【感想】八月の犬は二度吠える

鴻上尚史 / 講談社文庫
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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  • 作者のもうひとつのバーチャル青春物語

    作者にとって第一の青春は「第三舞台」。2番目の青春は、「虚構の劇団」。
    そして、この2つでも表現できない(または「できなかった」)第三の青春を書いたのが、この小説だと思う。

    この小説は、作者自身がモデルであると想像する主人公が京都で過ごした過去と現在がシンクロしながら物語が展開されていく。

    その様子は、作者本人が京都時代の仲間に対して「たった1年間だったけど、本当に濃密で楽しかった」という感謝の気持ちと「俺が東京にいる間に、おまえらそんな楽しいことしてたのか」という若干の羨望が複雑に混じり合っているという印象を受けた。

    作者は、今まで何作か青春小説(のようなもの)を書いているが、
    正直、私は、彼の過去の小説を読んでもどうもピンとこなかった。

    言いたいことは何となくわかるが、なぜか共感できなかったのである。

    それは、今までの彼の小説では、それなりの完成度があるのだが、
    「彼自身が納得できる青春を小説の中で疑似体験することができなかったのでは?」と思う。

    しかし、今回の小説を通して、彼は「自分が演劇という道を選ばなかったら、どんな青春を過ごしたか」という疑似体験を、ようやく実現することができたと同時に、作者本人が、小説の中で納得のできる人生を書き記すことができたのだと思う。

    作者は、この小説を書くことで、憧れていたけど実現できなかった(かもしれない)「普通の青春」にようやく決別をすることができたのかもしれない。

    そして、この小説は、作者本人が「演劇をしていなかったら、普通の人生を歩んでいたもう一人の自分」に対してのレクイエムのような気がするのである。
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    投稿日:2015.07.25

ブクログレビュー

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  • 1213430番目の読書家

    1213430番目の読書家

    2016/11/11 500ページもあっという間に読めた。作者と同い年、愛媛出身、大学時代を京都でと共通項多い。馬鹿なことを一緒懸命やった若い頃。懐かしい。

    投稿日:2019.09.01

  • 犬文庫

    犬文庫

    『八月の犬』。それは京都を彩る『大文字』に「ヽ」を足し『犬文字』にする極秘作戦。1982年、戌年の夏、6人の大学生は青春の熱狂を計画にぶつけた。しかし実行直前、山室の秘めた恋心が悲劇を呼ぶ。友情と『八月の犬』は消えたかに見えた。そして24年後、再会した瀕死の親友は、仲間の再結集と計画の完遂を山室に託す。

    「大文字焼き、戌年の来年だけ、
    犬文字焼きになったら面白くないか?」
    P120より
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    投稿日:2018.02.14

  • pokopoko0713

    pokopoko0713

    京都の 大文字焼きに「`」をつけて、犬文字焼にしようなんて面白すぎ。
    五山の送り火は死者のために守り継がれきた大事なもの。
    それに「`」をつけようなんて、なんと冒涜した行為だろうかとも思うのだけど、読んでいてワクワクした。
    24年後に再開した彼らは、それぞれの事情を抱えており、あの頃のように無茶を出来る立場ではなくなっているのにそれでも友の為に犬文字焼きを再開するべく奔走するには胸を打たれる。
    とても読了感のよい作品だった。
    続きを読む

    投稿日:2015.03.20

  • 国領町

    国領町

    『八月の犬』。それは京都を彩る『大文字』に「ヽ」を足し『犬文字』にする極秘作戦。
    京都の浪人寮で出会ったかけがえのない仲間たち。1982年、戌年の夏、6人の大学生は青春の熱狂を計画にぶつけた。

    投稿日:2015.03.17

  • 講談社文庫

    講談社文庫

    『八月の犬』。それは京都の『大文字』焼きに「ヽ」を足し『犬文字』にする極秘作戦。1982年、戌年の夏、6人の大学生は青春の熱狂を計画にぶつけた。しかし実行直前、山室の恋心が悲劇を呼ぶ。消えたかに見えた友情と『八月の犬』。しかし24年後、再会した病床の親友は、仲間の再結集と計画の完遂を山室に託した。続きを読む

    投稿日:2015.03.09

  • picapica149

    picapica149

    「大文字焼き」を「犬文字焼き」にする、というのは駿台予備校の英語の山口たすく先生(名前を覚えていたことに自分でびっくり)が言っていたことだった。
    同じアイディアを具体的に小説にした感じ。
    予備校で出会った人達が主人公、というのもあまりない話でなかなか面白かった。
    5浪して医学部を諦めた吉村とか、優秀だったのに就職に失敗して精神を病んでいしまった久保田とか
    笑えない苦しい感じが現実味を出しているのだろうか?

    こんなふうに、24年もブランクがあっても
    その人のために何かしようと思えたり、
    集まろうと思えたりする仲間がいるのはちょっとうらやましい
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    投稿日:2015.02.06

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