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篠原勝之 / 講談社文庫 (1件のレビュー)
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大吉堂
かつて捕鯨で栄えた港町に住む洋は両親の別居により、母親の実家のミカン山で暮らすことになる。そこでの生活に馴染めない洋は、1年後の夏に故郷の町を目指してマウンテンバイクUMIのペダルを漕ぎ出すのだった。… 少年の成長が実に真っ直ぐ真正面から書かれています。マウンテンバイクでの旅の話がメインかと思ったのですが、その部分はあっさりとしており、クライマックスも海の上で肩透かしをくらった感じもあります。しかし少年の心の象徴としてマウンテンバイクが素敵な役割を果たしています。 また実に読後感が爽快なんですね。それはいわゆる「悪者」を出していないからかも知れません。何かが変わってしまった母親にも、転校先でちょっかいを出してくる上級生や馴染めないクラスメイトにも、故郷を離れることになった境遇にも、洋は敵意を示さないのです。自分の問題として自分が変わることを目指し、自らに宿題を課す。その姿がいじましくもかっこよく、目を細めてしまいます。きっと同年代の読者にとっては、背中を押してくれる姿となるでしょう。 作者はあのゲージツ家のクマさんですね。このような物語も書かれているのだと驚きました。続きを読む
投稿日:2015.12.29
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