【感想】さよならソルシエ(1)

穂積 / 月刊flowers
(144件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
48
50
27
2
1
  • イメージを覆されるゴッホ兄弟

    炎の画家フィンセント・ファン・ゴッホと、その弟で画商のテオドルスの絆を描いた全2巻。
    兄フィンセントの没年から5年前の1885年から物語は始まりますが、1巻で描かれる二人は、弟のテオは自信家で傲慢な性格、兄フィンセントは怒りの感情を持たず絵をかいていられれば満足な温和な性格。ここで、ゴッホの生涯や書簡集での兄弟のやり取りを知っている人は「ん?」と思うはず。
    2巻で上記の謎を解く鍵となるのが、テオの天才的頭脳とフィンセントの人の心を揺さぶる絵画の数々です。2巻ラストでの展開には思わずうなってしまいました。
    昨年の「式の前日」での2位ランクインに続き、今年はこの作品で「このマンガがすごい2014オンナ編1位」となってます。この人のストーリーテリングの上手さは本物です。
    読んで損はないと思う!!
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    投稿日:2013.12.11

  • 作者がソルシエ!(笑)

    炎の画家、と呼ばれたゴッホとその弟・テオを題材とした2巻完結の漫画。
    こういうのは、別に予備知識なく読んでも面白いものなのだが、これについてはウィキペディアでも何でもいいんで、ゴッホ兄弟について、予備知識を仕込んでおいてから読むことを強くお薦めする。
    そして、何より1巻だけでやめないこと!

    何故かというと、この話のゴッホ兄(2巻表紙)は、一般に知られる狂気の画家とは全然違う。
    天才的な画才を持ちながら、それ以外は至極平凡。
    それに対して画才以外のあらゆるものを持っている感じの弟テオ(1巻表紙)は激しい嫉妬を感じながらも兄を全力でサポートする。
    うーん???
    悪くはないけど勿体なくないか?割とよくある話ではないか?
    というか、何で非凡な人の人生をわざわざ平凡な方向へ?
    もしかしてテオを主役として引き立てるため???
    うーん???史実と違う以前にそれは作品として成功しているのか???

    …と思っていたのは1巻のことだったが。

    2巻後半で怒濤の展開が!
    何故作者が、兄を敢えて平凡な方向にしていたのかが明らかになるのだ!
    これは、想定外の展開だった。
    有名な自ら耳を切り落としたネタとか、どこでどんな風に出てくるんだろう、
    ゴーギャンとの関係はどう描かれるんだろう、つか、ゴーギャンまだ?とそわそわしながら待っていたら、
    こんな形で持ってくるかー!?
    …という面白さがあるので、一般的なゴッホ兄弟像を持っている方が良いと思ったのだ。

    もちろん、ストーリーとして自然かというとちょっと強引だ。
    だが、手品が手品であるとわかっても、それがあまりに鮮やかであると、
    魔法にかけられたような不思議な満足感がある。
    そして、このタイトルに納得する。

    さよならソルシエ(魔法使い)

    テオをソルシエとして描いた作者。
    私からすれば作者がソルシエだ(笑)
    これからも、不思議な魔法をかけ続けてほしい。
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    投稿日:2014.11.13

  • あれ?ゴッホの話だよね?

    これは確かに2巻セットで読まないと何の意味もなさないお話ですね。1巻ずつ別売りするのを禁止すべきです。2巻の途中からまさにソルシエ(魔法使い)!「うわっ、こうくるのか!」と驚愕すると同時に納得もさせられました。

    というのも芸術というのは何を創作したのかではなく、誰が創作したのかが金銭的な価値という意味では重要視されるからです。そして金銭的価値=作品の評価となるのが世の常で、それは偽りざる真実の一端です。仮に直感的にこれいいなと思ったとしても、そうそう高いお金を出しては買わないし、評価もされづらいですよね 。

    まずは見てもらうこと、そしてその作品に込められた想いを伝えることが必要で、全部がそうとは言いませんが、その為には芸術作品そのものの価値よりも、付加価値こそが重要だという、芸術に対する皮肉もこの作品には含まれているのではないでしょうか?

