【感想】まぐだら屋のマリア

原田マハ / 幻冬舎文庫
(188件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
29
82
51
10
3
  • 南斗最後の将、慈母星のユリアか?・・・いえ、マリアでした!

     出てくる登場人物の名前はキリスト教を由来する事多し(マリア、シモン、マルコ、ヨハネ、ユダ等々)。 しかし、そんなに?宗教っぽくはありません。
     事件に関係して東京から逃げてきた、駆け出し板前が行き着いた最果ての地の定食屋「まぐだら屋」。そこを切り盛りするマリアに受け入れられて・・・。というシチュエーションだと、各章で食事をきっかけに心を解していく、といったベタな食ストーリーかと思いたのですが・・・。 もっと大きな愛(母性?)で包み込むベタベタな、いやいや、王道な話が展開されます。 小さな謎の引っ張り方が絶妙で、つい先へ先へと読みたくなってしまうのはさすがマハ様。
    *作中(題名)のまぐだら屋は魚料理中心の定食屋屋号。さて、その意味は?(微笑)
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    投稿日:2015.10.02

  • 過去の過ちをどうやったら償えるのか

    キリストを愛した一説には娼婦だったとも言われる「マグダラのマリア」とは直接関係はありません(文庫になって表紙が変わってますます宗教色が強い感じにはなってしまいましたが,まったくキリスト教的な話ではありません.)『尽果』という,海辺の街には,心の傷を抱えた人々を受け入れる風土があり,その定食屋を一人で切り盛りするのがマリアです.ある事件から逃れるようにそこにたどりついた紫紋は,マリアのおかげで生きる希望を取り戻して行くが,マリアもまた過去の罪を償えずにいた・・・.
    ともかくぐっとくること間違いなしで是非お薦めします.
    ちなみに,新刊にもコメントを書いたのですが,文庫がでるとまったく跡形もなく消えてしまうんですね.自分の読書記録的な面もあるので,ちょっと寂しいなぁ(どこかで参照できるようにしてほしいなぁ).
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    投稿日:2014.02.20

  • 読者を強烈に引き込む確かな筆力を堪能してください。

    この著者の作品の多くがそうであるように、本作品も原田マハの小説世界に強烈に引き込まれます。

    一文一文を見ても特徴的な文があるわけではなく、どこにこんなに自分を魅了する部分があるのかわかりませんが気付くといつの間にかどっぷり浸かっているという感じです。そして後半にかけての展開力とクライマックスでの叩きつけられるような文の迫力には圧倒されます。

    という感じでべた褒めしてみましたが、本作品に関しては若干読了後にしこりが残りました。この物語では大きく二つの事件が出てくるのですが、その二つの事件の主な原因ともいうべき二人の人物の人間性に不快感を覚えた為です。だからこそこうした事件を起こしたのだと考えるとリアリティーがあるのかもしれません。

    本当に面白い作品を書く作家さんです。そしてこの作品自体も大変面白かったですが、原田マハの作品を初めて読むという人には他の作品から読むことをおすすめします。
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    投稿日:2014.04.19

  • もし全てから逃げ出したくなったら、自分もこの海辺の街に行こうかな・・・

    自分がやってしまったこと、その結果起きてしまったこと。周囲にかけた迷惑や被害。取り返しがつかない行為。もし、その責任に耐えられなくなったら私だったらどうするかな・・・。どこか人の少ない海辺の方に行くかもしれない。でも本当に誰とも話もしない、一人っきりなのは耐えられないから、きっと、ちょうどよい突き放された感が居心地がいいような気がする。この作品は、そんな風にして、自分の行動から逃げ出して、行くところがなくなって、海辺の街にたどり着いて、何となくいついてしまう人達の物語。この登場人物は、ちょっと間違ったらこうなったのは自分だったかもしれないという等身大の状況におかれた人達。読んでいると自分毎としての脱力感や投げやり感を感じるし、こうなったら怖いという肌寒さを覚えることもあった。一方でゆっくりゆっくり心をいやされていく彼らを見守りたい、という読者としての観察者のような感覚にもなる。いろんな視点で登場人物になり変って人生を追体験できる作品。一方読みモノとしては、それぞれの登場人物の過去が次第に明らかになると言うミステリー要素もあって、そのような楽しみ方の質も高いと思う。続きを読む

