【感想】銀翼のイカロス

池井戸潤 / ダイヤモンド社
(490件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
166
182
100
2
1
  • 池井戸さんの黄金パターン

    痛快だった。虐げられ、押さえつけられ、最後は大逆転する池井戸さんの黄金パターン。今回は破綻寸前の帝国航空の再建がテーマ。半沢直樹が悪徳政治家とがっぷり四つに組んで、対決する。政治家相手に『倍返しだ!』と言ってのける姿は、ヒーローだね。続きを読む

    投稿日:2016.02.25

  • 悪を懲らしめるヒーローではなく、根深い社会の縮図と向き合う半沢

    これまでのシリーズで見られた半沢直樹の徹底した調査能力と判断力、仲間との連携によって悪を追い詰めていく痛快さを期待するなら、前作の「ロスジェネの逆襲」の方がスリリングだ。
    何故なら、これまでは半沢が銀行と企業の未来を賭けて企業再生に取りくむと見せかけて、実は黒幕は銀行内にいて、派閥の足の引っ張り合いで、敵は単純で退治しやすい。倒せばスカッとする。

    しかし、今作は、体質が違う銀行が合併することによる歪みと、それに乗じて利権をむさぼろうとする政治家と企業の思惑が絡まりすぎて、1人の行員が真実を暴いて解決できる問題ではなく、「正論が正義ではない」重厚で多角的なストーリー。途中から「帝国航空」の再生問題そっちのけで、政治汚職に比重が掛かりすぎるのがちょっと気になるところだが。

    善悪が分かりにくいこともあるが、逆にいろんな立場に立って正義と真理を考えられるので、誰に共感するかによっては読後の感想は違ってくるだろう。あの金融庁・黒崎ですら、単なる敵でもない、複雑な立場で登場する。

    今回の半沢直樹の活躍としては、自分自身で走り回るより、その人徳と人脈で情報が集まり、もう駄目だと思ったら、相手が自滅した・・という風に、若干能動的より受動的だ。
    それでも、例の決め台詞も健在だし、相変わらず「最後はいいとこだけ持ってくなぁww」と、役割は果たしている。
    決してハッピーエンドではないが、これからの明るい未来に期待したくなる終わり方だった。
    もしドラマ化するなら、半沢だけでなく、是非頭取の葛藤と「男気」も中心に据えてほしい。
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    投稿日:2014.08.04

  • 政界を巻き込んでますますヒートアップ!

    今回のストーリーは大手企業と政界も巻き込んでその責任は半沢直樹だけでなく
    中野渡頭取にまで及んでくる壮大なスケールになっています。
    この作品、テレビでも大ヒットがあったおかげで、作品の中に出てくる人物も、
    テレビドラマにでてきた、及川光博演じる半沢直樹の同期の渡真利や
    滝藤賢一演じる近藤などが出てきて本を読みながら頭の中でその映像が浮かんできます。
    今回も半沢直樹の怒りがそのまま本を読んでいるこちらに伝わってくるほど
    熱を帯びていて一気に読み終えました。

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    投稿日:2014.08.05

  • ちょっとパワーが落ちたか

    トータルとしてはそこそこ読み応えもあるし、まあまあの出来ではあるのだが、前作の出来があまりに良いのでそれと比べると、で減点。
    今回のテーマは民主党政権下の日本航空再検に題材を取っているのは他のレビュアーも書いているとおり。

    減点した理由。
     もともと「半沢直樹」シリーズが極めてデフォルメ・カリカチュアの側面が大きい作品なのだけど、なまじっか実在の人物をデフォルメして描いているだけに、敵役のキャラクターに心情的な入り込みができにくいというのが問題だと思う。蓑部はどう見ても小沢一郎(+陸山会事件)がモデルだろうし、白井亜希子は扇千景と小池百合子と蓮舫を足して3で割ったキャラだろう。実在の人物をモデルにしているだけに、前作の敵役だった三笠副頭取や第二作の大和田常務と比べても立場・役職ははるかに上のはずなのに小物感が否めないキャラクターにしか描けていない、そこが残念なところ。やはりこの手の勧善懲悪ものは敵キャラに魅力が無いとダメだというのがよく分かる。

    その部分を除けばトータルとしてはまあまあ読み応えのある作品にはなっている。
    続きを読む

    投稿日:2014.08.03

  • 定番の半沢直樹

    期待していた新作、銀翼のイカロス。
    今回の舞台は銀行というより、政治とカネ、スキャンダルの狭間に巻き込まれたようなストーリー。
    相変わらず半沢直樹の存在感は健在で、読破したあとは、スッキリし、ラストは感動しました!

    が、半沢直樹シリーズのお決まりの展開にもうひとひねり欲しかったというのが本音です。
    先が読めてしまう安心感もあるけど、
    もう少しドキドキ感があってもいいかな。
    でも、展開も早いので、あっという間に引き込まれてしまいます。
    過去の3部作を読んでる方は先が読めてしまうので、☆4つです。
    続きを読む

    投稿日:2014.08.15

  • ドラマで観たい

    いつもの様に帝国航空の派閥とひと悶着と見せかけて、いきなり再生タスクフォースという新たな敵が登場。金融庁黒崎をも手先にして政治絡みに攻めてくる相手に苦戦を強いられる半沢。しかしある事から行内、現政権をも巻き込んでしまうであろう不正事実を知ってしまう。

    今回はいつもの半沢節はあるものの、どちらかというと人として社会人として自分がその立場に立たされた時、あなたならどうする?と作者から問われた様な気がした。世の中には黙っている事が美徳とされ暴露する事が誰の得にもならないという論理がまかり通ることがある。その時あなたは前進することをやめてしまうのか、それとも自ら襟を正す勇気を持ってことに当たるのか?と。

