【感想】刺青殺人事件~新装版~

高木彬光 / 光文社文庫
(29件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
7
15
5
0
0
  • 近代推理小説の原点に近い作品です。

    昭和中期のベストセラーであり、本格推理の王道ともいえるクラシカルな密室殺人ものです。高木氏の作品では、間違いなく五指に入るでしょう。
    舞台が変転極まりない敗戦直後なので、古臭さはなく、疾風怒涛の空気さえ感じる時代小説として読めるでしょう。そういう意味で違和感はないと思います。
    著者の格調高き文体は、昭和の貴重な文化遺産であり、敗戦の生んだ落としだねの毒の花が咲く様を見事に表現しています。ときに威迫的であり、扇情的でもあり、気づくと、まるで高僧の訓話を聞かされている気分なることもあります。タイトル通り、刺青をテーマにした小説であり、絢爛華麗な極彩色の錦絵が網膜に浮かんできます。
    中盤過ぎに、当時の小説で流行した読者への挑戦状(いわゆる犯人当てクイズ)があり、作者が心魂を砕きあげて作り上げた世界に、読者自身が登場人物として参加することもできます。
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    投稿日:2014.06.16

ブクログレビュー

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  • クークー

    クークー

    名探偵神津恭介デビュー作「刺青殺人事件」。なんとも懐かしく素晴らしい。先日横溝正史読んだら読みたくなったのだ。占い師に小説家に向いていると言われて初めて書いた作品を江戸川乱歩に送り、乱歩に絶賛されて出版された高木彬光の処女作。

    内容はこんな感じ。刺青彫りの名人彫安の娘、背中に大蛇の刺青が彫られた野村絹枝。彼女のもとを訪ねた元軍医の松下研三は鍵のかかった浴室で、胴体のない絹枝の死体を見つける。胴体のないバラバラ密室殺人の謎を神津恭介が解き明かす!という内容です。


    古き良き時代の本格探偵小説の典型といいますか。ワトソン役の松下研三は南方帰りの元軍医で、後に執筆活動も務める、まさにワトソンと同じ。お兄さんが警視庁捜査一課長だから何かと動きやすい大食いで、躁鬱症持ち。神津恭介は松下の一高の先輩で、東大で法医学を研究する何でもできるクールな天才肌。でもホームズのような嫌らしさのないカッコいい男なのだ。

    さらに捜査一課長の松下の兄は、若くして一課長を勤める優秀な刑事だが、ここでは神津の引立て役に徹する。絹枝には常太郎という兄と珠枝という双子の妹がいて、それぞれ蛙と蛞蝓が背中に蠢く。さらに刺青の入った人皮をコレクションする刺青研究家の早川教授など、おかしな登場人物たちが脇を固め、謎が謎を呼ぶ。

    刺青という怪しげな世界を描きながら、華やかな密室を用意しながら密室以外の複数のトリックを絡めて構成される。80年くらい前の有名な作品ですから読んでいてある程度想像はつくのだけれど、世界観やプロット、登場人物の配置の仕方、さらには読者への挑戦状、そして謎解き。往年の本格派ど真ん中で楽しめました。











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    投稿日:2025.02.11

  • ミサト

    ミサト

    見事な大蛇の刺青を背負った女が浴室で殺害される。しかし、刺青を施した胴体だけが消えていた。
    刺青に異常な執念を燃やす博士、大蛇の女に魅了される男達、蛙・蛇・ナメクジの三すくみの呪い、と妖艶な雰囲気に浸れる作品でした。続きを読む

    投稿日:2024.11.08

  • 春霙

    春霙

    ザ、ミステリーを突きつけられた感じ。
    読みやすく、内容も面白いが、どうしてもこの古典的な展開、話の持って行き方が合わなかった。

    投稿日:2024.07.11

  • そーすかい

    そーすかい

    これぞ日本の本格ミステリ。
    呪術的な妖しい香りただよう陰惨な連続殺人、古典的ながら何重ものトリックで演出される不可能犯罪、そしてそれを鮮やかなロジックで暴く名探偵。
    根底のミステリが見事であるのは言うに及ばず、刺青という頽廃的な美の演出が強烈な魅力。刺青の人皮つけたトルソの描写から入るのはずるい。
    そして昔の名のある作家はマジで文章が上手い。特別なことはしてないのに、味わいがあって尚且つ読みやすい。
    完全無欠の天才イケメン探偵神津恭介だが、突然碁を打ちだして相手の人間性を測るとかエキセントリックさもあって良き。
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    投稿日:2024.07.01

  • kouhei1985

    kouhei1985

    背中に大蛇丸の刺青を彫った女が密室となった浴室で殺され、しかもその胴体はどこかに持ち去られていた。明智小五郎、金田一耕助とならぶ日本三大探偵のひとり、神津恭介のデビュー作。(しかしその登場は終盤まで焦らされる)

    刺青に魅入られた医学博士や女の情夫、刺青にまつわる迷信など、戦後間もなくという時代とあいまって妖しく耽美的なストーリー。

    ちなみに、本バージョンは大幅に書き直されて1953年に刊行された改稿版。1948年に刊行された初稿版は、『初稿・刺青殺人事件』として扶桑社より出版されている。
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    投稿日:2024.03.13

  • なぷるぷる

    なぷるぷる

    マジでやられたミステリ リスト作品

    いにしえの単行本を持っていたけど通読する前にやむなく処分してしまった悲しい記憶があるタイトル
    内容についての記憶は全くない
    「イレズミ」じゃなくて「シセイ」

    木彬光作品は「破戒-」「人形-」に次いで3作目
    読もう読もうと思っているうちに積読が角川版、扶桑社版、光文社版、の3冊になる

    読みやすそうな光文社をチョイス

    〜ざっくりあらすじ〜
    刺青を剥ぎ取られた死体が!同様に2人目の犠牲者が!

    〜感想〜
    二十章の構成
    まず第一章から、読んでいて快感を覚えるほどの文章力
    刺青への興味がそそられる

    気づいてしまったが、作中に!は出てくるけど?は無い
    筆者のこだわりか時代的なものか分からないが
    会話文か地の文かを問わず、ときどき読解力を求められる
    ?で終わる文章に慣れきっているんだなと痛感

    十四章のラストで
    「読者への挑戦」きたー!
    犯人と最初の事件の遺体が誰なのかはおぼろげに分かったけど詳細はよ

    そして十五章で神津恭介が本作初登場という完璧な流れ
    ぶっちゃけこの人忘れてました
    研三が探偵役になりそうだったし

    犯人と対峙する場面からの解決語り編
    良いです
    ラストシーンも趣きがあってお洒落感も良い

    解説で高木彬光デビュー作だと思い出す
    天才かよ

    評価点4.5点 辛めで四つ星かな
    続きを読む

    投稿日:2024.03.12

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