【感想】誰にも相談できません

高橋源一郎 / 毎日新聞出版
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • 坂たあ

    坂たあ

    人のお悩み相談とその回答を読むのが好き。
    新聞に掲載された人生相談から選ばれたもので構成されている。
    著者の高橋源一郎さん自身の遍歴もなかなかのもので、そんな著者からの回答は、興味深いものがあった。
    人の悩みを読みながら、十人十色、人生色々だと自分を勇気づけていた。続きを読む

    投稿日:2023.08.22

  • ちゃんさり

    ちゃんさり

    『家族は永遠に続くものでも、何があっても守られるべきものでもないと思います。それに参加する者が、互いに誠実であるときだけ持続できるものです。』を噛み締め、『わたしにとって子育ては、自分に愛する能力があると子どもたちに教えてもらったことです。』で泣きました。
    後書きにあったように質問文が短いのがとても残念……新聞だから仕方ないんでしょうが。解説が伊藤比呂美でうれしかった!
    続きを読む

    投稿日:2023.02.21

  • Karen✲*゚

    Karen✲*゚

    一番の親友に勧められ、読んでみた。高橋さんのあたたかく、やさしく、時にきびしい言葉にハッと思わされた。人生で多くの成功体験も失敗経験もなさってきて、その度にいろいろなことを考えてこられたのだな、という実体験に基づく回答が多数。100編あるとは思えぬ読みやすさですぐに読了。

    p.21 恋愛感情ないのは異端?
    明治の青年たちは、「生生で流行っている恋愛と言うものをしてみたい」と憧れ、これもまた、誕生したばかりの女学生に「精神的な」「恋愛」押しかけたのでした。そのおかげで、性欲のほうは娼婦を買うことで解消して、その矛盾に生きる事はありませんでしたが。

    「恋愛」や「友情」、あるいは「親子の愛情」、そんな、当たり前のものと思われる感情も、実は「人間に自然に備わるもの」ではなく、もしかしたら、社会から「備えるべきもの」として進められるから、肌についただけかもしれません。「恋愛」しないと落伍者に見られるから、「恋愛」する。「友人」がいないと居場所がないから、「友人」を作る。「親子」だから、親を(木)愛するのは当然なので、そんな感情を持てない自分を責める。なんか変ですよね。もう一つ付け加えましょうか。「国民」だから、所属する国お会いするのは当たり前だ、なのに愛さないのは「非国民」だ。私たち人間にとって、1番の幸せは「自由」であることではないでしょうか。そして、その中には、どんな感情を持っても(持たなくても)いい「自由」も含まれるはずなのです。

    p.23 年下の既婚者を好きになった、どうすれば良いか?

    このような問題を誰かに相談しようと思うほど、あなたは心の弱い人間だからです。また、あなたに決断をゆだねてしまうほど、相手の男性も弱い人間だと思うからです。どんな不幸な結果が待っていようと前に進もうとする人たちは、すべてを自分で決めるはずです。他人に相談中せずに。そして、起こり得る全ての結果を受け止めるでしょう。

    p.35 あなたが従事している「芸術」と言う営みは、「失う」ことが苦しみだけではないことを、人間に伝えるために存在しているからです。1枚の絵、1つの曲、 1篇の詩、 1冊の小説、どれも作り手たちが、何かを失うことと引き換えに作り出されたものばかりです。喝采を受けず、冷たく無視されても、作り手たちは後悔しないでしょう。なぜなら、作り出すこと自体が、彼ら自身への幸せの贈り物でもあることを知っているからです。あなたはまた、ずっと前からその世界の住人だったではありませんか。

    p.41 付き合っている人に捨てられ50年…
    捨ててしまった「善きもの」「美しいもの」を拾い集めてください。あなたには、あなたの人生を取ったり、大切に扱う義務があります。それは、他の誰にもできないことですから。

    p.45 遠距離恋愛でいらいら
    私は、その時、初めて、恋人たちは「同じ時間を共有する」ことで成り立っているのだと知ったのです。「遠距離恋愛」が難しいのは、お互いが別の時間を生きているからだと思います。相談者の彼女には、あなたの知らない、彼女が生きている時間があります。その人が、あなたにとって本当に大切な人なら、他の人が、自分の時間を、自由に、もっと生き生きと過ごせるように願ってあげてください。仮に、その結果がどうなろうと。そしてあなたも、今は中途半端になっている、自分の時間を大事にしなければなりませんね。

    p.54 片付けられない。夫。世話が嫌になる。
    お願いです。病気のご主人を助けてあげてください。子供たちにも手伝ってもらったらどうでしょう。「秘境パパの部屋清掃大作戦」とか言って。お祭り気分を出すため、重装備で行くのもいいかもしれません。徹底的にきれいにするからね。何か注文あると一言だけ言っておいて、後はご存分に。その分は、清掃代として徴収しても構いませんから!

