【感想】掟上今日子の備忘録(単行本版)

西尾維新, VOFAN / 講談社
(210件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
26
72
67
8
1
  • 犯人が登場するヒマもない。

    忘却探偵・掟上今日子さんは、眠ったらそれまでのことは全て忘れてしまう。
    だから「では明日、皆をここへ集めてください。謎解きをして犯人を明かしましょう」という訳にはいかない。メモなどを残すことはできても、基本的には明日になったら「初めまして、掟上今日子です」から再スタートなのだ。

    ではどうするか。ぜんぶ今日中にやるのである。
    濡れ衣役兼助手担当である隠舘くんのドン臭さが今日子さんの電光石火っぷりを際立たせる中、事情聴取から推理から解明まで、いっさいがっさいを今日子さんは今日中に終わらせる。その速さは犯人の登場と言い訳が省略されるほどに1日以内である。
    ただし時間延長の奥の手はある。徹夜だ。

    「物語シリーズ」で一世を風靡した西尾維新、初の電子化1作目。ファンとしては嬉しい限りである。
    相変わらず読み手を選びそう――と思いきや、物語シリーズの大ブレークに揉まれて角が取れたのか、ほどよく西尾維新といった風味になっている気がする。いい機会なので、初見の方にも手にとって頂ければと思う。

    シリーズ情報には「全1冊 完結」とあるけれどご安心を。あとがきにてシリーズ予告あり。
    そうでなければ困る。提示された全ての謎はきっちり解かれたけど、なにしろ他ならぬ今日子さんの寝室の秘密がまだ残されているのだから。
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    投稿日:2014.10.16

  • 掟上今日子という人物の「謎」

    ただひたすら事件を呼び込み、かつ容疑者として疑われる青年が巻き込まれる事件を、その日の記憶の全てを睡眠と共に忘れてしまう忘却探偵がその一日で事件を解決していく話。また、そのような特殊な状況に置かれている掟上今日子という人物そのものもひとつの大きな「謎」として描かれています。

    だいたい、2時間くらいの読書時間でした。

    第一話では「あるものが、ないことを証明するには?」がひとつのテーマ。10章までのタイミングで、どのように「解決」するのかがわかればすごいです。

    第二話では「1億円より価値のある百万円」がテーマ。7章までのタイミングで百万円の額面以外の価値が想像できれば、すごいです。

    第三話では「推理小説家の原稿の隠し場所」を8章までにわかればすごいです。また、隠館はひとつミスを犯すのですが、それについても8章までの間に、分かる人はわかると思います。

    第四話・第五話は続く話です。主人公たちが追いかけていく謎ももちろん大事な部分ではありますが、「掟上今日子」という人物の謎さ加減も際立ちます。

    西尾維新の特徴的な描写については、今までのシリーズに比べれば鳴りを潜めています。しかし、その分万人受けする描写になっているかと思います。解決編に入るまでに、読者として推理するには、伏線や描写がやさしくはないですが、ミステリー好きにはお勧めです。もちろん、西尾維新好きにもお勧めです。
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    投稿日:2014.10.16

  • サクサクっとライトミステリ

    連作短篇集。一日の記憶は寝てしまうと忘却してしまう。故に殆どの案件は一日で解決してしまう最速の探偵。テンポが良くサクサク読めて面白かったです。ある段階までの記憶が残っているなら、名前や出生などパーソナルな記憶も残っているのでは…とか、設定に多少の無理を感じましたが、ラストの展開で、そこら辺りも伏線として織り込み済みなのかなぁと。今日子さんの過去が今後のキーポイントになるのかも。続きを読む

    投稿日:2015.08.22

  • 忘却の探偵と、事件を引き寄せる主人公の物語

    寝ると記憶を失う探偵と、巻き込まれ型主人公の物語。
    探偵がいるところで、次々と事件が起きるという皮肉さと、記憶を失うということで時間的、能力的な弱点をつくっている。
    また主人公がいくら探偵に恋をしても、探偵はすぐに忘れるため発展しないという切なさがある。

    <おすすめする人>
    ライトなミステリーを読みたい人。
    ある程度ミステリーを読んでいて、すれている人(変化球ミステリーなので)

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    投稿日:2015.10.11

  • 名前が面白いですね。

    ドラマが面白かったので、読んでみたくなりました。
    あらすじがわかってるといつも読むペースが落ちるのですが、この作品はとても楽しく読めました。
    まだまだ謎が秘められていて、いい感じです。登場人物の名前がとてもユニークで、こちらも楽しく読みました。
    ドラマには登場していない人もいるみたいなのでとてもワクワクしています。
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    投稿日:2016.01.27

  • 軽いミステリー、キャラの味付けはいかにも維新

    ライトノベルはキャラ小説といわれます。そして西尾維新は当代一といえるほど、個性的なキャラ作りが上手です。キャラの名前の言葉遊びも楽しいですね

    今日子、今日一日しか記憶を保てない女。厄介、ひたすら事件に巻き込まれる不幸な男。特に厄介の事件巻き込まれ特異体質っていう設定にはプッと笑ってしまいました。名探偵ものの、彼らの周囲で起きる事件数って異常ですからね。名探偵コナン君なんて毎週殺人なわけで、つまり、年間50人死んでるわけで、一年の殺人数が400人程度の日本では、殺人の八件に一件はコナン君がらみなわけです。