    投稿日:2014.07.29

  • 受け入れられるということ

    原田マハさんの作品は「楽園のカンヴァス」に続いて2作目なのですが、やはり面白い・・・。
    読み始めると、止まらないです。
    世間を騒がす事件から身を隠すように最果ての地にやってきた男と、彼を暖かく受け入れてくれたワケアリ風の女性。
    聖書にちなんだ名前が続々と出てきますが、宗教色が強い作品ではありません。
    美味しい食事の大事さ。
    自分の居ることを受け入れてくれる存在の大事さ。
    しみじみと感じました。
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    投稿日:2015.01.12

  • 罪の意識

    死を考え,自分とは関係の無い場所まで行こうと,バスに乗って「尽果」という集落までやってきた紫紋。
    東京の一流料亭の板場で見習いとして働いていた紫紋は,後輩を死に追いやってしまったという自責の念に駆られて,ここまでやってきた。そこでふと入った食堂「まぐだら屋」。そして,そこででマリアと出会う。
    ここは,罪の意識に追われた人たちが集まるところ,
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    投稿日:2014.05.10

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ブクログレビュー

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  • がまこ

    がまこ

    このレビューはネタバレを含みます

    合わなかった。
    女性の過去に関する嫌悪感と、自己満足的な言動に共感が全く出来なかった。
    料理の描写は好きだったけど、それでカバーできるほどではなく、何だか嫌な気分になってしまった。

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    投稿日:2024.04.06

  • aaayaaa

    aaayaaa

    アイデンティティが崩壊しかねるような出来事に遭遇しても、自分以外の誰をも責めない主人公の人柄に惹かれました

    非常に美しい描写が細やかに描かれているんだけど、細やかすぎて伝わらないというか…読解力の問題なのか、ダイレクトに伝わらない表現が多くて…
    えっここの心理描写でこうなる⁉︎みたいなのが点在したせいか、感情移入しにくい場面がいくつかありました

    でもそれでも表現されている風景もお料理も本当にステキなお話でした
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    投稿日:2024.03.23

  • じょー

    じょー

    美味しいごはんって本当に人を幸せにするし、時には生きる活力にさえなる。ってのを改めて感じさせてくれる小説でした。

    影のありそうな登場人物たちだけど、町のみんな詮索しない優しい人の集まりだからどんな過去を持ってるのか知らずに物語が進んでいきます。でもそれぞれの抱えるものが大きすぎて…

    そんな中、「待っててくれる人」、「他人だけど家族のような人」、「ふるさと」にそれぞれが支えられながら生きていました。家族じゃないけど、心の支えになってくれる人って貴重だよね。
    携帯電話起動してからは、泣ける泣ける。メールや留守電に泣かされるとは思ってなかった。笑

    そして所々出てくる美味しそうで心が温まる料理の数々。ほんと近所にまぐだら屋できて欲しい。絶対通う!

    余談ですが、最近仕事で疲れ果てて元気なかったのですが、近所の定食屋さんで美味しすぎる料理を食べたらすっかり元気になれました。塩味もちょうどよくて、野菜たっぷりで、デザートなんて美味しすぎておかわりするところでした。インスタントラーメンやジャンクフード食べてた時より何倍も幸せになりました。美味しいご飯はほんと大事。
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    投稿日:2024.03.17