    p.70 姉にセクハラの夫、許せない
    女性は、30代後半、小学生の子供が2人、ずっと専業主婦でした。夫に行ってひどく、裏切られ、心底、軽蔑した彼女は、自分自身にも「幻滅」したのです。死ぬほど、嫌な相手に依存しないと生きていけない自分の無力さにです。彼女は夫にいました。「あなたとは暮らせない。でも、私には生活能力がありません。夫の義務として5年間の生活費を入れてください。その間に自活する能力をつけるつもりです」そして、彼女は子育てをしつつ、勉強して資格を取り、同時に積極的に外にも出て、5年目には自活できるほどになりました。音は(知人ですが)、「心から反省している。許してほしい」と謝罪しました。すると、彼女はこう言いました。「もう怒ってないわ。でも、あなたとは暮らせない。あなたは私を成長させてくれないから」と。誰でも彼女の4できるわけではありません。けれども、自分を助けだすことができるのは自分自身だけなんですよ。

    p.72 女の子、妊娠産みたいと思えず
    「愛せよ」と命令することはできません。誰にも。絶対に。ですから、これは私からの心からのお願いです。この世でたった1人、ただ1人あなただけに向かって差し出された、小さな手をこまないであげてください。本当にあなたを求めているのは、この世でその手だけかもしれない。そして、実は、その手だけが、あなたの心を温める能力を持っているかもしれないのですから。

    p.86 父が暴力。実家の母と妹が心配。
    私は非暴力主義者ですが「絶対2」ではありません。「暴力によって、人間としての尊厳が奪われ、その状態に反抗すると、暴力がさらに壊れる場合」に限り、暴力も否定しません。暴力で支配される人間は反抗する意思を失います。あなたの家族は、そんな状態に陥っているのかもしれません。暴力で支配する人間が1番恐れるのは、膝を9しない相手です。あなたの父親のような人間はずいぶん見てきました。みんな見掛け倒しです。大丈夫、全然怖くないからね。

    p.91 姉と比べられCOMPLEX
    私は、コンプレックスを抱く事は、傷でも闇でもなく、「常に謙虚であるように」と、神様が送ってくれた能力だと思うようになりました。コンプレックスがない人間なんかと、付き合いたくないですよ!

    p.103 優等生の長男に見限られた
    頑で愚かな自分を、それでも無償の愛情で包み込もうとしてくれた。ただ1人の人がいたことを、ご長男はあなたが亡くなった後に傷ことになるでしょう。それが親が子供に残す最後のプレゼントになると思います。愛情は十分に大谷なりました。残りの日々は、自分のためにお使いください。

    p.148 占いが気になります
    「占いは、いつの統計学、過去を探り、世界の計らいを調べる「学問」です。目指すところは、人を幸せにすること。それ以外にありません。人を、不幸や不安に陥れる、占い師がいたら偽物です!大切なのは、運命は変えられると言うことです。未来は決定していません。私たち占い師は可能性を示唆しているだけです。では、どうすれば変えられるのか。「善き人」で入るよう努力してください。凶兆は、「傲慢なままでは不幸になるよ」と言う、世界からの警告なんです。心や愛情を持って、子供やそのお相手に接してください。また、彼らにもそのように生きるよ。メッセージを送ってください。それで、大丈夫」

    p.153 幼児期に大切な事は
    私にとって、子育ては、自分に愛する能力があると子供たちに教えてもらったことです。愛してあげてください。それだけでいいじゃないですか。他の事はどうでも。

    p.154 友達を作らない息子。見ていて切ない。
    文章を書かせる授業で、過去、こういう課題を何度か出したことがあります。「今まで誰にも言ったことがないあなたの秘密を書きなさい」。誰が書いたのかわからないように配慮した上で、停止された文章は、なんと3分の1強が同じ回答でした。曰く「友達のふりをしているけど、本当は嫌い」「友達付き合いをしなければならないのが疲れる」等々。正直にいて驚きました。
    漫画家のしりあがり寿さんと装幀家の祖父江慎さんは名著「親父国、憲法で行こう!」の中で、私たちは「友達の呪い」にかかっているとおっしゃっています。小さい頃から「さぁ、お友達と並んで」と言われ、「友達」がいることが普通と思われているけれど、小中学校など、そもそも偶然クラスが一緒なだけで、卒業してしまえば一生会わない、ただの「他人」なんだと。今、私には「友達」と言える存在は数人です。彼らとは会う必要性ありません。私にとって「友達」は、お互いの「孤独」を理解、しあえるもののことだからです。逆に言うなら、「孤独」を共有できない相手は、「友達」ではなく、ただの「知人」に過ぎません。ご子息は周りの誰よりも「孤独」を知る人間に育ちつつあるのかもしれません。ならば、いつか気づくはずです。会ったことはなくとも、同じような「友達」が世界中にいることに。私もその1人です。静かに見守ってください。