    その意味で本作の真の主人公は中野渡頭取だ。終章で件の常務を前に語る「自分たちが本当にやらなければならなかった事」とそれを踏まえた銀行としての結論は予定調和ではありますが重く、読んでいて熱くなった。しかし池井戸小説に出て来るオヤジは相変わらずカッコイイ。脳内変換して読みましたが、読み終わった後本作の中野渡頭取をドラマで北大路欣也がどう演じるのかすごく観てみたいと猛烈に思った。
    続きを読む

    投稿日:2014.10.11

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  • レモン

    レモン

     今度の敵は悪徳政治家と国交省大臣、その私設諮問機関とさらにスケールアップ。徹底的に悪役を糾弾してくれるので気持ちが良い。現実でも半沢みたいな人が出てきて、裏金疑惑やら何やら完膚なきまでに打ちのめしてくれたらいいのに。帝国航空社長は序盤だけの登場でほぼ財務部長が同社の顔となっていたが、再建のための意識改革は現場から自発的に起こってきていたのか。旧Sとか旧Tとか心底下らないと思うが、合併銀行あるあるなのかな。スピンオフではなく続編早く出ないかな。続きを読む

    投稿日:2024.03.15

  • シュン

    シュン

    だいぶ前に、ドラマ版を見ていたが小説も圧倒的に面白い。少々、半沢に都合良すぎな展開な気もするけど、それを補って余りあるカタルシスがたまらない。これぐらい、自分の意見を言えたら人生かわるんだろうなぁ。

    投稿日:2024.02.28

  • Kini

    Kini

    このレビューはネタバレを含みます

    «どこまでも堅実に誠実に。仕事内容に「プライド」を持て»
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ※この物語はフィクションです。実在する人物及び団体とは一切関係ありません


    この一文を再確認しないと、今にも怒髪が天井を突き破りそうな方、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
    私もそのひとりですが、安心してください、フィクションです(再掲示)
    ジョージ・オーウェル先生の『動物農場』を読んだ時にも感じたのですが、(ロシア革命を上手いこと風刺した名作です。)筆が立つ小説家の方は、人の感情を操作するのがほんっとに上手だなと思いました。(拍手とともに)

    本題ですが、今回ガッツリネタバレを含んでおりますので、以下未読の方はご注意ください。

    ━━━━━━━━━━━━━━━
    今回の話は今までの難題のようにひとつひっくり返せば万事上手くいくという訳にいかないのが難しいところだったなと思います。
    根幹の(経営者が)気難しい航空会社の再建のみならず、(むしろここを早々に味方につけられたのは少し意外!)
    折り悪く政権交代をきっかけに絡んでくる議員の皆様、(顔と前職の評判だけで議員を選んじゃダメ!の好例かと。見極め大事ですね。)
    そしてまさか身内にまで問題を抱えていたとは……(組織全体がピンチなのに、自己保身と半沢憎しで身内まで潰そうとする曽根崎と紀本は本当に何なんでしょうね)
    四面楚歌の状況でも、冷静にひとつずつ問題を切り崩していく半沢に、今回も勇気づけられました。全て解決とまではどうしてもいきませんでしたが、これを機に色々な部分が見直され、再建されていけば良いなと思います。

    今回の話を読んであらためて「プライド」というものを考えた時、これは所蔵する組織や立場によって作られるのではなく、自分の行ってきた、あるいは行っている活動内容によって形作られていくものなんだろうなと思いました。

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    投稿日:2024.01.04

  • kozue

    kozue

    作中、富岡さんと誰かさん(はっきり名前が出てこないけど、読んでいればわかる)がサシ飲みしているときの会話で、富岡さんのセリフにハッとするような印象深いものがあった。

    「ただ、欲にも、身の丈ってものがある。身の丈に合わない欲を掻くから、面倒なことになる。人もそうだし、実は会社だってそうだと思いますね。できもしないことをやろうとするから無理がある。結局、そんな会社は誰も幸せにしない。社業もうまくいかないし、社員だってストレスで参っちまう。全ての会社には、その会社に合った身の丈の欲ってのがあるんですよ」(P329)

    この小説に登場するものは、銀行だったり大企業だったり政治家だったりで、なにもそういうTVの向こう側の存在だけの話ではなくて、誰でも一人ひとりの人間にも言えることだと感じた。身の丈に合わない欲は面倒だし不幸になると思う。
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    投稿日:2023.12.21

  • kasaharapapa

    kasaharapapa

    このレビューはネタバレを含みます

    世間に知られることなく、ひっそりと銀行を去ろうとも、この男が生きてきた道のりは尊く、そして光輝いている。そのことを半沢は知っている

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    投稿日:2023.04.07

  • 43street

    43street

    あの、半沢直樹の続編です。
    ※ 「オレたちバブル入行組」 > 「オレたち花のバブル組」 > 「ロスジェネの逆襲」

    JALの会社更生法の適用を題材にして、当時の民主党とか蓮舫とかの悪者を敵に回して、最後に倍返しって感じ。
    今度は、相手が政治家だから半沢直樹も偉くなったなぁ。

    JALは今まで問題が多かったので、よく小節の題材になるよね。
    山崎豊子の「沈まぬ太陽」、横山秀夫の「クライマーズハイ」・・・
    政治と国有会社は、問題有り有りだったんだねって事がよくわかる。

    銀翼の・・・も政治の腐敗を、半沢直樹がバッサリやっちゃうってのは、大岡越前とか水戸黄門とかと同じパターン。
    まあ、単純に面白いわけだ。

    これ、 「ロスジェネの逆襲」と合わせて、TVドラマの企画が持ち上がってるんだよね。
    またまた高視聴率取るんでしょうね。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.30

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