    私自身、後期のゴッホの作品のあの荒々しいタッチを生で見た時はその迫力に素直にすごいと感じましたが、その絵がゴッホの名前や来歴を知らず、美術館にも飾っておらず、その辺の露店で売っていて、たまたま目についたとしても、きっと普通にタッチが汚い絵だなあと思うのでしょうね。それともすごいと思えるのでしょうか?思えるといいな。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.16

  • 体制は内側から壊すほうが面白い

    このマンガがすごい!2014オンナ編1位の作品です。
    舞台は19世紀末のパリ。
    生前はほとんど評価されなかった天才画家ゴッホと、その名を高めた画商の弟・テオの物語。
    革新的で挑発上等!
    パリ画壇に風穴を開けようとするソルシエ(魔法使い)テオのふるまいが魅力的に描かれてます。続きを読む

    投稿日:2013.12.14

  • 2巻とも続けて読もう

    第2巻がなかなか電子化しなかったので放ってしまった人が多いかもしれない。

    正直、1巻読んだ時点では何が描きたいのかよく分からなかったけど、2巻まで続けて読むとようやく作者の意図が明らかになり膝を打つことに。

    ランキング1位に値するかどうかは分からないけど、ゴッホに興味があるならこういうのもあるよと言う意味でおすすめ。ラストは以外にも泣けます。
    続きを読む

    投稿日:2014.04.29

  • ゴッホってほんとは????

    絵画などまるで縁のない私、細野不二彦さんのギャラリーフェイクでひまわりのお話が印象に残っていたのとゴッホなのに何故ソルシエ?
    そんな興味からはじまりました。
    ゴッホとはずいぶんホワホワした方だったのですね。
    耳切り事件とか怖いイメージでしたのに。
    ソルシエの偉業、素敵な兄弟愛お楽しみ下さい。
    続きを読む

    投稿日:2014.04.06

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ブクログレビュー

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  • maiaki

    maiaki

    「式の前日」からずっかりファンになった穂積さんの作品。
    絵がとにかく好き。
    そして、ゴッホの死についてこんなに謎があるなんて知らなかった。
    登場人物たちが生き生きしていて魅力的だった。
    2冊で終わってしまったのがもったいない。
    もっと読んでいなかった。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.07

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「フィンセント・ヴァン・ゴッホと、画商として知られるその弟テオドルス・ファン・ゴッホをモデルにした漫画。美術アカデミーに認められたものだけが芸術であり、そうして認められた作品が上流階級にだけ受容される時代に、人々が生きる日常を描いた作品をどのように広めるかで苦闘するテオドルス。大きく史実から離れた作品なので好みはわかれるかもしれませんが、フィクションと割り切って読めば面白い!!」
    (『中高生のための本の読み方』大橋崇行 p.98 美術館のススメより)
    続きを読む

    投稿日:2023.09.26

  • まあ

    まあ

    このレビューはネタバレを含みます

    そー言えば、家にこれあったなーと思って改めて読んだ。

    フィンセント・ファン・ゴッホの弟、テオが主人公の話。
    絵画に詳しくない私的には、難しいなぁと思いつつ、
    最後の一コマに、ヤラれたー!

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.02.15

  • 佐々木葵

    佐々木葵

    芸術にはうとい私でも知るいわゆるゴッホなイメージからはかけ離れたゴッホくん。
    このあとどう進んでいくのか楽しみです

    投稿日:2021.02.13

  • 亞綺羅

    亞綺羅

    19世紀の美術界の傾向が垣間見れる。古い既存の様式に縛られたアカデミズムにアンチテーゼを突きつけ、“新しい芸術”を興そうとする若い画家たち――後に印象派と呼ばれる――の活動を、画商の視点から描く。
    ィンセント・ファン・ゴッホの弟である、画商のテオドルス。
    それまでアカデミズムや貴族階級に限られていたイメージの芸術を、民衆(労働者)のための芸術の胎動に気づいた青年の、魔術師(ソルシエ)のような手腕が痛快。
    対抗意識を持つアカデミー画壇から展覧会に使うギャラリーを使えなくなる嫌がらせを逆手に取り、印刷を駆使して街に配布したり……

    その中で、今まで持っているゴッホのイメージと異なるゴッホが現れる。どこかぼんやりして(間抜けそうで)いながら洞察力に優れ、純粋に絵を描くことが好きな青年。
    彼は労働者の生き方、等身大の庶民的な人々の生き方を映し出す。
    それまでになかった、“新しい芸術”の黎明期にワクワクしながら、ただよう不穏な空気――アカデミー画壇との対立やゴッホ兄弟にある愛憎のようなもの――にハラハラさせられる。
    サスペンスのような雰囲気のある、伝記フィクション。

    2013年の『ゴッホ展』に因むのだろう。
    2019年にもまた、『ゴッホ展』( https://go-go-gogh.jp/ )がある。
    続きを読む

    投稿日:2019.09.16

  • かおるひめ

    かおるひめ

    ゴッホのイメージ、弟のテオのイメージを覆す!
    天才的で反骨精神溢れるテオ、
    絵の申し子のフィンセント。
    パリで再会したした二人を取り巻くのは、
    旧体制の美術関係者と新しい美の担い手たち。
    怜悧でまさに魔術師のようなテオには、
    新しい美の時代が見えていた。
    「ゴッホからの手紙」を読んだ身には
    驚愕のストーリーでした。
    続きを読む

    投稿日:2017.10.17

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