    p.157 未熟な長男のこれからが心配です
    ご長男は、少々常識に欠けていそうなので、普通の若者よりショックを受けやすいでしょう。ちょっとしたことで傷つくかもしれません。でも、仕方ない。今までは、ご両親の庇護の下、「生きる」準備をしていただけで、これからは(1人で)「生きる」ことのただ中をに進まなきゃならない。この相談のことを、主人の女性に話したら、彼女は「私が母親だったら、ちょっと過保護すぎたと反省して、知り合いの女の子に頼んで、童貞を奪ってもらうわ」と言っていました。すご…いや、このやり方を進めているわけではありませんが。でも、ちょっと過保護と言うのは事実だったのかもしれませんね。もう解放してあげましょう。この際ですから、家から出して50分させるとか(経済的に許せば)。でも、家にいる方がいい、って言いそうだなぁ。

    p.164 18歳の孫娘。不登校から引きこもりに
    世間や社会は、(もしかしたら、商談者も)、「不登校」の子供は、ある種の病気、強制すべき血管であるように考えているのかもしれません。けれども、私の考えは全く逆です。どうしても自分にとって意味があるとは考えられない授業しかやっていない学校、不条理ないじめが待っている学校、そんなところでも、みんなが行くから我慢していかなきゃならない…て方がどうかしていますよね。ついこの間、新しいゼミの募集のために面接した男の子は、不登校の果て、高校を止め、数年間引きこもってずっと本を読んだりしていました。彼のお母さんは「学校に行け」とも言わず、しっかりもせず、「あなたのやりたいことを、納得いくまでしなさい。あなたを信じているから」と言ってくれたそうです。そして、数年の後、猛然と勉強したくなった彼は、検定試験を受け、大学に入ってきましたが、とても素敵で、情熱的な青年に育っていました。「みんなと同じ」である必要はありません。お孫さんが自分で納得いく人生はやめるよう、見守ってあげてください。多分、普通より、繊細で、考え深いお子さんなんですからね。

    p.166 スマホ禁止の孫、不憫で…
    子供の教育に関して、親が自分の考えを持つことが大切です。しかし、同時に、子供には、また「家庭」と言う共同体を構成する一員として、同じ権利があることが忘れてはいけません。親には教育方針を持つ権利があるけれど、それを子供に押し付ける権利はありません。娘さん夫婦とお孫さんが対等な人間として話し合えるようサポートしてあげてください。

    p.184 自分の文章が恥ずかしい
    「恥ずかしさ」は、誰もが自分の中に持っている、私厳しい「批判」の声です。あなたを導く「先生」は、実はあなた自身の中にいるのです。僕だって書くときは、いつも恥ずかしい。でも、恥ずかしくなくなったら、終わりだと思っています。ところで、送ってきた文章、とても良かったですよ。自信を持って!

    p.188 14年間、引きこもりの自分が嫌
    自らが「引きこもり」でもあった思想家の吉本隆明さんは「引きこもり」と言う、挑発的なタイトルの本を書かれています。その中で、吉本さんは「引きこもり=良くないこと=早く治療して社会復帰しなければならない」と言う社会の常識に異議を唱えました。吉本さんはこう考えたのです。

    …人はなぜ引きこもるのか。それは「建前」ばかりの社会の裏が見えてしまって、そんなところに行きたくないからなのだ。人は何者かであるためには、孤独に自分と向かい合う「1人の時間」を必要とする。けれども、社会が人に与えるのは、細切れの時間だけで、考える時間を与えようとはしない。「引きこもり」の時間は、人が命がけで獲得した「成熟」のための時間なのだ…

