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宮内泰介, 藤林泰 / 岩波新書 (9件のレビュー)
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総合評価:
bookkeeper
1
けっこう鰹節のイメージが変わりました
かつお節に漠然と抱いていたイメージを改めさせてくれた好著です。 伝統食品と言われつつも、庶民の食卓にはいってきたのは割と最近で(こういう食材は他にもいろいろあるかもしれません)、パック入り削り節や風…味調味料の登場もあって今日に至るまで消費量は右肩上がりに伸びています。また日本の南洋進出とかつお節の歴史にも注目です。ミクロネシアの島々に沖縄漁民が移住してかつお節を作っていたとは知りませんでした。続きを読む
投稿日:2014.05.04
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bookkeeper2012
かつお節に漠然と抱いていたイメージを改めさせてくれた好著。伝統食品と言われつつも、庶民の食卓にはいってきたのは割と最近で(こういうのは他にもいろいろあるかも。昔の食はきわめて質素である)、パック入り削…り節や風味調味料の登場もあって今日に至るまで消費量は右肩上がりに伸びている。また日本の南洋進出とかつお節の歴史も知らないものだった。 ・三枚におろした半身から作ったのが亀節。大きめのカツオはそれをさらに背と腹の4枚に切り分けて、そこから作ったのを本節とよぶ。 ・カビ付けも整形もしていないのが荒節。パック入り削り節た風調の原料に。 ・現在と同じようなかつお節が作られだしたのは17世紀終わりごろの土佐と考えられている(原始的なスタイルのものはもっと昔から全国にあったよう)。そこから紀州など日本各地に製法が広まっていった。まずは上方、ついで江戸が大消費地として確立したので、いわば輸出産業であった。明治になるまで、教師を招いてかつお節製法を学ぶ産業振興が各地で盛んであった。 ・焼津は江戸時代からかつお節産地ではあったがマイナーな存在だった。明治になって村松善八(のちに柳屋本店をおこす)が魚商組合を取りまとめて一大産地になった。 ・中西部太平洋海域では一年中カツオの群れが回遊している。そこから一部が四月下旬ごろ黒潮に乗って日本近海へ北上してきて、秋になると逆コースで戻っていく(戻り鰹)。南洋のカツオの方が脂が乗っていないので、花カツオに向く(ホワホワして見栄えがよい)。 ・明治の終わりごろに沖縄、台湾。WW?後に南洋がかつお節生産地に加わってくる。沖縄漁民は、安い人件費のほかに、餌漁もこなす器用さ(本土のカツオ漁民は分業制のためよくやらん)が重宝され、南洋でのカツオ漁、かつお節生産の主力となった。景気がよかったので南洋自体には戦争を除けば良い思い出がある人が多いよう。 ・南洋のかつお節製造業者は、戦争中は糧食としてかつお節を作った。 ・「皇道産業焼津践団」の悲劇。戦争で漁船を供出してしまったので、南洋まで進出してのかつお節製造を狙った。1942年から44年にかけて約620名に登る団員をフィリピン、ボルネオ等に送り出した。約半数が再び日本の土を踏むことはなかった。 ・生産技術の革新、業界全体で取り組んだ焼津で起こる。 1960年、整形に使う削り機械(グラインダー)。熟練の職工が不要になり効率4倍に。 1966年、頭切り機。 ・売り方の革新、にんべんによる「フレッシュパック」発売。1969年。 ・高知、宮城などは衰えていき、枕崎・山川(鹿児島)、焼津が三大生産地となった。 ・ブライン凍結による南洋カツオの原料使用。外国船がつけて入札にかけたり。タイが缶詰生産国なので競合関係。 ・長い試行錯誤を経てインドネシアなどでの現地生産へ。 ・にんべんは業界では別格みたい。品質にこだわる卸。続きを読む
投稿日:2018.11.05
tagutti
<目次> プロローグ 第1章 かつお節は日本の伝統か~たどってきた道 第2章 南陽に向かった沖縄漁民~明治から敗戦まで 第3章 大衆化するかつお節~変わる産地と生産方法 第4章 赤道直下の一大…産地~インドネシア・ビトゥンの80年 終章 つながりあうかつお節ネットワークと私たち <内容> かつお節が我々の口に入るまでをその歴史を紐解いたもの。沖縄という言えば「ソーキそば」。その出汁はかつお節なのだが、沖縄のかつお節の歴史は意外と短く、現在はほとんど生産してない。また「花かつお」も近年の産物とか、意外な話が多かった。 学校図書館続きを読む
投稿日:2016.03.23
あいちゅう
宮内さんは、Folkeなどを引用しつつ、沖縄やインドネシアのおっちゃん達に聞き書きをして、市民調査で、かつお節の調査をしている。恐るべし。
