時には今でも重要な戦略物資なのである。

    ・資源量と埋蔵量は違う。埋蔵量は、実際に取引する状態にできる量のこと。これは技術的な進歩や、市場価格との関連から変動する。かつては埋蔵量はもうすぐなくなる、というような数値だったが、今は比較的安定している。

    ・「エネルギー界の池上彰さん誕生!」との帯。う〜む、自分の地頭が悪いせいか、そこまではよく理解できなかったような。とは言え、ひとくちに「エネルギー」と言った時に漠然と抱いていたイメージに、かなり具体的な肉付けができる程度には理解できた。

    【目次】
    続きを読む

    投稿日:2018.10.28

  • yajjj

    yajjj

    三井物産でエネルギービジネスに長年従事してきた著者による素人にもわかるエネルギー入門。自分自身10数年前エネルギー関連のAgendaに関わりそれ以降エネルギー問題については注視してきたが改めて俯瞰するために大変役立つ良書。難しい問題をここまで平易な日本語でしかも新書で著している点にも感動です。ちなみに著者はライフネット生命社長の岩瀬氏のお父様だそう。すごい親子。続きを読む

    投稿日:2018.10.09

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

本棚の開き方(スマートフォン表示の場合)

画面左上にある「三」ボタンをクリック

サイドメニューが開いたら「(本棚アイコンの絵)」ボタンをクリック

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。