【感想】ロスジェネの逆襲

池井戸潤 / ダイヤモンド社
(946件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
421
336
107
6
2
  • ドラマを見てファンになった方は必読

    半沢直樹の爽快感がたくさん詰まっていて、満足度の高い作品です。
    個人的には、半沢直樹の中で一番良かった作品で、皆さんの期待も裏切らないでしょう!

    子会社に出向した半沢直樹が、理不尽でなんともし難い組織である銀行に対して、信念を持って戦ってくれます。
    私達が普段、上司や組織に対して、言葉にせずとも常に心の底で感じている事を、半沢がズバッと言ってくれるので、思わず「よく言った!」と心の中で叫んでしまいます。

    また中小企業のような、リアルな現代に生きる人の姿と人間関係が描かれており、読者に対して、”会社とは何か”、”働くとはどういうことか”、
    最終的には、”どう生きるのか”を問いかけているように思えます。
    これが、ただ半沢がぶった斬る爽快さだけじゃない奥深さを
    作品に加えているからこそ、これだけ多くの人に愛されるのではないしょうか。
    最後は、ちょっと涙腺が緩くなって、涙してしまいました。

    しかし、このシリーズを読んで本当に関心するのが、主人公・半沢直樹の描かれ方。
    あまりやり過ぎれば、独善的で嫌なやつとも受け取られかねない、志が高くぶれない半沢を、ここまで素直に読者に受け入れさせ、完全に味方にしてしまうのは、キャラクター設定が秀逸なのだとしか言いようがありません。

    その生きる姿がかっこ良く、
    自分に置き換えてみて、ちょっと溜息をついたり・・・。
    「まぁ、こうありたいけど、実際には絶対に無理だよね」、
    結局はそう思ってしまいますけどね。

    テレビドラマの続編が制作されるかは、現時点ではわかりませんが、
    そうなることを願って、それまでの繋ぎとして読んではみては如何でしょうか?

    半沢ワールド、最高です!
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    投稿日:2013.12.20

  • 爽快感の漂う一冊

     「俺たちバブル入行組」の主人公が活躍する爽快な企業小説で、IT企業の買収劇を巡る経営者の悲喜こもごもが描かれている。

    [あらすじ]
     東京中央銀行で不正を暴いた半沢直樹。その後、行内の政治的決着で出向させられたのが東京セントラル証券。銀行の系列子会社である東京セントラル証券の業績は鳴かず飛ばずで、銀行からの出向者が能力も無いのにプロパー社員を押さえ込んでいるという会社だった。
     そこにIT企業として急成長している電脳雑技集団という会社の社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいという相談が入る。企業買収のアドバイザー契約を結び成功することによって巨額の手数料が入ることになるが、契約後早々に親会社の東京中央銀行からの横槍が入り、買収策を提示する前に親会社にアドバイザーの座を取られてしまう。
     東京セントラル証券内部からの情報リークによって理不尽な扱いを受けることになった半沢は、プロパー社員でロストジェネレーション時代入社の森山とともに巻き返しを図る。企業買収と銀行内部の力関係、IT企業同士の思惑が複雑に絡む中、東京セントラル証券が周囲を驚かせる秘策を次々と打ち出して行く。

     本のタイトルを見たときに「ロスジェネって何だろう?」という疑問が真っ先に浮かんだ。表紙絵の雰囲気も含めて一瞬SF的な物語かと早合点してしまったが、「ロスジェネ=ロストジェネレーション=就職氷河期時代」と知り、その時代に就職活動を行った会社員が中心となった小説だと知った。

     ロストジェネレーションは「失われた世代」と訳されることが多いようだが、もともとは第一次大戦後の1920年代にパリに滞在していた作家のヘミングウェイに対して、アメリカの作家ガートルード・スタインが投げかけた台詞に由来しているらしい。

     スタインは「You are all a lost generation.(あなたたちは皆、失われた世代なんだ)」と投げかけ、酒や享楽に溺れる「自堕落な世代」を意味したことばとして使われていた。戦争によって価値観が覆り目指すものを失っていた時代の言葉を借りて、バブル崩壊後の日本経済が低迷している中で就職をした世代に当てはめた言葉だそうだ。

