【感想】今を生きるための現代詩

渡邊十絲子 / 講談社現代新書
(43件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
12
19
9
0
0
  • わからなくても、いいんです。

    詩は、なんだか難しい?

    厳選された言葉たちを前にして、
    「わからないかもしれない」という不安を覚えてしまう人も、きっと少なくないはず。

    現役の詩人、渡邊十絲子が送るこの本は、残念ながら詩を上手に読み解く指南書ではありません。
    むしろ、本書で引用される詩は、渡邊自身が「よくわかっていない」と語るものばかり。
    簡単には理解できない「むずかしい」ものこそ楽しみがいがある。
    そんなむずかしいもの、瞬間的にはわからないかもしれないことの楽しみ方を渡邊は教えてくれます。

    そもそも、詩との最初の出会いが国語の教科書になっているのがまずい、と彼女は語ります。
    平易な言葉を使っていたとしても、内容が分かりやすいとは限らない。
    そして、その詩に何も感じられなかったとしても、教科書が選定している「美しい詩」として受け止めなければならない。

    詩を味わうことの楽しさ。
    そのシンプルな喜びを、優しく語りかけてくれる1冊です。
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    投稿日:2015.08.28

  • むずかしくてわかりにくいのは悪?

    詩人の著者が、詩に触れていく過程を追っていく。
    〈やさしくて伝わりやすいのが善、むずかしくてわかりにくいのは悪〉?
    〈レベルをおとして改変したものはすべてつまらないのである。 現代詩はむずかしい。でも、むずかしいからおもしろいのだ。〉

    単に詩を紹介する本ではないため、外国語と母語についての著者の考え方など、詩を読む一人としての著者を知るための部分も面白い。
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    投稿日:2013.12.27

ブクログレビュー

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  • あいぼん

    あいぼん

    詩の楽しみ方、面白さを教えてくれる本だった。
    そして、詩は難しそうだと思っている人も多いかもしれないが、書いている本人さえ、詩が自分を超えてしまい、完全に理解しているわけではないんだと、だから、「知らない」「わからない」ことを楽しもうと、投げかけてくれた。
    私が大切にしている、「ネガティヴ•ケイパビリティ」に通ずる考え方だ。
    わかってしまうとつまらない、何度でもくりかえし読むことができ、読むたびに新たな発見がある。それこそが、本当に価値のある作品なのだ。
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    投稿日:2024.02.02

  • yurisyo

    yurisyo

    荒木博之さんのブックカフェだったか、超相対性理論だったか、まあどちらかを聴いて興味を持った。

    文章を読むのが人より少しだけ好きなことは自覚しているが、正直に言うと詩について興味関心を持ったことがこのかた一度もなかった。
    短歌や俳句には、ちょっの面白そうだな、と思うぐらいの興味が湧いたこともあったが、散文…ましてや現代詩はどうも読む気にすらなったことがない。

    Podcastでこの本が紹介された時に、その本自体への評判よりも、それが何故なのかなー…ということ、つまり自分自身に対しての長年の問いが先行して、読んでみようと思った。

    そしてその問いの答えは、早々と第1章で明かされる。
    谷川俊太郎さんの生きる、という詩。
    読んだことはあったかもしれないが、まったく覚えていない。
    今回、本書に収録されていて改めて読んだが、とても読みやすかった。
    なかなかいいな、とすら思った。
    子どもにこれを読ませたいという気持ちもわかる。
    ところが、子どもサイドに立ってみれば、少々事情が違うらしい。
    この詩は、人間を生きていくうちに徐々に味わう人生の機微、文脈を知らずしてはなかなか噛み砕くのがむずかしいタイプの詩である、というのだ。
    この詩におけるテクニックやら、教養、知識をただ教え込まれ、正解とされる読み方を単に上から与えられるというのは、読まされて読者になった子どもにとっても作者の谷川俊太郎にとっても悲劇でしかない。

    なるほどなぁ…。

    思い返してみれば、確かにそういうところ躓いた気もする。
    今読むといいんだけどな。

    長年の問いがあっさり明かされた後に読んだ第2章以降は恥ずかしながらどの詩人のお名前も知らなくて、収録されている、詩はまさにいままで興味すらなく読んでみたこともないようなthe現代詩。

    …え、全然わからない…。

    いや、第1章で現代詩に興味がなかった原因がわかって克服したはずでは?!

