【感想】マージナル(1)

萩尾望都 / プチフラワー
(33件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
18
11
2
0
0

ブクログレビュー

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  • aprilshower12

    aprilshower12

    萩尾望都再読ブーム引き続き。本作マージナルは文庫版で全3巻。萩尾望都と言ったらやはりこういう壮大なSFだよね、という、スターレッドを彷彿とさせる王道シリーズ(だと私は思っています)。普段小説ばかりで漫画を読まないという方にも楽しめるであろう、重層的なつくりのお話です。

    ときは2999年。地球。ある時期を境に、D因子に汚染された地球では、男しか生き残れなくなった。過去の真実を知らされないまま、中世のような暮らしをする短命の地球の男たち。ドームで囲まれたシティのセンターには、聖なる母、マザがひとりいる。このたったひとりのマザが生む子供たちを順番に貰い、村で育てる世界。

    しかしこのマザの裏には、高度な文明社会を持つ月の人間社会があり、地球を実証実験の場として管理するカンパニーから派遣されたチームが、月の人間から調達した卵子を受精させて子供の誕生を管理していたのだ…。マザは統治のための宗教的な象徴に過ぎなかった。そんなことは地球の男たちには知らされていない。

    近年マザは、年老いて子供を産まなくなったとされていた。カンパニーが、子供を配布しなくなったのだ。そんなとき、民衆の目の前で、マザは何者かに暗殺されてしまう…。

    ウー・マン(マザのような女性)がたくさんいる別世界のことを知らない民衆、新たなマザを立てようとするカンパニーとセンター、ある予知夢からカンパニーの長官マルグレーヴを暗殺しようとする砂漠の村の一派、マザの真実を知る市長、遠い過去の事が描かれている膨大な書物を静かに守る図書館の面々と「夜鳴鳥」エメラダ…

    わくわくする設定の目白押しだ。そしてそんななか、どこからともなく現れた少年キラが、マザを暗殺した一派の男グリンジャに砂漠で拾われる。そしてまた、センターの長官を暗殺しようとする一派のはみ出し者の男アシジンとの出会いがあり、シティを巡る運命の歯車が回りだす。
    果たして少年の正体は…?

    キラとグリンジャとアシジン、低俗に言えば、三角関係のBLものとも言えるかもしれないが、そこは萩尾望都マジックで、すっかりアート。美しい絵に目を奪われる。男ばかりの社会では、子どもは第二次性徴期の数年間は女の子のようになり、色子と呼ばれる時期を過ごし、自分を好いて引き取ってくれる「念者」を探す。そんな設定が、壮大なSFに人間的なドラマをプラス。
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    投稿日:2024.11.02

  • otaasian

    otaasian

    萩尾望都の最高傑作。
    男しか残っていない汚染された未来の地球が舞台。

    メイヤードのキャラがいい。一見、冷酷そうな地球管理人、「市長、あなたにだって胸ぐらいつくれるんですから」と薄ら笑いを浮かべて、市長の不興を買うシーン、あの不適切発言、物語の最後で、自分のことだったのか自分を蔑んでいたからこその発言だったのか、と了解できる。そしてなんか泣いてしまう。

    「マージナル」のプロトタイプといえる「スターレッド」にも、火星管理人の敵キャラがでてくるけど、本作のメイヤードはなんともいえないふくざつな翳りを帯びたキャラに仕上がっていて、萩尾作品のキャラのなかでも屈指の出来。
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    投稿日:2022.06.19

  • 清里いち

    清里いち

    あかほりさとる『セイバーマリオネットJ』よろしく、男だらけの地球が舞台。星間規模のスケールと、未来へのひとひらの希望を感じさせる結末がいかにも作者らしい。
    遺伝子操作によって生み出された主人公と、彼の素体となった、星間企業から地球に遣わされた男性(いわばラスボス)との関係が、某TVアニメのそれを彷彿とさせた。続きを読む

    投稿日:2022.04.01

  • キじばと。。

    キじばと。。

    男性ばかりが暮らす世界となった2999年の地球を舞台にしたSF長編作品です。

    ただ一人の女性である「聖母」(ホウリ・マザ)が人びとの前にすがたを現わす日に、目もとに青い刺青をもつ青年グリンジャが「都市」(シティ)を訪れ、マザの暗殺計画を実行に移します。都市を抜け出し砂漠を旅する途中で、グリンジャは行き倒れになっていたキラという少年を救います。その後、死にぞこないのアシジンと名乗る青年にキラの身柄を売りわたしたグリンジャでしたが、キラが盗賊にさらわれ、アシジンとともにキラの救出に向かいます。

    『スター・レッド』と同様に、特殊な来歴と能力をもつ登場人物がその来歴ゆえに過酷な運命に翻弄されるという物語です。生殖の管理という、現在では相当にあつかいのむずかしくなっているテーマに挑戦した作品ですが、少女マンガの表現の可能性を大きく切り開いてきたキャリアをもつ著者の先駆性には目をみはらされました。
    続きを読む

    投稿日:2021.09.08

  • arianrhod

    arianrhod

    後書きが安彦良和さんでちょっと得した気分。できればイラストでも落書きでも入れて欲しかったと欲張ってしまった。彼と同じように私もいわゆる思春期の揺さぶられるようなという萩尾望都体験というものが無い。結構な大人になってから復刻された文庫で読み始めたクチである。マージナルはまだ文庫本の1巻しか読んでいませんが既に夢中。合う合わないでいうと非常に好みの世界観。後追いで作品を読み始めた中でも上の方に位置しそうな予感。続きが楽しみ。続きを読む

    投稿日:2018.03.05

  • ica

    ica

    このレビューはネタバレを含みます

    全3巻読了(Kindle版)。

    壮大で、叙事詩的なSF。
    研究にとりつかれた父と、夫と子を恐れる母の狂気のなかで育った「夢の子供」キラが、二人の青年に出会い愛を知り、不毛な地の希望となる話でした。…でいいのかな? 何度も読んでいくうちに、たくさん発見がありそうです。

    BLではないんですが、BL読みすると三角関係としては珍しい結末。マージナルの既存の制度もBLとは違って面白いけど、三人はそこをさらに超えて、家族でも恋人でもない新しい関係性を築いていくんじゃないでしょうか。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2015.08.20

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