【感想】まほろばの疾風

熊谷達也 / 集英社文庫
(14件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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  • 熊谷氏によるアテルイ伝、高橋克彦氏『火怨』との比較も面白い

    熊谷達也バージョンの『アテルイ伝』:高橋克彦氏と同様に東北の生まれであるからこそ書ける小説。ここでは、アテルイの相棒・モレは女性(大巫女)として描かれている(史実は男性なのでは?)。大和朝廷との戦争初期では、アテルイを長とする蝦夷連合が勝利を重ねるものの、策士・田村麻呂の出現で戦況は一変する。アテルイとモレとの結婚(相互に不干渉を保ってきたイサワとイワイの融合)、最後に帝に一矢報いるアテルイ&モレの姿は、熊谷オリジナルか?敵ながら田村麻呂の男気も含めて、素晴らしいエンディングと思う。『火怨』も早速読み返そう。続きを読む

    投稿日:2017.09.21

ブクログレビュー

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  • 風音 柚樹

    風音 柚樹

    ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮〜 を観に行くにあたって、蝦夷の文化や関連の歴史に一度触れておきたくて読んでみたところ、足がかりとしてちょうど良さそうだった。

    蝦夷の文化・習俗についてが、信心深くない現代の日本人の目線から見ても噛み砕きやすいくらい理性的に描かれていて、大和側の歴史の動きも最低限振れているので自分の中での時代勘の同期もとりやすかった。

    こういった歴史上の人物や土着信仰を持つ人々を描く本に対しては、今まで、少年漫画の主人公によく見られるような、良い面ではアツく、悪い面では考えなしな人物像の主人公が書かれるイメージがあった。私自身はそのような人柄だと感情移入しにくいので少し警戒していたのだが、少なくとも本作のアテルイは、狩猟の民としての冷静さ・判断力が存分に描かれていて、自分の知らない慣習との橋渡しになってくれる。

    また、そもそもアテルイたち蝦夷の人々を理性的に描くことこそ、彼らを偏見なく見ることなのだなというのを、文字でなく実感させてくれたように思う。昔の、自然と暮らした民の話だから直情的な主人公かもしれない――という気持ち自体も偏見のひとつだったなと自省した(振り返って自分の心配を分析してみれば本の描写に対するものだったとはいえ、読む前はそこまで細かく区別して意識していなかったので、大差ないことだと思う)。
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    投稿日:2024.03.03

  • todo23

    todo23

    アテルイを主人公にした作品は、陸奥甲冑記(澤田ふじ子)、火怨(高橋克彦)に続いて三作目ですね。
    前半を過ぎまでは、なかなか良いのです。アテルイの登場の仕方もモレとの出会いも。熊谷さんらしい力強さが有って、次々にページをめくってしまいます。しかし、最後はちょっと。というより、「火怨」の余りにヒロイックなアテルイの行動解釈を読んだ後では、どうしても負けてしまいます。こちらを先に読んでいれば、それなりに収まったのかもしれませんが(とは言え、ちょっと納得できないところもあります)。
    ところで、この作品、「火怨」と比べ幾つかの大きな相違があります。
    まず第一に、この戦いの先陣を切るアザマロの子(私生児)がアテルイだったとういう設定。更に戦いの初期はアザマロが全軍の指揮をとり、その病死後にアテルイに引き継がれて行くのです。
    もっと違うのはモレを隣村の女性(巫女)首長としていることです。当然ながら、そこにはロマンスがあるわけでして・・・。
    二人の出会いは鮮烈で、それはそれで成功だったように思えます。
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    投稿日:2017.10.30

  • まさパパ

    まさパパ

    蝦夷の英雄アテルイの一生を描いた大作。
    大和に服従せず、最後まで仲間とともに自分達の土地を守ろうと奮闘する。

    他の作家が書いたアテルイも読んで見たいと思う。

    2013.12.24読了

    投稿日:2013.12.25

  • tsuccy1209

    tsuccy1209

    自然の恵みを戴く事に感謝し祈る蝦夷。
    反対に自然の脅威を恐れ祈る大和民族。
    同じ祈りだが根底の違いが互いを相容れないものとしてしまう。
    凄い興味深い内容だったけれど、あまりにも駆け足で物語が進んでいってしまったのが少し残念。
    数巻に渡りじっくり描いて欲しいくらい魅力的な話でした。
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    投稿日:2011.08.12

  • kayakingbird

    kayakingbird

    桓武天皇の時代
    東北地方に住む蝦夷の制圧が行われた
    蝦夷の族長として闘ったのが英雄アテルイ
    そのときの征夷大将軍が坂上田村麻呂

    蝦夷のお話は
    いたたまれなくなる話が多いが
    アテルイが「英雄」のまま了している
    よかったよかった

    --追伸--
    「火怨(高橋克彦著)」の方が良い。
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    投稿日:2010.12.01

  • FT

    FT

    はっきり言って文章は粗く、特に会話のやりとりなんかは拙いと感じた。
    そのせいか、序盤はイマイチ感情移入しきることができなかったが、ある程度物語が進行してからのパワーたるや、さすがにはにゃ氏が勧めるだけのことはある。
    皆川博子氏の作品を想起させるような、遠大なクロニクルはとても読み応えがあった。
    それでいて、狩猟民族が農業に出遭った時の戸惑いなど、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」が好きな向きならおおと感嘆してしまうような要素も散りばめられていたりするから、懐も深い。
    ラストシーンを始め、グッと泣かせにかかる山場まであって、これほど連続テレビドラマにハマりそうな小説も珍しいのでは!
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    投稿日:2010.06.11

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