【感想】女の一生

モーパッサン, 永田千奈 / 光文社古典新訳文庫
(29件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
9
11
6
1
1

ブクログレビュー

"powered by"

  • オオタニ

    オオタニ

    あまり人生をつんでいないからわからないけど、人生ってこんなものだよな。
    ジャンヌの描写が、時を経るにつれて、すぐ数年後とかになって時間的な解像度が減ったり、過去を振り返るシーンが増えていったり、またジャンヌの目に映る景色や日常の風景も暗く薄いものとなっていくのが印象的だった。逆に、前半部分の無垢なジャンヌが人間の悪意や俗っぽさに触れていくにつれて失望していくシーンが読んでて辛くなったりすることもあったが、逆に自分がこの先こういった体験をしていくのかなとも思った。
    一般的に歳をとると人間は錆びついてきて、空虚な日々を過ごすのだなということは分かっていたが、そういった認識に現実感を与えてくれるような作品だった。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.12

  • ちゃんさお

    ちゃんさお

    ジャンヌは自分のことを清廉潔白だと思っているけど、全然そんなことはない。少女のころから人の容姿や喋り方を陰で笑い者にしたり、金遣いが荒かったりと、同情できない部分は多い。
    それなのに、自分以外の人はみんな悪魔みたいに汚いと思いこんで勝手に悲劇にはまりこんでいるのは滑稽だ。
    と、思ってしまいます。

    現場の光景が目に浮かぶほど細密で写実的な表現は当時の人々に衝撃を与えたのでしょうが、モーパッサンは、さらに人間さえも「風景の一部」のように考え、光と陰の部分すべてをひっくるめて活写しようとしていたのでは、と思いました。

    だからなのか、主人公に共感するというよりも、神から見た1人の女の観察日誌を読んでいるようで、不思議な読後感がありました。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.24

  • lho

    lho

    ジャンヌ結婚までの流れが早すぎて、残りページ数を考えても、悲劇が起きる予感はしていた。

    ジャンヌがジュリアンへの愛が揺らぐシーンから雲行きが怪しくなっていった。新婚旅行でチップをあまり渡さなかったり、急に態度を変えたり。

    夫婦の仲がだんだん冷めていく様子がリアル。ジュリアンの行動がいちいち蛙化現象を誘う行動なの勘弁してくれ…

    ジュリアンもポールも控えめに言ってゴミクソ。ただ、ジャンヌの不幸を引き立てているという意味では一役買っている。

    虚無な生活とはおそらくこういうジャンヌのような生活を指すのだろう。しかし、最後の最後でポールの赤ちゃんを連れてきたロザリのセリフからは、ほんの少しだけ希望が見えた気がした。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.29

  • あみちゃん♂

    あみちゃん♂

    「いわゆる女」の一生ではなく、「ある女」の一生。取り違えると気分を害しそう。「いわゆる貴族社会」における「ある女」の一生、という感じか。
    貴族の中で主人公の人生が、とりわけ波乱万丈、とりわけ不幸なのかどうか自分にはは分からない。ただとりわけ純粋だったのが、ある意味不幸だったのかも。
    自分も含め、今の時代日本人からは想像もつかないほどの教会の力、貴族のしきたり。固定観念や既得権の怖さを思い知る。
    はて、最後に息を引き取るとき、彼女は幸せだったのか。そこは本人にしか分からない。
    続きを読む

    投稿日:2022.11.23

  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    このレビューはネタバレを含みます

    夢あふれる貴族の少女ジャンヌ。幸せな結婚に恵まれて順風満帆に進んでいくかと思われた人生航路だが……。

    世間知らずで受け身な女性主人公に、あまりにも男運がないとこうなる、というようなペシミズムあふれる一作。下世話な展開が興味を引くのと、ノルマンディーという舞台のゆえなのか風景描写が魅力的で、非常に読み応えがある。吝嗇すぎる夫と借金を重ねる放蕩息子の対比、夫にも息子にも恵まれたロザリとジャンヌの対比が、人生の真実の一端を見せてくれたと思う。

    自らの不幸を宿命や運命のせいにし、生きる意欲を失うジャンヌを、ロザリが叱りつけるシーンが印象深い。年をとってもあまりに世間知らずなジャンヌに読者としては幻滅してしまうが、金の無心ばかりする息子を溺愛する姿は悲しくて責められない。夢破れて失望のままに生きる彼女の最後のよすがなのだ。いっぽうで夢を見ることさえない身分であったがゆえに、夢破れることもないロザリの堅実さ。女の一生とは、と考えさせられる。そして、最後の一文が深く胸にしみた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.11.14

  • あやか

    あやか

    受け身で悲しい女の一生。
    モーパッサンは絶対に女性だと思ったが、男性だった。
    思春期の女性が感じる、訳もなく心がときめく瞬間の描写が女性的ですばらしい。

    投稿日:2022.04.07

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。