【感想】妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション

山田風太郎 / 角川文庫
(21件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
12
3
2
1
0

ブクログレビュー

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  • kratter

    kratter

    中国の古典を元にした連作ミステリーです。
    精力絶倫の大富豪・西門慶とその8人の妾達、周辺人物に起こる奇怪な事件を描きます。

    最初は、中国の単語やら地名やらが沢山出て来たので調べながらだと読み進めるのが重かったのですが(内容には余り絡まないので読み飛ばしても良いかも)、中盤過ぎた辺りからグイグイ読める内容になって行きます。

    読了後は、本作のミステリ史的な立ち位置とか読み方が分からなかったのですが、"犯人が固定化される事(フーダニットの排除)"、"動機が首尾一貫している事(ワイダニットの排除)"を「物語上の縛り」とし、"どうやって殺したのか?"だけで勝負する、と言う部分が画期的みたいです。僕は一般読者なので、緻密な分析はしながら読まないけど、言われてみれば"この型"のミステリは余り無いですね。

    作品自体はボリュームがあるものの佳作です。ちょっと、各種ブック・レビューが"最期で全部繋がる"みたいな感じでかなり煽りが強かったのでハードルが上がり過ぎていたかもしれません。

    最後の真珠の章で更に何か起きると予測したのであのエピソードは途中に挟み込んでも良かったかな。
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    投稿日:2023.08.18

  • 風太郎

    風太郎

     中国の古典をもとに、美姫たちが織りなす凄惨隠避な怪事件を描く伝奇ミステリー。

     読み応えのあるボリュームでしたが、一気に読まされてしまいました。

     展開は、探偵もののミステリーという形はとっているものの、それだけだけくくれない、まさに奇書を作者がさらにアレンジして一大奇書に仕上がっていると思います。

     形式は連作短編で、どれも淫靡な世界が描かれており、怖いもの見たさから目が離せませんでした。

     人間の業の深さを感じずにはいられませんでした。
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    投稿日:2021.09.04

  • herbtea

    herbtea

    明の長編小説「金瓶梅」をもとにして、西門慶と多くの夫人たちの話を連作短編のミステリにしています。夫の寵愛を受けようと密かな戦いが繰り広げられる中、事件は起こり、西門慶の悪友でたいこもちの応伯爵が毎回真相を見抜くのですが…。最初はただただ恐ろしいと思える彼女が、読み進めるにつれ、愛のためならなんでもするとても可愛らしい人になっていきます。ミステリ好きならトリックは楽しめること間違いなし。15編すべて同じように進むかと思ったら、彼らをラストまできちんと書ききっていて、長編としてもとても良かったです。
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    投稿日:2019.06.14

  • myjstyle

    myjstyle

    山田風太郎ほどジャンルの幅が広く、駄作がなく、いつも見事な語り口で読者を酔わせる作家は他に知りません。中国の4大奇書とされる原作を深く読み込んでいますね。登場人物を自在に操り、金蓮を主人公にした「金瓶梅」を成り立たせています。潘金蓮愛のなせる技を見ました。お見事!続きを読む

    投稿日:2018.11.06

  • サラかえで

    サラかえで

    この趣向で本作以上の作品は出てこないのではないだろうか?

    短編それぞれのトリックや動機の凄まじさもさることながら、キャラの魅力が存分に発揮され、後半にかけて特異な物語へ変貌するキーとなっている。味わったことのない深い感情へと誘います。

    エログロ盛りだくさんであり本格ミステリ。と一括りには出来ない美しさに気付くのであった。

    華文ミステリが身近なこともあるし、ぜひ今のミステリ読者も読むべき。このテーマは現代人にこそ響いてほしい。
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    投稿日:2018.10.29

  • 那智

    那智

    このレビューはネタバレを含みます

    犯人はヤスならぬ潘金蓮。

    浅学菲才の身ゆえ『水滸伝』の武松の名こそは知っていたものの彼の伝で語られる豪商西門慶とその第五夫人潘金蓮はとんと知らず、まして水滸伝と並んで中国四大奇書とされる『金瓶梅』がそのスピンオフ小説でありタイトルの「金」がその潘金蓮の金だと知ったのは本作の読後の事であった。

    さて本作はその『金瓶梅』をベースにその官能性を失わぬまま大胆にアレンジした16篇からなる短編連作ミステリーである。

    作中で度々「稀代の大淫婦」「妖婦」「毒婦」だの散々な…恐らく水滸伝や金瓶梅そのままの評で呼ばれる潘金蓮が傍から見れば些末な出来事で癇に触れ、その相手を死なせる、死ななくとも酷い目に遭わせ、それを西門慶の幇間であり悪友にして本作の探偵役である応伯爵がトリックを見破りながらも彼女にべた惚れであるがゆえに役人に突き出すような真似はせず見逃し、潘金蓮が婀娜と微笑んで幕を閉じる短編が11と続く。
    3篇目ともなると事件の動機となる定型化されたやり取りに「あっ…(察し)」となり、案の定な事件が起きてハイハイ犯人は潘金蓮潘金蓮ワロスワロスとなる。フーダニット?ホワイダニット?何それ美味しいの?

    …が、しかし。12作目から物語は怒涛の展開を見せ始め、短編連作と思われた本作は実は一本の筋の通った長編であり(一本の長編と番外編の短編一作と言っても差し支えない)狂気とエログロはただひたすらな愛情であり、そして愛欲と憎悪が渦巻き果てはソドムとゴモラと化す「金瓶梅」とは潘金蓮だけを指す訳ではなかったのである…。

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    投稿日:2018.10.04

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