【感想】この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下

白石一文 / 講談社文庫
(59件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
12
21
15
1
1
  • 考えることの大切さと、考えることの無意味さ

    「死」それも「無」ということへの恐怖について、イロイロな本を読んでみたりしたが、白石一文さんの作品からは何か心の琴線に触れるモノがある。

    この作品は現代のアメリカ型資本主義の終焉、救われない人間の業とかについて出版社勤務のエリート編集者が主人公として語り、経験し、感じていく話。
    主人公に現実社会での悲惨な状況であるとか、科学的で霊的なモノの否定的な意見を語らせ、一方で霊的な体験をし、結果的には否定でも肯定でもない新たな思いが語られている。

    考えることの大切さと、考えることの無意味さに考えさせられた。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.18

ブクログレビュー

"powered by"

  • r

    r

    最後の方でミスリードさせて落とす展開は良かったし、救いのあるラストで良かったなという感じ。読み方を深めて再読したいと思わせる内容。満足。

    投稿日:2024.01.21

  • coco

    coco

    物語の基軸となっている排出権絡みのスクープは、事件そのものの中身ではなく、これに関わる政治家との議論が要になっていく。政治というものをどう考えるか。より大きな理想を追い、小さな悪を受け入れるか。正面から考えれば偽善だらけの現状を変えることができるのか。

    人の生き方そのものに問題提起する作品。言葉の端々にマッチョな思考回路が垣間見えるけれど、言わんとすることはとてもよく理解できる。一気読みだった。
    続きを読む

    投稿日:2022.12.20

  • まちか

    まちか

    必然……については考えてみたい。
    娯楽小説ではないってことを知らずに読んだので…
    今はその時期じゃなかったという感じです。

    投稿日:2022.04.17

  • ぐり。

    ぐり。

    久々に上下巻にも及ぶ大作を読んだ。
    でも「長い」というイメージはない。

    この本は作者にとっての「哲学」なんだと思った。

    編集者という職業柄をうまく使い、
    時事問題・歴史問題・政治問題を絡ませながら
    最後に「必然」とは何かという哲学に導いている。

    主人公のカワバタをこういった哲学の道に引きずり込んだのは
    生後3ヵ月でこの世を去ったユキヒコの死に他ならない。

    その後の彼にとって過去や未来は存在しないにも等しいし、
    結婚関係についても妻に愛人がいるとしっても取り乱すこともなく
    第三者的立場から物事を見ているような感じ方だ。

    【ココメモポイント】
    ・神が宇宙知性であり僕たち一人一人はその微小な部分だとするならば、巨人は
     一体何を思惟しているのであろうか?また巨人は一体何を知りたくて思惟しているのであろうか?
     P.47

    ・二度と会うことのない人は、僕たちにとって「もうこの世にいない」との同じだ。
     P.102

    ・子育てなんて一時的なものです。妻というのは、一緒に年老いていく相手です。
     だが、彼女はそういう対象ではまったくないですね。
     P.150

    ・体験や経験が人生の本体だとすれば、人間はなぜそういう本体の内容はどんどん忘れ、
     折々で頭の中に詰め込んだ瑣末な知識はしっかりと憶えていられるのだろうか。
     P.171

    ・他人のことを幸福だと思うので「あなたは客観的事実として幸福なのですから、
     そのこと納得し決して不平不満を述べないようにしてください」と
     押し付けてるのと同じだ。その本人の幸福とは何一つ関わりなんてないんだよ。
     P.264

    ・僕たちは今の中にしか生きられない。歴史の中に僕たちはもうどこにもいないのだ。
     過去の中にもこれからの過去の中にも僕たちはどこにもいない。
     今、この瞬間の中にしかいない。この瞬間だけが僕たちなのだ。
     時間に欺かれてはならない。時間に身を委ねたり、時間を基軸として計画を練ったりしてはならない。
     そういう過ちを犯した瞬間、僕たちは未然のものとなり、永遠に自らの必然から遠ざけられてしまう。
     P.317
    続きを読む

    投稿日:2022.04.02

  • Akiko

    Akiko

    このレビューはネタバレを含みます

    すごい小説だった。
    自分とは何か、何のために生きているのか、世の中の真実はどこにあるのか、何を信じればいいのか。
    もっとも繰り返し問われるのは経済格差の問題。
    小説の最後に、「胸に深々と突き刺さる矢」の正体が分かる。
    でも、もしそうなら、私はその矢を抜くことはできないと思った。
    その矢にとらわれることなく、「自分」という存在をあるがままに受け入れるのは難しい。
    人は誰でも、過去にとらわれたり未来を想い描いたりするからだ。
    そうでないと生きてはいけないと思う。

    小説を通して、世界の真実を問うているのか、一人の人間の真実を問うているのか、運命の何たるかを問うているのか、愛の何たるかを問うているのかわからなくなってくるけど、多分すべてを読者に問いかけているのだろう。
    内容盛りだくさんで非常に考えさせられるし、ストーリー展開自体も面白くて最後まで引き込まれる小説でした。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.09.17

  • ajipoon

    ajipoon

    絶賛を浴びたとの評価が気になって読んでみた。
    確かに面白いが、途中で飽きてしまう。
    小説は著者の思想が出るものだとは思うが、それは登場人物を通して伝わるものだと思っていた。この小説は登場人物を通してではなく、著者がダイレクトに考えを述べている点が多く、登場人物は関係なくなっている。特に下巻の前半部分はその傾向が強く読むのがかなり辛い。
    前評価を知っており何か他の小説と違うのだろうと先入観をもっていたので読了できたが、何も知らずに読んだらイライラして途中で辞めてしまった、と思う。
    書いている考えの内容がどうかではなく、伝え方が評価できない。
    続きを読む

    投稿日:2021.09.01

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。