【感想】アジア新聞屋台村

高野秀行 / 集英社文庫
(51件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
13
25
9
1
0
  • アジアの多様性とバイタリティ

    アジアといっても東アジアと東南アジアの色々な言語と日本語で発行される月刊新聞(在日本)の、編集顧問兼ライター業を通じた、著者自身の成長物語です。アジアの多様性・バイタリティ・つかみ処の無さを「屋台村」と表現し、本書のタイトルとしています。

    いちおうフィクション(小説)とのことですが、著者の実体験がベースとなっているのでしょう。演出はあるにせよリアリティしか感じませんでした。

    評者は東南アジアで仕事をしているせいか、頷くところが多く、多くの示唆を得ました。
    日本および日本人の立ち位置も、本書の中でうまく表現されています。堅苦しくない形で、文化比較論(評者にとって最も興味深かった点)も展開されます。

    本書を読みながら、会社や組織という器を失ったときの日本人の弱さが、どうしても気になり考えさせられました。今まで、一個人としての底力や真価は、組織を離れて初めて発揮されるものだが、環境が整った日本では機会に恵まれない、くらいに認識していましたが、そう単純でもないことが分かりました。

    日本的なモノの強みと弱みは、どっちがいいとか、どうすればいいとかいった話ではなく、表裏一体で不可分ということかと思います。が、どんなことも過ぎたれば及ばざるが如し。

    本書は、日本人が普段意識出来ない次元での「個人としての自立」を自覚させ、促してくれます。
    個人としての生命力を取り戻すには、もっとワガママでもいいんだと背中を押されたい方に、是非読んで欲しいと(自省を込めて)思います。
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    投稿日:2015.04.28

  • 笑顔でヴァイタリティのある人々!

    ひと昔前のお話かもしれませんが、また一面ではあるでしょうが、新大久保周辺に集うアジアの方々の状況が活き活きと描かれており、引き込まれました。
    ブレーク前の高野氏の甘酸っぱい成長物語でもあります。

    投稿日:2015.04.12

ブクログレビュー

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  • masaru3

    masaru3

    タイ人にインタビューしようと連絡先を聞いたらカンボジア人で、実際にあったらラオス人だったみたいなエピソードが高野秀行作品で一番笑った

    投稿日:2023.12.14

  • geluro

    geluro

    最高。なんか、泣ける。

    高野秀行氏と言えば、いつも無茶苦茶なことに自ら突っ込んだり時に巻き込まれたりして大変な思いをしつつ、それを面白さに変換しながら、やりたいことをやって、したたかに生きる人だ。
    簡単に言えば、自由で柔軟な人。読者は、そこに憧れるんだと思う。ほんとうは私だってこんなふうに生きてみたい、と。

    本書は、著者の自伝的一冊で、タカノ青年があるアジア系新聞社"エイジアン"で働くことになった数年の顛末を描いている。スタッフはほとんどがアジア系のメンバーで、著者以上に自由でしたたかで驚くほどいい加減である。そもそも読者にとって高野秀行氏こそがもっとも変で魅力的な生き物であるのだが、この新聞社には、彼を圧倒するパワーと奔放さを持ったさまざまな人々が集まっている。あのタカノ青年が、振り回されっぱなしである。エピソードのすべてが、日本の会社ではあり得ないもので、普通の日本人ならついていけないものばかりだ。だがそこにタカノ青年は魅力を感じ、新聞づくりに奔走する。

    タイトルの"アジア新聞屋台村"とは、この新聞社を指すもの。屋台村のように、それぞれの特色を活かしたさまざまの料理を提供する。ある料理が不評ならすぐにやめて別のものを出す。客が少なければ座席を減らすし、増えれば拡張する。自由で柔軟である。
    だからこそ発生してしまう、ヘンテコな状況を彼らはどう切り抜けるか?見事と言うほかない無茶苦茶さとしたたかさに、読者は爆笑しながら時に涙することになる。
    全六章プラスエピローグからなる本で、もう全編最高におもしろいのだが、とくに第六章の盛り上がりはグッとくる。エピソードの強さに目が行きがちだが、それを生かす著者の筆力があってこそである。渦中にはまり込んで右往左往したあと、それをちゃんと検証し直す冷静さがある。その冷静さこそが、"なんか泣ける"奇妙な味わいを生んでいると思う。
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    投稿日:2023.09.26

  • 充実大豆

    充実大豆

    エネルギーに溢れたアジア系新聞社での成長物語のような小説。

    出てくる人たち全員の行動力とエネルギーがすごい。
    作者の視点でみると外国人だからというよりは、その人の個性なんだなと感じる

    投稿日:2023.07.02

  • kumapooooo

    kumapooooo

    小説ってことだけど、なんだか妙にノンフィクションっぽいよな。。多分にリアルというか。
    しかしアジアって妙に入り混じってるよねぇ。ここにモンゴルとかインドか入れたら更に発散しそうで。そういうゴチャゴチャ感を適当に感じ取るのが吉。
    しかしこの本が出てから20年。長いか短いか分からんけど、ミャンマーにしても台湾にしても、どんどん変わっていってて、まぁアジアもまだまだ変化しそうよね。
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    投稿日:2023.05.21

  • nobwow

    nobwow

    日本社会ひとつの視線で見れば、『迷惑な外国人/日本に馴染まない人々』なんて乱暴な言葉でまとめられてしまいそうな人々も、高野さんの目を通してしまえば、その振る舞いの必然や人間性に滲む母国の文化や出自が、多くの国に自らが身を置いた人ならではの解像度で見えてくる。在野のグローバリズムの擬似体験のみならず、高野さんの成長譚も甘酸っぱくて最高だった。
    小川洋子さんの解説も素晴らしい。
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    投稿日:2023.04.26

  • きーちゃん

    きーちゃん

    私はかつて、新大久保でほぼ中国人だけの企業に勤めたことがある。その時は随分、なんじゃこりゃ!?な経験があったのでこの本もどこかで、そうだろう。と思って読み始めた。読み始めたら私がその会社で遭遇したことはまだ可愛い方で、著者の働いていたエイジアンはその何倍もなんじゃこりゃ!?で、斜め上を行きまくっててカオスだった(笑)読みながら私も何度、椅子から転げ落ちそうになったことか(笑)

    日本社会、ひいては日本企業で通じることはいっさい通じない、ルールも何もあったもんじゃない。なのに成り立つのだから、ひぇー!!!である(笑)
    だけど、読み進めていくうちにそこで働いている多国籍なメンバーが自分勝手というよりも、他人や会社のためではなく自分のために働いていたり、エイジアンを襲った危機にもグラつきもしない。そんな逞しい姿を読んだ時に、この姿こそ今のこのご時世で日本人が見習う姿ではないか!!!と強く共感した。
    そしてこの本に出てくる登場人物は1人1人、個性、キャラが立っているので読んでて本当に楽しくて面白かった。
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    投稿日:2022.11.27

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