【感想】魅機ちゃん

平山瑞穂, 阿部潤 / 小学館
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • K@ZU

    K@ZU

     僕は小汚い雑居ビルに事務所を構える探偵だ。ある日、一風変わった依頼人がやって来た。有名アパレルメーカーを経営する富井という男。彼の依頼は「魅機ちゃんを探してほしい」。

     魅機ちゃん。正式名称「魅機MOUS‐27」はお酌専用ロボット。若い女性がビール瓶や缶を傾けてお酌をしてくれる、男にとっては夢の癒しロボットだ。だがその性能は高度で「シリコン+高級樹脂の使用でホンモノそっくりな肌触りを実現!」「言語・行動学習機能をフル活用すれば、あなた色に染まった〝魅機MOUS-27〟が!」 なのだそうだ。

     その魅機ちゃんが富井社長のもとから失踪したという。金持ちの趣味はわからんなあと調査を開始したのだが、様々な経緯を経てなぜか魅機ちゃんは僕の事務所に居座ることに。僕は彼女を助手として多様な事件に挑むことになるのだった。

     コミック誌「月刊IKKI」2007年9月号~2008年8月号にて連載された小説作品。6つの章とスピンオフコミックから成る。ギャグマンガ『パパがも一度恋をした』の阿部潤が描くポップ&ワンダーなイラストが文章と絡み合い、独自の魅機ちゃんワールドを構築している。
     作者によると、文芸とコミックのCOMPLEX(融合)を模索する編集部が平山瑞穂に声をかけ、阿部潤というコラボパートナーと共に連載が始まったのだという。ほぼ全ページにわたって文章の間に自在にイラストが入りこむレイアウトは、現場の担当者をだいぶ泣かせただろうなという気がするが、そのお陰でずいぶん個性的な本が出来上がった。最近では2008年に講談社「モーニング」において、伊坂幸太郎が花沢健吾(『アイアムアヒーロー』)とタッグを組んで『モダンタイムス』という小説で似たような試みをしていた。
     小説とマンガの融合というチャレンジの狙いには、恐らく小説を読まないマンガ世代に対して新たなニーズを掘り起こす目的があるのだと思う。これまでもライトノベルというジャンルがある程度その役割を担っていたような気がするが、本書ではさらに小説がマンガに一歩歩み寄ったような感じだ。

     実際、平山瑞穂の奇想天外なストーリーもとても面白いのだが、やはり視覚的に一番に読者の脳裏に飛びこんでくるのは阿部潤の弾けるようなイラストだろう。セクシーでかわいい魅機ちゃんについて作家がいくら文字を費やしても、それを見事に表現したイラストが一枚あればそれはてきめんに読み手に伝わるものだ。
     そのためにはもちろん、イラストレーターに作家のイメージを的確に捉えて視覚化する力量が必要になる。その点、阿部潤のイラストはイメージにぴったりだ。

     そんな2人の作家がコラボレートして描く魅機ちゃんの天真爛漫なキュートさがこの本の最大の魅力。彼女はロボットなのにも関わらず、お酌した相手に付き合ってお酒を飲んで「燃料補給」をし、またその量に応じて「酩酊」していく。キャリア風の女性用スーツに身を包んでいるが、人工皮膚の下に太陽電池が仕込まれているので短めのスカートや胸元の開いたブラウスなど露出度の高い服を好む。なんて男にとって都合のいい設計!

     だがなぜ、お酌ロボットである魅機ちゃんはそこまで高度な性能を持つのか。またそんな人間とほとんど変わらないロボットを目の前にすれば男が考える事はただ一つ、性的好奇心というやつ。一体、魅機ちゃんは何のために製造され、どういった秘密を抱えているのか。それが物語全体を通して描かれるテーマである。
     お気楽ロボットが活躍するストーリーかと思いきや、意外なことに後半、作品の雰囲気はどんどん重くなっていく。一緒に行動するうちに彼女をどうしても「そういう目」で見てしまう主人公。しかしロボットであるゆえ、それに応じることはできない魅機ちゃん。普通なら巧みに避けて描きそうなそこらへんの悩ましさがきちんと描写され、それがラストで大きな意味を持ってくるあたりが平山瑞穂の持ち味だ。

     所々伏線が回収されていなかったり、探偵ものにしてはミステリーとしての読みどころが少なかったりと、作者は勝手が違う中で全力を出し切れなかったのかも知れないが、しかし人間とロボットという超え難い溝を挟んだ主人公と魅機ちゃんの絆には、読み終えた後もずいぶんいろいろな事を考えさせられた。

     平山自身もこの作品を結構気に入っているようで、自身のブログでは、
    <自分が文字の形で描写したキャラクターたちがこうしてキュートな(ときにはおぞましい)イラストになっているのを見ると、つい欲が出てしまう。アニメになって動いているところを見てみたい、と思ってしまう>
     と記している。
     残念ながらアニメ化は未だ実現していないが、IKKI編集部が実写版のプロモーションビデオ(大門真紀主演)を作ったり、フィギュア作家・桜文鳥がフィギュアを作成したりとそのワールドは様々なジャンルに広がりを見せている。
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    投稿日:2011.08.04

  • ゆい

    ゆい

    魅機MOUS(みきもうす)というどこかで聞いたことあるような名前の女性型ロボットをめぐるスラップスティックと思いきや、シリアスなエンディングにびっくり。ただ、この結末はむなしすぎる…

    投稿日:2009.07.01

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