     思い返せば「新人類」という呼び名をされていた世代や、「バブル入社」と呼ばれる世代があるなど、とかく年代別に区分けしたがる傾向が日本にはあるのではないだろうか。「俺が若い頃は」と言う言葉を使うようになると年を取った証拠だと言われるが、それも世代別に呼び名をつけて分類したがる文化にもつながっているのかもしれない。

     今回読んだ池井戸潤さんの「ロスジェネの逆襲」にも、就職氷河期に自らIT企業を立ち上げた青年実業家が二人登場するが、どちらも「世の中は当てにならない。頼りになるのは自分だ」という姿勢で経営し、それがもとで大切な助言者を排除するという方向に進んでいってしまう。

     企業買収を巡って企業同士の駆け引きが絶妙に描かれており、また買収のコンサルティングを巡る銀行内部の暗部なども描かれているが、それを打ち破って活躍する主人公の活躍が読んでいて爽快感を与えてくれる。言いたいことを言って、自分の信念に沿って突き進む主人公。
    自分は決してこうは出来ないだろうなと思いながらも、こういう気持ちは常に心の真ん中に持っていなければいけないなと気づかされた一冊だった。

     池井戸潤さんの作品に共通している「正義を貫く爽快感」と、「人は善と悪の両面を持っている」という人物描写がこの作品でも絶妙に描かれていて、あっというまに読みきってしまうぐらいの魅力あふれる一冊だった。
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    投稿日:2013.11.30

  • テレビドラマから一気読み

    入行組からバブル組と本作と一気読みしました。
    TVニュースにもキーワードになった、企業買収やホワイトナイト
    といった言葉が、物語にきれいに入っていて
    非常にわかりやすく物語が進展していきます。
    「倍返し」の台詞も健在でわくわくしながら読めます。
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    投稿日:2013.11.05

  • 安心して読めます

    ドラマ半沢直樹を見た人は、原作を読んでいなくても安心して読めると思います。
    難しい言葉は少ないし読みやすいのでお勧めします。

    ただ、登場人物が多いですね。
    相関図を見ながら読みましょう。先頭の方に付いています。
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    投稿日:2013.10.31

  • サラリーマンをテーマにしたスカッとするストーリー

    「小」が「大」を打ちのめす痛快極まりない物語。
    世の中は「大が小を呑む」のが常識である。
    その逆を行くのでたまらない。
    その中心的な存在が子会社に席を置く半沢直樹部長である。

    投稿日:2013.11.11

  • 「半沢直樹」の真骨頂

    半沢直樹作品3作目にして最高峰の面白さ。
    今回はドラマの最後で言い渡された証券会社への出向後の話。

    それだけに、これまで以上に半沢vs東京中央銀行となっており
    爽快感を感じます。

    投稿日:2013.11.16

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ブクログレビュー

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  • ちゃん

    ちゃん

    半沢直樹の出向先、東京セントラル証券に大企業電脳雑技団から大規模買収のアドバイザーオファーを受ける。しかし、親会社である東京中央銀行に仕事を奪い取られ半沢は窮地に追い込まれてしまう。そこで半沢が起こした行動は買収されそうになっている東京スパイラルのアドバイザーになるという奇策だったー…!

    相変わらずの勧善懲悪で気持ちいい。
    半沢さんの仕事の仕方がかっこよすぎて惚れる。例えば三木から諸田が銀行情報をリークした話を聞きだす時も、聞いた後「俺はどうしたらいいんでしょう?}と聞く三木(元々ヤな奴)に自分で決めた事だろう。自分で考えろ。仕事は与えられるものじゃなく奪うものだ。
    小説なら嫌な相手でも手を差し伸べそうなのにバッサリ言い切るところがいい。

    大企業とか小企業とかじゃない、自分の仕事に誇りを持ってるか

    人の為ではなく、自分のために仕事をしていると、その仕事は卑屈で腐ったものになっていく

    仕事の質は、人生の質につながる

    自分がその仕事に対してどんな姿勢で向き合っているかが大事ってスタンス
    仕事はどう考えても自分の生活のためにしてるけど、業務は周りの事を考えながら動いた方が気持ちいいもんね
    最後、三笠と伊佐山が電脳に行かされ、半沢は次長に復帰!スカッとした!
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    投稿日:2024.02.13