    そのいにしえから続く謎(ミステリー最大の謎と言っていいでしょう)を「体質」ですましちゃうのが、西尾維新らしくていいと思うんです

    また、ノリが軽いのも西尾維新らしいです。本作では手がちぎれたり、片目が潰れたりしませんが、他の作品では主要キャラもかなりひどい目に合います。でも、なんだか軽妙でするする読めちゃうのが、この著者の特徴とも言えます。記憶を失うなんて境遇も何となく読めちゃいます。

    内容は、忘却探偵が一日で事件を解決します!っていう内容の短編連作集です。最後の数件は連続して中編をなしています。厄介君は依頼人兼助手といったところでしょうか。基本的には失せ物探偵で、殺はなく穏やかに話が進みます。ミステリの質としては・・・うーん、どうなんだろう。詳しくないからよく分からないけど、ちょっと強引なような。

    今日子さんが最初は型どおりのビジネスウーマンから、ちょっときつめの本性出しちゃうところとか、彼女の一挙一動を楽しむ小説になっています。もしシリーズ化されたら、彼女のキャラがもっと膨らみそうです

    西尾維新のファンに。あるいは単純にラノベミステリーが楽しみたい人に広く勧めます
    続きを読む

    投稿日:2014.10.18

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  • 犬墨(イヌズミ)

    犬墨(イヌズミ)

    小説・漫画・ドラマの全てが高レベルな作品なので、万人にウケる西尾維新作品としては今日子さんがTOPに入ってくるのではないだろうかと思っています。

    この作品と出会ったきっかけは小説版の本書なのですが、その後に時間を置いて漫画とドラマを全て見た状態です。
    そのため、小説版を揃えようとした時に(既に別媒体で読んだ内容を再度読むのもなぁ)となってしまうことも。。。

    いつか全巻揃えたいとは思ってます‼︎
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    投稿日:2024.02.08

  • notitle

    notitle

    今日子さんとは、1人で決断できる賢さを持つのに間に合った人だと思います。

    「忘れる」という現象は、人が生きる上で当然に起こることですので、今日子さんが主人公になり得るのは、「忘れるから」ではないと思います。
    でも、昨日の「何か」ではなく「昨日」を忘れてしまっても、今日も何かを「決断する」場面はあり、そのための決断には、基づく根拠が必要です。
    根拠の候補には、例えば誰かの助言や、自分の価値観などがありますが、ここで今日子さんにとって「誰かの助言」は、記憶に残らないため「ない」ものとみなされるはずですので、今日子さんのすべての決断は、自分の価値観に基づいていると考えられます。
    「根拠」が足りなければ、決断に至らず迷います。でも、今日子さんは、昨日のできごとは忘れても、すでに培った価値観は、生きていくのに十分なほど揺るぎないものであるため、自分の価値観「だけ」で今日も生きていられるのだと思います。
    今日子さんが格好いいのは、昨日を忘れても今日を生きられるからではなく、昨日を忘れても今日を生きられるほどの価値観の蓄積をすでに済ませていると思うからです。

    なぜ昨日を忘れてしまうことになったのかとともに、いったいどんな経験を積んで価値観の蓄積に至ったのかも気になります。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.04

  • テトラ

    テトラ

    掟上今日子の備忘録/西尾維新 #読了 11/4

    掟上今日子には今日しかない。事件を1日で解決し、明日がくれば全て忘却する。
    読むのは3回目。西尾維新先生を知った作品です。色褪せないなぁ。

    投稿日:2023.11.12

  • kumitaiso

    kumitaiso

    掟上今日子さんはとてもかっこよく魅力的なので、シリーズ読み進めてまた会いたいなぁと思ったんだけど、ストーリーテラーの厄介くんが少しウジウジしていてわたし的にはイライラするので悩ましい…
    私がもうオバサンだからかなぁ笑続きを読む

    投稿日:2023.09.05

  • 抹茶

    抹茶

    寝ると記憶がなくなってしまう忘却探偵の今日子さんが事件を解決していくお話しだが、登場人物の名前の読み方がそのまま読めなく、何て読むんだっけ?と前のページを何度か探ってしまった。私は今日子さんより記憶維持が難しいなと感じてしまった。

    私には事件解決の話しより厄介との関係を楽しめるお話しでした。

    ドラマ化されていると途中で知り、そちらを見てみたい気持ちになった。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.06

  • 音羽

    音羽

    このレビューはネタバレを含みます

    久しぶりに面白いものを見つけてしまった!ドラマでも見ていましたが、依頼をスピーディに、たんたんと解決していく所が良かった。「記憶はなくとも身体は覚えてる」記憶を1日しか保持できない彼女だからこそ説得力があるセリフだな。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.01.26

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