    この14年は、あなたにとって必要な時間だったと思います。自分を否定する必要はありません。実は、私にも「引きこもり」の時期はありました。苦しかった。でも、今は必要な時間だったと思います。今回、あなたはここに投稿されました。次のステップに進んでもいい頃ですね。ゆっくりで構いません。大丈夫。

    p.190 人を傷つける言葉が多すぎる
    「否定的な言葉」は、人々を(それを話す人も含めて)傷つけ、生きる意味を壊します。だから近づいてはいけません。そこには、負のエネルギーを持つ能力もあるのですが。「否定的な言葉」にとらわれず、あなたを力づける「肯定的な言葉」を探し近づいてください。あなたにジェイコブの戯曲「3人姉妹」の最後で、すべてを失いながら、それでも長女が妹たちを抱きしめながら言うセリフを贈ります。
    「楽隊の音は、あんなに楽しそうに、力強くなっている。あれを聞いていると、生きていきたいと思うわ!まぁ、どうだろう!やがて時が経つと、私たちも永久にこの世に分かれて、忘れられてしまう。私たちの夏帆も、声も、何人姉妹だったかと言うことも、みんな抑えられてしまう。でも、私たちの苦しみは、後に生きる人たちにはの喜びに代わって、幸福と平和が、この地上に訪れるだろう。そして、現在、こうして生きている人たちを懐かしく思い出して、祝福してくれることだろう。あー、かわいい妹たち、私たちの生活は、まだおしまいじゃないわ。生きていきましょうよ!楽隊の音は、あんなに楽しそうに、あんなにうれしそうに鳴っている。あれを聞いていると、もう少ししたら、何のために私たちが生きているのか、何のために苦しんでいるのか、わかるような気がするわ。…それがわかったら、それがわかったらね!」

    p.192 最近のメディアおかしい
    私はその「やり場のない気持ち」を忘れないように生きてきました。「みんな」や「世間」の言うことを真に受けたりはせず、どんなに欠陥があっても、自分の考えを大切にしてきました。同時に、自分の狭い世界に閉じこもらず、出来る限り時間を使って、貪欲に知識を吸収しようとしてきました。大丈夫。あなたは1人ではありません。あなたのような人は世界中にいて、静かに、1人で、自分の戦う場所を探しているはずです。

    p.214 友人へ便りを出すも返事が来ない
    返事を送ってくれないご友人たちは「感動も喜びもない」のではなく、それぞれの「記憶の果実」の中で過ごす時期に入っているのかもしれません。おそらくは、あなたからの手紙に対し、強い懐かしさを感じつつ、遠くから深い遅れを送っているのではないでしょうか。豊かな実りの時期には「沈黙」こそふさわしいように思えるのです。
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    投稿日:2022.11.24

  • fuumizekka

    fuumizekka

    高橋源一郎さんって難しそうだなあ、って
    もじもじしちゃう方もいらっしゃるかと思うのですが、
    コレ、とってもオススメです。

    源ちゃんが毎日新聞で向き合っている人生相談の一問一答。
    グサグサとほっこりが、程よく織り混ざっています。

    源ちゃんも、吉本隆明さんも、ひとは「孤独」と言い切られるところに
    ある種の救いを感じます。


    【本文より】

    ・家族は永遠に続くものでも、何があっても守られるべきものではないと思います。
    それに参加する者が、互いに誠実であるときだけ持続できるものです。

    ・わたしは、コンプレックスを抱くことは、傷でも闇でもなく、「常に謙虚であるように」と神様が贈ってくれた能力だと思うようになりました。

    ・あなた方の「悪いのは自分じゃない、相手だ」という自信はどこからくるのでしょう。

    ・二人で家庭を作るということは、想像を絶する難事業です。だというのに、非協力的な第3者をその中に入れるなんて、自爆以外のなにものでもありません。

    ・人はなぜひきこもるのか。それは「建前」ばかりの社会の裏が見えてしまって、そんなところにいたくないからなのだ。/吉本隆明の考え

    ✳︎花の拠点”はなふる”センターハウスの蔵書です。
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    投稿日:2022.08.16

  • katoetu

    katoetu

    見開きごと、一問一答。恋愛から家庭、仕事関係まで、ドロドロした内容もさっくり答えてくれている。
    やったことに対して責任が取れるか否か。自分自身の気持ちが幸せか否か。これが基準なんだな。

    投稿日:2022.08.07

  • らぐもぐら

    らぐもぐら

    毎日新聞に掲載されている「人生相談」の質問と高橋さんの回答をまとめた本。

    恋愛や家族の問題などの深刻な質問も、高橋さんが、自身の経験(離婚など)や他人から聞いた話なども交えて、アドバイスしているのが面白く、心に残りました。

    また、質問によっては厳しい回答をしているのも、お気に入りです。

    多くの人が自分では想像もできない、いろんな悩みを抱えているんだなと、気づかせてくれる本でもありました。

    ★毎日新聞「人生相談」サイト→https://mainichi.jp/sodan/
    続きを読む

    投稿日:2022.07.24

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