  • りょう

    りょう

    後半に向けて良いテンポで進み、最後は痛快な逆転劇。

    現状に文句を言うのではなく全力を尽くす。そんな姿を読みながら、自分も頑張ろうと思いました。

    投稿日:2024.02.08

  • Kini

    Kini

    «置かれた環境で全力を尽くす。全ては顧客のために»
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「置かれた場所で咲きなさい」

    この言葉がしっくりくる本は今年何冊か読みましたが、彼、半沢直樹はやはりそのモデルとなる人物だなとあらためて強く感じました。
    親会社に案件を横取りされるという、私なら人間不信で寝込むのではと思われる状況でも、負けずに立ち向かっていく半沢の姿に、今回も大きな勇気を貰いました。

    私自身も転職を経験した今年。
    今仕事をしていると、「あの人がやっている仕事、いつ私にも振ってもらえるのか」とヤキモキしてしまうことがありますが、私自身も「顧客のために」今与えられた仕事に誠実に向き合っていきたいなと感じました。来年も燻らずひたむきに頑張ります!


    【おまけ:個人的なニンマリポイント】
    ・半沢の部下の扱い方は勉強になります。
    今回副主人公(?)として大活躍した森山だけでなく、今までの半沢の部下も、彼によく懐いていたなとふと思い出しました。
    少し前の「怒鳴って言うことを聞かせる」やり方が主流だった時期であっても、半沢は指示のだし方は冷静で的確だったなと思いました。


    ・時代の変化をキャッチ
    上の話にも少し繋がりますが、「やられたらやり返す」即ち、前巻まで(特に一巻は)比較的「怒鳴られたら怒鳴り返して」いた半沢でしたが、今回の話は「怒鳴る」→「(相手が)謝罪」のパターンがほとんどなかったなと感じています。
    2004年頃の企業のコンプライアンス意識がどうなっていたのか詳しくない身ですが、怒鳴るやり方から冷静に問い詰める方向に変わりつつあったであろう情勢を、池井戸先生は上手いこと反映しているのかなと思いました。若しくは半沢の内面及び対峙する相手の立場による変化なのか?
    次巻以降この辺がどう取り入れられていくのか。次巻を読む時の楽しみが増えました。
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    投稿日:2023.12.31

  • kozue

    kozue

    このレビューはネタバレを含みます

    過去にドラマ視聴済みで、本の内容もすんなり頭に入ってきた。
    電脳の粉飾を見抜いて、銀行の取締役会で暴くシーン以降は読んでいて爽快。

    半沢も他の出向者と同じく、早く銀行に帰ることしか考えていないのだろうと思っている森山に、半沢が「自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ」と説いたセリフが印象的だった。

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    投稿日:2023.12.03

  • ゆう

    ゆう

    このレビューはネタバレを含みます

    出向先での半沢直樹には理不尽な出来事が次々に降りかかってくる。しかし前向きな仕事に対する向き合い方で事態は好転していく。
    自分の為に仕事をしていく人間が組織を腐らせていく顧客第一が最も大切である。この言葉に心打たれた。
    目の前の顧客重視の考え方は仕事の本質をついていると思う。
    素晴らしい小説だった。

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    投稿日:2023.08.11

  • はるパパ@ファミコンしようぜ

    はるパパ@ファミコンしようぜ

    Audible読了
    日曜劇場で見た、尾上松也のあのIT業界のやつだ。
    子会社出向を命ぜられた半沢が、親会社である銀行を相手取って暴れる絵作りは、脱帽のセンス。回を増すごとに、ほれぼれするような論破で大人の悪を切り裂いてくれる。
    今回はとうとう役員会でタンカを切り、頭取に認められるという、サラリーマンならば一度は憧れる胸熱シチュエーション。もちろん、頭取はまともな人、という条件付きではあるが。

    それにしても、ロスジェネの逆襲とは。まさに就職氷河期ど真ん中に置かれた過去を振り返ってみて、今はこうして仕事が楽しいと口にできること。それが、失ったものを数えるよりも、はるかに幸せなことだと噛み締めさせてくれた。池井戸作品は本当にカンフル剤になる。よし、明日もがんばるぞ。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.05

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