【感想】イグアナの娘

萩尾望都 / プチフラワー
(30件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
15
7
7
0
0
  • シュールな短編だけど深い

    自分と母親にだけイグアナの姿に見える娘。
    短編なので、生まれてからの苦悩の半生(にも満たないかな)をさらっとシュールに描いているけれど、直接描かれていない行間のようなものを読んでいくと、とても深くて重いお話しだと思う。
    同著者の「半神」ほどではないが、心に残る作品だと思う。
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    投稿日:2017.11.04

ブクログレビュー

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  • knkt09222

    knkt09222

    このレビューはネタバレを含みます

    大傑作「イグアナの娘」は、決して奇蹟のようにポツンと存在を始めた作品ではない、ということが解る一冊。
    親子に生じるあれやこれやを、母視点、娘視点、さらに母と子に挟まれた世代視点、きょうだいの存在、男視点、女視点、老若男女なるべく多くの方角から多層的に描き・重ねている。
    ピンク・フロイドの「狂気 DARK SIDE OF THE MOON」のジャケ写よりももっと多方面から、ブラックボックスに光を当てて、当て直して、当て直し続けて、毎回どういうプリズムが出るか吟味している、という感じ。
    で、たぶん結論としては地味なところに落ち着く。
    歳を重ねたからこそ判ることがある・見えるものがある、と。
    あるいは萩尾先生にとってもその年齢にならなければ描けなかった作品群なんだろう。
    渦中にあってはどうしようもなかった物事に、別の場所で基地作りした後で再度直面する。
    ここには時間の流れがある。
    親との和解は、渦中においては困難で、時間差で、可能の兆しが見える。
    これは年齢差ゆえ仕方ないことだが、往々にして手遅れになりがち。
    と「シン・エヴァ」後の身として、平凡なことも恐れずに書いてみる。

    ■イグアナの娘 50p
    私の世代だと菅野美穂主演のテレビドラマのインパクトが強い。
    が、原作の凄まじさはまた一層で、コミカルなタッチだからこその恐さが、ちょっと度を越している。
    思春期に読んだときは完全に子供の視点で親を見ていたが、今回見てみると、序盤はむしろ母親視点で進むので、少し驚く。
    途中で娘視点になり、娘が成長し母になり、後半が前半と対になる形で描かれ……と時間の経過があり、むしろそこが大事なんだな、と。

    ■帰ってくる子 24p
    漫画ならでは、映像ならでは、いや小説でもあるかな、な醍醐味。
    それは、ある存在が誰に見えて誰に見合ないのか、という設定。
    なんでも初出は井上雅彦監修「チャイルドー異形コレクション7」らしく、あのアンソロジーの中でこれを出すとは、いい仕事をするな! と。
    実際私はヒデが心の底から叫ぶ場面で、不覚にもぐっときてしまった。

    ■カタルシス 40p
    この作品を読むあたりで気づいたのが、この本全体として、「ごく普通の人」が描かれているということ。
    おそらく萩尾先生が、天才や選ばれし美形を主役にしたら「自分が救われない」から、と決めたんではなかろうか。
    ロボットみたいな自分を変えようとし、一歩踏み出し、しかし何もかもが改善したわけではないまま生活が続く、という真理もここには描かれている。

    ■午後の日射し 50p
    一時期の近藤ようこが描いていそうな題材。
    ザ・昼ドラ。

    ■学校へ行くクスリ 40p
    コミカルだがまっとうな成長譚・ジュブナイル。
    周囲の人物が変に見えるだけでなく話している言葉がバグったよう、という描写が面白い。
    また単純に絵柄の話だが、この時期に萩尾先生が描いている少女も可愛いな~、と花だらけのマユミを見て思った。

    ■友人K 8p
    全ページ横一段ブチヌキという実験的なコマ割り。
    萩尾作品でこういう人物が視点人物に据えられるのは少し珍しいかも。

    ◇エッセイ―どこまでも、いく:江國香織(作家) 4p

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    投稿日:2021.09.27

  • キじばと。。

    キじばと。。

    表題作をはじめ短編6作品を収録しています。

    「イグアナの娘」は、青島リカと妹のマミの物語です。二人の母親のゆみこには、リカがトカゲのように見えてしまい、彼女に愛情を注ぐことができません。そんな家庭で愛を受けることなくそだったリカは、いつしか人間のなかで一匹のイグアナとして一生をおくることを受け入れるようになっていきます。

    ほかに「帰ってくる子」や「カタルシス」など、親子愛のもつれやゆがみをえがいた作品、「午後の日射し」のように夫への愛をうしなってしまった女性を主題とした作品などが収録されています。

