【感想】闇の奥

コンラッド, 黒原敏行 / 光文社古典新訳文庫
(59件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
10
18
17
3
0
  • 心の闇

    マーロウは、帝国主義時代のベルギーが支配するアフリカ奥地コンゴを訪れ、そこに君臨するヨーロッパ人クルツと会います。

    クルツは、その強靭な声や偉大な精神によって近くの集落の原住民たちの心を完全に掴まえていました。原住民たちにとってクルツは神のような存在になり、反抗することはできなかったのです。クルツは原住民たちを自分の欲望の手段として使い、彼等を従えて近隣の集落を襲っては象牙を略奪しました。クルツが権力、性、暴力、富、あらゆる欲望を追求し、そして、自らの王国を築こうとしたことが窺い知れます。

    いったいクルツの身に何が起きたのでしょうか。アフリカの奥地、完全な静寂の中でただ一人自分と向き合うしかなくなったとき、心の奥に潜む自己の欲望に気づいて、それに身を任せてしまったのではないでしょうか。制するもののない地で、自分自身の欲望を解放させたのです。名声、栄誉、成功、権力。一切の欲望が恐ろしいほどの強烈さで、自分の心の上だけに集中されていきました。有能で偉大な人物であったが故に、その荒廃ぶりも凄まじかった。道徳や誠実さといった人間的なものは失われ、ひたすら自我を満足させることだけに集中される生です。それはもう人間とは言えないのかもしれません。アフリカ奥地の原始的な環境("Heart of Darkness":原題)の中で心の中の原始的な感情("Heart of Darkness")に身を委ねてしまい、身を滅ぼしてしまったのではないでしょうか。

    この悲惨さはクルツに特有のものではなく、人が共通して持っている心の闇ではないかと、作者コンラッドが語り掛けているように感じました。
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    投稿日:2016.03.12

  • 有名だが

    クトゥルフ系の古典にハマっていた時に一度読み、今回「Spec Ops the line」というゲームの原作という情報を聞いて再読しました。
    翻訳は丁寧で話はわかりやすいです。密林の雰囲気などもよく書かれています。
    ストーリーとしては「クルツが何故密林の闇に魅入られたのか」みたいな終わり方ですが正直オチがないです。
    古典研究として読む分にはいいと思いますが、闇の奥に影響を受けそれをさらにブラッシュアップさせた後世の本は沢山あるので、エンターテインメントとしての過度の期待は注意です。
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    投稿日:2018.09.12

ブクログレビュー

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  • りおん

    りおん

    このレビューはネタバレを含みます

    想像してたより読みやすかった。
    200ページもないしこざっぱりしているけれど、突き詰めて考えると色々と考えられる話。

    クルツが話す場面はそんなにないもののひとつひとつの台詞のインパクトが強かった。
    『正しく生きて、死ぬ、死ぬ……』
    『私は闇の中に横たわって死を待っている』
    『怖ろしい!怖ろしい!』
    など。

    婚約者に『彼が最期に口にした言葉は──あなたのお名前でした』と嘘をつく場面も胸にくるものがあった。

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    投稿日:2023.11.18

  • mtsrs

    mtsrs

    素晴らしい翻訳で熱帯のジャングルの人を寄せ付けない世界の出来事とそんな世界が生み出した人物の難解な物語を一気に読ませる。物語は夜更けのテムズ川に浮かぶ船の上で船乗り仲間にコンゴ川での経験を振り返って語るという、語りの形式で、マーロウの語りを聞いている人物が小説の中にも存在していて、語りを聞いている人物が主体となっている入れ子的な構造。ほとんどの部分はマーロウが主人公の視点となっているが、あえてそれを客観的に聞く人物を儲けることでアフリカでの出来事が幻のように遠い世界の話に聞こえる効果もある。
    クルツがどのような存在なのか。これはほとんど暗示的に示されるばかりで善か悪かも判然とはしない。かつて優秀で優れた人格を持っていた人物のように見え、アフリカの奥地での生活が彼を変えたというのではあまりにも単純に感じる。クルツには人間の本来持っている可能性の極端さが表れているのかもしれない。「怖しい、怖しい」というのはそんな人間の本質への怖れなのか。というのも浅薄か。
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    投稿日:2023.03.04

  • chacha0311

    chacha0311

    すごい話だなあとは感じるのだ。
    がしかしそれを面白く思えるかどうかは別物。
    私にはこの小説のユーモアは一切感じとることはできなかった。
    ただ、そこにあるのは人の愚かさと欲望と死と汚れで、それらをエサにして、完全に包み込む圧倒的な闇。
    光は欠片もない、つまりはそこに神はいない。
    映画、地獄の黙示録の原作らしい、さもあらん。
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    投稿日:2022.12.03

  • のりぴー

    のりぴー

    未だにわからない
    「The horror! The horror!」だけが入ってくる

    この作品を理解できるだけの人生はまだ自分は経験してないなぁ

    余談だが解説が長すぎる!

    投稿日:2022.07.19

  • こんぐ

    こんぐ


    濃密な文章で読みやすくはないが、そのおかげでアフリカの奥地の猥雑な雰囲気が伝わってくる。
    文明からかけ離れた未開の地に足を踏み入れることは、想像を絶するような体験なのだろう。正気を保てず狂ってしまうほど。怖しい!続きを読む

    投稿日:2022.01.08

  • おさるのかごや

    おさるのかごや

    映画「地獄の黙示録」の元ネタとなった小説です。映画はあのカーツ大佐が水の中からヌーっと顔を出すシーンが印象的でしたが、よくわからなくて退屈だった思い出があり原作を読んでみました。こちらは普通に楽しめましたので、映画もまた見てみようかなと思います。?続きを読む

    投稿日:2021.11.18

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