投稿日:2014.11.28
ottersho
かつお節と聞くと、訪れたことのある枕崎を思い浮かべてしまうのだが、東南アジアおよびミクロネシアにまで戦前からその生産ネットワークが広がっていたとは。 @アンマン
投稿日:2014.05.28
乱読ぴょん
たしかこの本が出た頃だったか、新聞かなにかの書評でちらっと見たのだったか、(あ、藤林さんの本だ)と思っていたのに、秋はあれこれ忙しくて、そのまま忘れてしまっていた。ミニコミ「ブックマーク」を元々送って…いた住民図書館が閉館し、その資料を引き継いだのが埼玉大学の共生センターで、いちどセンターを訪ねたときに、藤林さんにもお目にかかる機会があった。 (その後、市民資料は、埼玉大学から立教大学へ移管されて、「ブックマーク」も今は立教大学の共生センターへ送っている。) 年明け、共生センターのスタッフだった方からいただいた年賀状にこの本のことが書かれていて、あ!と思い出した私は、図書館が開く前に、本屋で買ってきて読んだ。 『かつお節と日本人』のタイトルは、『バナナと日本人』や、『エビと日本人』を意識してつけられている。"カツオ・かつお節研究会"という市井の研究会メンバーの多くは、直接・間接に鶴見良行さんの薫陶を受けた顔ぶれだった。"かつお節から世界を見てみよう"と始まった研究会は、帯にあるように、かつお節を追いかけて「300年、4000キロの物語」になったのである。かつお節をたどっていくと、日本と東南アジア・太平洋海域との関係の歴史がみえてくるのだ。 削ったかつお節を透明なパックに小分けにした「フレッシュパック」が世に送りだされたのは、私がうまれたのと同じ年だった。それまでも、機械で削ったかつお節をセロファン袋に入れて売っていたというが、もちが悪く、風味もすぐ失われていた。 「ポリプロピレン・ビニロン・ポリエチレンの三層からなる透明なフィルムと、酸素を除去して窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを封入するガス置換包装という技術の開発によって」(p.130)、風味が損なわれない削り節パックができた。 その簡便さが消費者に受け入れられて爆発的に普及し、かつお節を削る音は家庭の台所から消えたという。私には、削り器でかつお節を削るという記憶がまったくない。かつお節といえば、削ったのをパックから出して使うものだった。 そして、削ったものが主力商品となったことで、かつお節の作り方そのものにも変化が起きた。削って売るのだから、形はどうでもよくなって、荒節のままで削り節メーカーに納入することが多くなったという。かつては、荒節を、削って形をととのえ、天日乾燥とカビ付けをおこなったものが、いわゆる"かつお節"(仕上節あるいは本枯節)だった。 また、削ったときに「花」がふんわりと見た目よく、そして酸化しにくいためには、日本近海までやってくる脂の乗ったカツオより、脂の少ない熱帯海域で獲れたカツオのほうがよいという事情と、カツオ漁業の遠洋化とは、どっちが先かは判然としないものの、歩みを揃えるように進んでいったのだ。 自分がうまれた年にできた削り節パックと消費のあり方が、かつお節のあり方を変えていったという現代史もおもしろかったけど、明治から昭和の敗戦までのあいだのかつお節をめぐる人の動き(とりわけ身軽に動いていく移民たちの姿)と、そこに影響を与えた戦争や植民地という時代状況との絡みも、ふうううーーーんと思うものだった(しかも、この敗戦までの「関係」が、また70年以降にぐぐっと顔を出す)。 「こんにちかつお節を日本に多く輸出しているのはインドネシア」(p.148)で、なかでもかつお節生産のほとんどを担っているのは「ビトゥン」という町だ。インドネシアでのかつお節生産の歴史は、昭和初期から敗戦までと、戦後の空白をはさんで、70年代以降の段階とがある、というのも、ほんとに全然知らなかったなーと思う。 (1/8了)続きを読む
投稿日:2014.01.26
sazuka
たんに日本の伝統だ、という話ではない。産地が広がり、また収縮していく様が想像以上に大きく描かれている。以前、かつお節工場を見せてもらったこともあり、食品としてのかつお節や産地については知っているつもり…だったが、歴史についてはまだまだ知らなかったと痛感した。かつお節は伝統食品的扱いな割に、消費が減っていないのだ、という。「にんべん」という一企業をよいしょしすぎかな、なんて気もするけれど、にんべんの器が大きかったことも、いまかつお節が受け入れられている土壌かもしれないなあ。タイトルから想像するよりも動きが激しく愉快な本。続きを読む
投稿日:2013.12.10
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