    「イグアナの娘」や「学校へ行くクスリ」は、登場人物のすがたが変化して見えてしまうという設定になっており、マンガならではの寓意的な表現を駆使して人間関係の機微をえがきとっています。
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    投稿日:2021.09.10

  • boutoumetous

    boutoumetous

     正月2日オンエア『100分de萩尾望都』を視て再読。
     表題作ラストのコマに描かれたトカゲが文庫サイズだとひときわ小さい。
     併録作品、どれも心に刺さる。
     『午後の日射し』、萩尾先生は中年主婦の心の傾斜まで活写してしまう。掲載誌はビッグゴールド。なるほど。
     『学校へ行くクスリ』、こういう心の病をヴィジュアルで見せる手法は、手塚治虫『火の鳥・復活編』が嚆矢なのだろうか。まさにマンガならではの切り口だ。
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    投稿日:2021.01.05

  • eien

    eien

    思わず泣いてしまいました。他の作品も、人間の、深い(ドロドロした感じではなく、他の人にはわからないけど本人にとってはとても深刻といったような)感情的な部分に触れていて、大変おもしろかったです。お気に入りの本です。続きを読む

    投稿日:2018.03.28

  • さと

    さと

    このレビューはネタバレを含みます

    やっぱ萩尾先生は神だわ~。スゴすぎてあたまおかしくなりそうになるわ。
    イグアナの娘、最初読んだときは「お母さんイグアナだったんか。あ、そう」だったんだけど、二回目読んだらお母さん可哀想で泣けたよ。美容整形の暗喩? とか思ったけど、そういうわけじゃないんだよな。親または子を愛したいけど愛せない親子関係全体のお話なんだって思ったら、すごい不幸で切実だった。周囲に当然出来ると思われている(自分もそう思っている)ことがどうしても出来ないなんてね…

    あとのお話はやっぱり表題作に比べるといまいち。受験生の男の子が喫茶店に住み込む話は読み込んでいくうちに登場人物の印象が逆転するのがよかったけど、終わり方が微妙だったなぁ。

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    投稿日:2016.04.10

  • 静華

    静華

     ドラマ化もされたイチ作品。
     母と娘の確執。
     娘、長女がイグアナにしか見えない母親。普通の女の子が良い。次に生まれた次女は人間だ。嬉しい。夢見てたの、可愛い女の子、なんでも似合うのね。
     写真で見るぶんには普通の、人間の娘にみえる。でも、母親の目には、イグアナにしか見えない。
    「ブサイクなくせに化粧なんて!」
     もし他の人の目にも娘がイグアナに見えたら、『あたし なんて言われるか』
    「小学生のくせにませちゃって……!」
    「リカって頭いいの? あのブスいイグアナが? イグアナのくせになまいき!!」

     日々が過ぎ、大学受験の時期。
     馬鹿にしていた姉の行っている大学を受験したいと担当に伝えるマミ。
    「あなたの成績じゃ、もう二つほどランクを下げないと……」
     遊びに来たマミの恋人が言う、
    「美人の上に頭いいんだー」
     気づいてくる、母親による格差。

     リカは恋をした。イグアナなので食べてしまう!と恐れたが牛の彼は大丈夫。卒業と同時に結婚する。北海道と遠く離れた土地に彼と二人きり。母親の小言に悩まされずに済み、ほっとする。
     そして子供が生まれる。
     母親にどことなく似た女の子。
     イグアナか、夫に似た牛のような子供が生まれるかと思っていたのに、何故?と悩む。
     愛せない、と悩むリカ。
     そんなとき、マミから連絡が来る。
     母親が亡くなった、と。
     哀しくない。母親が亡くなったというのに哀しくない。それにショックを受けるマミ。
     家につき、顔を見てあげてと親戚に言われ、布をめくるマミ。
     顔を見たら、少しは悲しめるかしら?と思いながら、そうっとめくる。

     そこには、イグアナが居た。

     イグアナが、目をつむって、佇んでいた。

    「キャーーー」

     叫ぶ。人間であるはずの母親の顔がイグアナ。叫ぶ。
     落ち着いて!と親戚に慰められる。
    「わ わたしの顔に そ、そそ、そっくり そっくりよ!」
    「そうよォ、前から言ってたのよ、ゆりこちゃんとリカちゃんはよく似てるって。そう言うと、ゆりこちゃんは、怒ってたけど……」
    続きを読む

    投稿日:2016.04.05

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