  • momo

    momo

    このレビューはネタバレを含みます

    贖罪と赦し、母による受容がテーマになっていると思う。

    重い話がありながらも全体的に読みやすく、読後感も悪くない。紫紋の母親からの留守番電話では泣かされた。
    だが、振り返ると納得しづらい点もいくつかあった。

    マリアと女将の再会のシーン
    女将側から見れば、マリアは憎み続けるべき存在だったが、最後には与羽の元から戻ったマリアによく帰ったと言う。マリアを娘と孫を奪った悪魔としてではなく、長年自分に寄り添ってきた一人の人間として受け入れたのだと思う。ただ、見ようによっては女将はマリアに付きまとわれて常に憎しみと悲しみを思い出させられていたとも言える。最後に赦しを与えるのは女将の本望だっただろうか。女将はマリアを赦さなくてはいけなかったのか。マリアの贖罪は自己満足的に思えた。
    また、マリア側から見た場合、マリアが女将を思わず母と呼んだことに違和感がある。マリアにとって女将は罪を償うべき相手で、女将のことを心配しながらも絶対的な上下関係をもって接していた。そんな女将のことを母のような存在と思うのだろうか。
    紫紋や丸子の母は無償の愛を与える存在として描かれている。実の母親からの愛情を感じられなかったマリアにとって、自分に故郷を与えるきっかけとなり、長年受け入れてほしいと乞い願った対象として女将に母親の像を抱いたのか。
    マリアによって子と孫を失った二人の関係を考えると、女将に対して残酷なシーンだと思った。

    また、春香はどこまで計算的だったのだろう。読めば読むほど「ずるい」で流せない悪質さを感じた。
    ・不倫が報われないことで告発を決意したのであれば、悠太に対して純粋な恋愛感情はなかった(不倫相手に未練があった)。悠太との付き合いは寂しさを紛らわしたいというものだったのか、告発の共謀者になることまで期待していたのか。
    ・紫紋に悠太との関係を話さなかったのは、紫紋からの好意を利用しようという意図がなかったか。話の深刻さにそぐわない白いショートパンツを選んで履いてきたことにも、女としての自分を意識していたのでは。
    ・一人になりたくないと紫紋を誘ったのは、自分を待つ悠太の存在を一時的に忘れるためでは。本当に誰かと一緒にいたいだけなら、悠太と会い、自殺をやめようと告げることもできた。約束の21時に紫紋に抱かれながら、悠太が一人で自殺してしまう可能性が頭を過ぎらなかったか。

    綺麗に話をまとめるために、特に女性登場人物たちが共感しづらい行動を取ると思った。

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    投稿日:2024.03.11

  • 唯の凡人

    唯の凡人

    生きることはとても苦しいことだ。死にたいのか、生きることから目を背けたいのか、死は最期の逃げ道であり切り札であり権利なのだと思う。心の置き場所が無くなって、自分を待つ誰かがいることを信じられなくなって。それでも、出汁の香りは、カレーの匂いは、ご飯が炊ける音と胸いっぱいに広がる甘い空気は、生きることを思い出させる。どんなに苦しくても腹は減り、飯はうまいのだ。飯がうまいということは、生きているということなのだ。
    みたいなことをぽつぽつと考えさせられる物語。
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    投稿日:2024.02.28

  • り

    美味しそうな料理と穏やかな地元の人に囲まれた今と、その裏に隠された凄絶な過去の描写の対比が凄い。
    現在と過去が交互に出て来るところもその対比を際立たせ、解説にあるように何か寓話的なところとリアルがうまいバランスで両立していて、とても引き込まれて一気に読んでしまった。

    どんなに辛いことがあっても、逃げていては何も始まらない。自分のペースで良いから前を向いて食いしばりながらも出来ることをしていくしかないし、そうすることが償いにもなるということ。

    事情を聞かずに全てを受け入れるということと、美味しくあたたまる料理の存在は、弱っている人には一番の薬だな。そういう人が突然目の前に現れたら、自分も同じようにしてあげられるだろうか…そんなことも考えた。
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    投稿日:2024.02.16

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