【感想】昭和天皇の「極秘指令」

平野貞夫 / 講談社+α文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • reinou

    reinou

    ◆ロッキード問題に揺れた当時の国会の実像が垣間見える上、提示された仮説は興味深いものであるにも関わらず、余りにキャッチーなタイトルが粉飾を疑わせ、持てる価値が見失われてしまった惜しい作◆

    2007年(底本2004年)刊。
    著者は元参議院議員・元衆議院事務局職員(前尾繁三郎衆議院議長秘書歴あり)。

     核拡散防止条約。これについては調印から6年を経過しても、批准に必要な国会承認を得ようとしなかった自民党政権。
     しかし、田中角栄退陣後のロッキード国会において、静かに超速の審議で批准された。
     この戦後政治史の七不思議に数えられる事態につき、本書は、当時、前尾衆議院議長の事務局秘書であった著者が大胆な仮説を提示する書である。

     結論的には、本書は仮説の域を超えず、今後の検証を要することは確かだ。
     つまり、昭和天皇の反核兵器思想。6年も放置された核兵器拡散防止条約が、非常に短期間の審議でスピード承認された事実。それは、例外的な権限行使と力技でロッキード国会という審議困難な状況を前尾衆議院議長がまとめ上げてしまったこと。異例とも言える長さで毎回行われた前尾議長の天皇内奏。これらを結びつけるというやや荒業に近い仮説提示だからだ。

     それはこの問題が、従前の戦後政治史研究の中での位置づけが小さく、後の研究者の研究課題とされるべき、という著者の願いに依拠し、その願いは、小泉政権・第一次安倍政権の核兵器のスタンスへの危機感に由来する。

     イラク戦争に邁進するブッシュJr追随が顕著で、核武装容認論が何の衒いもなく展開される状況への危機意識に由来するものだ。

     正直、個人的には、本書六章以下で展開される、昭和天皇のヒロシマ前の核兵器に対する忌避感は、未だ確定したものとは言えない故に、戦後のそれをもう少し細かく見ていかないと、昭和天皇の真意の在処は見えないなと。

     ただし、前尾自民党議員が、核不拡散防止条約の承認、つまり核武装に対する否定的視点に立っていた点と、ロッキード国会の国会運営の特異さは本書の指摘から十分理解できる内容であると言えそう。
    そもそも、三木内閣が非主流派を首班とし、かつ幹事長が中曽根康弘という三木とは全く合いそうにない(現に、裏で田中派と共に三木降ろしに加担している模様がありあり)人物が務めていること自体、現代の、顔が見えず気持ちの悪い自民党議員の集団とは全く異質の状況が見て取れる点と、非タカ派としての前尾議員の行動を備に検証できる点は買いだ。
     また、ロッキード事件の司法プロセスは立花隆「ロッキード裁判の時代」が詳しいが、立法府のそれを開陳したものとして本書の価値を見て取ることもできそうだ。


     なお、核拡散防止条約の承認逡巡は、➀核武装容認を跡付けたい、中曽根他のタカ派自民党議員の跳梁跋扈と、➁社会・共産(公明も入るかも)による、5大国核武装独占政策に対する批判、核武装国による核軍縮の同時進行の強調という両方からの反対が顕著であったから。
     ちなみに、条約締結は佐藤内閣。
    続きを読む

    投稿日:2018.05.05

  • kanacanard

    kanacanard

    この本を読み終わって果たしてどのくらい日本のことを本当に考えて行動している政治家がどのくらいいるのか、とさみしくなった。
    「日本国民」の存続というところに焦点をあてて考えていた昭和天皇の想いが強く伝わり最終章ではなぜか涙が止まりませんでした。続きを読む

    投稿日:2012.02.21

  • のり

    のり

    調印後6年間も放置されてきた核防条約が1976年のロッキード国会で承認されたのか?そこには天皇陛下のあるご意志が働いた。というノンフィクションである。少し前、我が国の指導者は核武装が必要とか、戦後レジームからの脱却と言ったが、本当に必要なのか?なぜ必要なのか?を国民に説明していただろうか。また有権者も歴史に学び、選択する責任があるのだ。続きを読む

    投稿日:2011.09.18

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