【感想】雨の塔

宮木あや子 / 集英社文庫
(80件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
15
24
22
9
1
  • 少女たちの選択。

    女子校が舞台の『少女小説』は何作か読んだことはあるのですが、本作は少し違った印象を持ちました。

    岬の先の隔絶された学校。螺旋階段のある塔の寄宿舎。それぞれに違った事情を抱えた4人の女の子たち。物語に登場するのはほぼこの4人のみ。学校が舞台ならクラスメイトや教師等が出てきそうですが、全く描かれず。そのせいでしょうか、学校というより、ひどく特殊な場所が舞台のようです(リアルとは程遠い学校ではあるのですけれど)。

    ひたすら閉ざされた空間で、4人の心象が交差し、語られていきます。
    実は初読なのですが、百合的な場面もあります。BLとは違うドキドキ感ですね。(でも、私はBL的に『お父さんと秘書』の関係も気になる。)

    煙るような雨の風景と、雨上がりに水面に光を映す海、そして甘いお菓子の香り…。永遠に続くかのような時間は、それぞれの選択によりあやうく崩れていきます。
     
    去ることも、留まることも切ない、永遠の終わり。
    不思議な読後感の物語です。
    続きを読む

    投稿日:2014.01.31

  • 現実と非現実

    舞台化の知らせで本作を知り、初めて宮木さんの作品を読みました。

     私自身、現実の女性の気持ちをよく理解できないことが多いし、同性愛的な感情にも興味がないのですが、本作の登場人物の気持ちの動きは何故か理解できる(と思う)。設定自体は非現実的だけど、人としての心の動きの描写は案外現実的なのかもしれない。惹きこまれてあっという間に読了しました。

    本作を、あの役者さんたちがどう演じるのか、想像すると舞台が本当に楽しみです。
    原作の宮木さん、配役を決めた「雨の塔」製作委員会に感謝です。
    続きを読む

    投稿日:2021.03.05

ブクログレビュー

"powered by"

  • いりあ

    いりあ

    宮木あや子が2007年に発表した長編小説の文庫版。最初期の作品の一つです。資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大に「捨てられた」4人の少女の出会いと別れを描いた物語です。学校の敷地内、登場人物は4人という限られた舞台の中で濃密な時間が流れます。物語自体は淡々と進みますが、全体の雰囲気が素晴らしいです。ただし悲劇的な結末が苦手な人はご注意を。4人の行動や心情がかなり細かく描写されていて分かりやすいはずなのですが、誰が誰か分からなくなる瞬間があります。あえて人物の認識がしにくく書かれているのかな?続きを読む

    投稿日:2024.03.10

  • 史織

    史織

    このレビューはネタバレを含みます

    トップ3に入る小説のひとつ。
    上流階級でいわくつきになった女子が「捨てられる」岬の学校。

    「彼女、高校を卒業した頃に「使われた」よね。私そんなに似てる?」

    庶子だとか、同級生と心中騒ぎを起こしてしまった子とか。
    捨てられた少女たちの儚い学園生活。
    そんな場所でも彼女たちはふつうに食事をしたり買い物をしたりを楽しんでいて、その儚い日常があっという間に指の隙間からこぼれ落ちていくような、これほど儚い小説を読んだことがない。

    ☆追記
    「百合小説コレクションwiz」という短編集に、続編(過去編?)が掲載されています
    何も知らずに読んでいたら都岡と三島が出てきてびっくり。小津に「都岡は三島の奴隷」と言われていたのが嘘のように、ピアニスト都岡の専属運転手として周りに食って掛かっている赤毛の美女、あっこちゃんが可愛い。ぜひ、こちらも読んでほしいです。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.02.12

  • じん

    じん

    このレビューはネタバレを含みます


    資産家の娘達がこの世の果ての塔に閉じ込められる、って設定だけでわくわくしてたけれど、実際は女の子の弱くて繊細で美しい描写がもりだくさんのお話で、胸がいっぱいになる。
    ずっと側にいてほしい、どこにも行かないでほしい、って気持ち。捨てられた彼女達がそれを切に願う所が皮肉のようで苦しくなる。

    香りが特徴的な小説。
    シャンプーの桃の香り、煙草の香り、焼き上がったマフィンの香り、インスタントコーヒーの香り。香りが印象づいているのは魅力的。

    ずっと小津はいつか海に帰るのだろうと思ってはいたけれど、凄く苦しい。矢咲は、帰ったらまた顔を合わせて話そうね、と未来を語れたけれど、そう考えられなかった小津のことを馬鹿だとは思えないし、子供の頃から大人びていて、リアリストだった彼女はそう考えるのが必然だったと思える。三島が止めていれば、と言うが、きっともう止められなかったんだろうね。

    都岡が帰ってきてくれたシーンが苦しくて切なくて、何故帰ってきたのか分からないけれど、良かった。せめて三島だけでも救われてくれて、良かった。「また会おう、などと…」が1番胸に刺さった。

    長々書いたけれど、結局ストーリーよりも、本のもつ雰囲気と香りが大好きでした。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.30

  • 浦島くん

    浦島くん

    題名のごとく、シトシトとした塔の中の
    ワケあり4人の少女の耽美的刹那的な物語。
    少女漫画が好きな人はハマりそう。

    最後全て悲しい結末になるのかと思いましたが
    救われたような結末でなんとかよかったです

    久しぶりにマフィンでも買ってきて食べようかな。。。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.04

  • すみれこ

    すみれこ

    岬の学校に幽閉される少女達。ダウンタウンで菓子も文房具もファッション雑誌も学生証一つで購入できても新聞や週刊誌は手に入らない。家族からの荷物や電話も調べられている。現実から隔離された場所で少女達はそれぞれ傷付いていて時に優しく関わったり密かに憎んだりする。何時かラプンツェルが塔を出る時に別のラプンツェルが近くに居ますように。続きを読む

    投稿日:2023.10.24

  • さふぁいあ

    さふぁいあ

    19歳の女性4人のお話。 どこともわからないような学校の寮の中、情報がほぼ遮断されている中でのみそれぞれの心境や状況の変化で物語が綴られていきます。 宮木あや子さんが描く女性はとても繊細で綺麗な人物になるのが感心しながら見ていますが、特に少女はより以上なのかなと、この世界観に浸かっていたくなるのを感じましたら。続きを読む

    投稿日:2022.12.14

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。