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井上寿一 / 講談社現代新書 (18件のレビュー)
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総合評価:
崩紫サロメ
5
静かに怖い本
「正義人道」を掲げるアメリカが、「力」を行使する国々と戦う。 日本は、アメリカの理念=デモクラシーを共有する国である、という認識。 21世紀の話をしているのではない。 第一次世界大戦後、日本の政治家…や文化人の間で広まりつつあった認識である。 学校教育などでは、第二次世界大戦期の日本の問題点・「異様さ」を強調するあまり、 この頃の日本の雰囲気についてはあまり知られていないように思う。 働く女性が増加する。が、男女差別が存在する。セクハラがある。 同一賃金を求める運動があったり、「婦人専用電車」への要望があったり。 自然科学重視の観点が広がり、天皇は「現人神ではない」と学校で教えられる。 バブルな時代でもあった。 新しいビジネスを起こしたり、株で大もうけをした成金が派手に散財。 教科書にも風刺画が掲載されていることの多い、成金・山本唯三郎。 (↑札束を燃やして足もとを照らしているもの) 彼の奇行はそれだけにとどまらない。 朝鮮半島での大規模な虎狩り、帝国ホテルでの虎肉フルコース、もう何だかすごい世界だ(笑) が、やがてバブルは崩壊する・・・。 広がる格差に対して、欧米のようにもっと積極的な福祉政策が必要なのではないか、 そんな議論が起こったり。 まあ何だか、我々の知っている時代とよく似ている。 しかも、関東で「大震災」まで起こるのだから。 その後、1940年の「東京オリンピック」に向けて復興への努力を重ねていく・・・。 本書はこんなところで終わる。 何となく、背筋が寒くなる。 続きを読む
投稿日:2014.11.06
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tokyobay
明治や昭和に比べると印象の薄い大正だが、ここ数年現代との時代状況の類似性が指摘されている。その大正時代の出来事として第一次大戦を中心に据えて歴史を概観する事により「歴史を学んで、歴史に学ぶ」という趣向…の作品。 政治・経済といった分野毎に叙述するという試みにより、やや冗長になってしまったようにも思えるが、日本にとっては第二次大戦に比べてあまり論じられる事のない第一次大戦が、世界的には大きな出来事であり、日本も世界情勢の変化に巻き込まれていた事が確認できる良書。 幅広く読まれるためには題名はもうちょっと工夫してもよかったのではないかと思うが、講談社現代新書だとこうなってしまうのは仕方ないか。続きを読む
投稿日:2021.11.14
魚雷屋の読書録
第二次世界大戦は。日清・日露戦争と太平洋戦争の間で、日本人にとっては今一つピンこないと思う。「世界大戦」といっても、主戦場は日本から遠く離れた欧州。そして、「大正」時代も15年しかなく、これまた明治…と昭和の間に埋没しがちだと思う。 本書は大正時代を解説するように、外交、軍事、政治、経済、社会、文化の各分野について網羅して述べられている。しかし、概して総花的な記述になっており、記憶に残るような事項はあまりなかった,。ただ「戦後」に国際協調が広がり、国際連盟が創設される。後に日本は国際協調の象徴たる国際連盟を脱退し、戦争への道を突き進んでいくことに。続きを読む
投稿日:2020.11.08
atsuh1024
日本人にとってはあまりよく知らない、第一次世界大戦と日本のつながりについて書かれた本。日本では第二次世界大戦の記憶のほうが鮮明で、この大戦については詳細は知らない、という人が多いのではないでしょうか…。 しかし、日本は英仏米側に連合国の一員として参戦し、戦勝国となり、地中海まで海軍を派遣して貢献したこともあって、戦後発足する国際連盟の常任理事国となります。 この大戦は、日本が国際的に大国としての地位を築くきっかけとなったといえる重要な戦争だったといえます。 本書では、この大戦当時の外交・軍事・政治のほか、経済・社会・文化についても解説しています。文体がちょっと読みづらく感じますが、当時の雰囲気がよく伝わってきます。続きを読む
投稿日:2018.12.26
コロちゃん
それぞれの歴史的記録は詳細なのだが、読んでも今ひとつ面白くない。事実を追いかけるのみで解釈に踏み込みが足りないように思えた。読み切るのが困難。
投稿日:2016.09.04
nari-aki