    結論を言うと、2章以降の詩はどれもわたしにとっては不可解で、
    読んでこなかった本当の理由は「わからない」を不快なものとして刷り込んできたからだ、ということがよくわかった。
    (特に音読ができない詩、というのはわたしにとってとても大きいハードルだと気がついた)

    そもそも味わい方を知らない。
    どうしても作者の意図を読もうとする。
    わからないものをわからないまま棚上げにできなくて、わからないものは自分にとって意味のないもの、意味のないものは良くないもの、という刷り込みが働いている。

    著者である渡邉さんの解説を読みながら、そうやって読むのか!
    と、再びチャレンジした、私にとって不可解で意味のない言葉たち。
    それが、わからないなりの違った見え方でにじり寄ってくるような感覚になった。

    この感覚は、去年からハマった絵画鑑賞に近い。

    意味はわからないけど、わからないことは悪いことではない。
    もやもやとわからない不快感を胸に置きながら、それが未来に伏線となってスパークする日も、もしかしたら来るのかもしれない。
    少なくとも、こんなにも不可解で、物事のぼんやりとした輪郭や、世界にはびこる言葉にしようがない気配、みたいなものを言語化するなんて、意味はわからないけどなんだか凄い技術だ、ということはわかった。

    それにしても著者である渡邉さんの、詩を嗜む、味わうための方法について論じる文章が本当にわかりやすく際立っていて、目から鱗が落ちまくる。
    わからなさを愉しむ作法をわかりやすく言語化している本書。
    これまた凄い技術だ。

    いやぁ…2024年、一発目の本としては、かなり相応しい良書。

    今年は詩集を読んでみよう。



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    投稿日:2024.01.09

  • dsadai

    dsadai

    このレビューはネタバレを含みます

    詩人が詩を書き推敲する中で見つける美しいフレーズは、数学者が難問に取り組む中見つける非常にシンプルで美しい数式のようなものとい説明が腑に落ちて印象に残っている。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.01

  • おぴーる

    おぴーる

    現代詩の世界に入りたいんだけど、多分まだ経験が浅くて言葉の上を滑ってばかりいる。この本は渡辺さんが一緒に声をかけてくれながら並走してくれる。速度感とかどこを使って読めばいいかとか真似させてくれるので今まで無感覚だった所に沁みてきながら、詩に関わることができたら。続きを読む

    投稿日:2023.11.28

  • nobwow

    nobwow

    某ポッドキャストでおすすめされてたので手に取った。

    『第2章 わからなさの価値』や『終章』で語られている「理解できないものたちへの向き合い方」は、自身の今後の学びにおいて、立ち止まってじっくりと迷う勇気をもらえた気がする。続きを読む

    投稿日:2023.11.27

  • pctr

    pctr

    現代詩と和解する。
    「解説」を目指さずに、現代詩と触れ合う場に誘ってくれる。

    「わからなさ」を受け止め、向き合い、未来と響き合うことを期待する。

    ◯「実感の表現」とは事実上の「再現」であって、表現の根拠を過去に置いている。
    ◯それに対して、自らの表現が未来と響き合うことを期待している。

    ◯一般に人は、実力が足りないときには、対照を否定することしかできない。

    ◯詩は、「伝えたい内容があらかじめあってそれを表現する」ものではなく、「表現がさきにあって、結果的になにごとかが伝わる可能性を未来にむけて確保している」

    ◯なぜ、この詩がここで書かれたかを問うことも、この詩を書くことによって詩人がなにをなそうとしたのかを問うことも、無意味のように思われた。わたしにはただ、強くあざやかな「わからなさ」の感触だけがあった。そしてそれは、ふるえるほど魅力的だった。

    ◯「接近しようとするこころみの途上」にあるとき、人はじつにいろいろなことを知り、感じ、考える。あらたなアイディアをもってその詩の謎に向かうとき、あらたな自分がうまれる。

    ◯音声が無力であるためにことばが文字のうらづけをまたなければ意味を持ち得ない、という点に着目すれば、日本語は、世界でおそらくただ一つの、きわめて特殊な言語である。
    ・音読不可能性

    ◯だれにでも通じることばは、深みというものをもたない。「通じる」度合いが高ければ高いほど、そのことばは記号化し、符牒のようなものになっていく。
    詩のことばは、そうしたことばの対局にある、孤独のためのことばだ。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.03

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