書名通りの本。 第一次世界大戦と日本の「外交」「軍事」「経済」「社会」「文化」の関係について述べられる。 戦争がもたらした好景気と「船成金」、そして、その反動となる恐慌。経済格差。 翌年の起こる「真珠…湾攻撃」までの記述。しかし、消費文化に勤しむ上流階級の姿が描かれていて空寒い。 第一次世界大戦が「日本」へ及ぼした影響などを知るための良書だと思う。 高校の日本史で習ったことより、更に深く内容を知ることができ有益だった。続きを読む
投稿日:2015.08.25
xaymaca
「日清・日露戦争と第二次世界大戦との間の第一次世界大戦に具体的なイメージがともなわないのは、明治と戦前昭和に挟まれた大正の時代像があいまいなことに関連している。」 第二次世界大戦に向かう戦前の体制に…関して、なぜそうなったのか関連書籍を何冊読み進めていってもよくわからない、よくわからないものをわからせてくれる本を探す旅はまだまだ続いている。 本書もその一環で手に取った。 冒頭に引用した一文、まさにボクの中でもその通りなのである。 第一次世界大戦は学校で習った知識の中では欧州の戦争に日本が東の方からどさくさ紛れにちょっかいを出したくらいにしか思っていない。 大正時代関しては期間が短かったということもあるのだろうが、頭に残っているのは『大正デモクラシー』と『関東大震災』くらいである。 しかし、デモクラシーが成立した時代の後になぜ戦前の軍国主義のような時代がまかり通ったのかに繋がる知識がごっそり抜けているのだ。 著者は言う。 「第一次世界大戦前後の大正時代は振り返るに値しないのか。そうではないだろう。大正と今との間には時代状況の類似点があるからである。類似点を三つ挙げる。」 ・第一は大衆社会状況下の格差の問題 ・第二は長期の経済停滞 ・第三は政党政治システムの模索 「以上の三つの類似点は、大正の新しい〈光〉と〈影〉の時代像とともに、歴史的な示唆を与える。大正時代の日本は光り輝く文明国だった。この時代がモダンで平和だったのは、長期の経済停滞にもかかわらず、経済的な国際協調が基調になっていたからである。」 引用が長くなったが、国内においては上記の3つの類似点の観点で大正時代を中心とした国内の在り方が整理されている。 なるほど、類似という点ではまさに類似していると言えなくもない。 ただ、それよりもボクにとって意外だったのは『経済的な国際協調』、第一次世界大戦の仕組み・枠組み・戦略の違い、この戦争の前後において世界の在り方が変わっていったという部分である。 第一次世界大戦のボクのこれまでの拙い見方は『欧州における列強の戦争』以外の何モノでも無かった。 しかし、この戦争の大義は欧州に限らず、戦後の枠組みも考慮すると『「徳」=国際正義を代表するアメリカと「力」を代表するドイツの戦争だった。「力」は敗けて「徳」が勝った。』という整理の仕方が新鮮であった。 この時代からアメリカの大義は名目上『国際正義』なのである。 実際、戦中から戦後の国際体制の再構築を想定した国際連盟の枠組みが連合国を中心に進められる。 しかも、日本は国際連盟の常連国としてアジアの利益に止まらず、国際協調という新外交の枠組みを忠実に実行し、国際連盟を通して列強の義務を果たしていくのである。 ここまで国際連盟において当時の日本がコミットしていたとは驚きであった。 歴史の教科書では国際連盟脱退は触れられているが、国際連盟での日本の役割についてはほとんど言及されていない。 ただ、ここから先が問題なのである。 国際協調の下に国家戦略を進めていた日本がなぜ、それに反するような道を20数年のうちにたどることになるのか。 その原因は様々なものがあるだろうが、全ては最初に触れた原題との類似点の3つに起因するものである。 長期の経済停滞は持てるものと持てないものの格差を広げ、デモクラシーが浸透し政党政治が機能すると、政党は多数派工作のためにより大衆に阿る政策に傾いていく。大衆に阿る政治はプロフェッショナルを排斥し、大衆の声に阿るアマチュアリズムに傾倒していく。 アマチュアリズムは勢いが過ぎると腐敗を生み、国を憂う高い志はナショナリズムの昂揚で大衆の不満を吸い上げ、力で克服する。 大正から昭和へ向かう時代、このように整理をすると薄ら寒いほど現在の状況に酷似する。 しかし、大衆はそれほど愚かではないという部分をまだ信じたいボクとしては、まだ『なぜ力で克服する』という方向に大衆が熱狂していったのか?という大衆心理についてはまだまだなっとくできない部分があるのである。続きを読む
投稿日:2015.02.08
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