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ヘンリー・マーシュ, 大塚紳一郎 / みすず書房 (4件のレビュー)
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重度積読症
両親を看取り、また自分自身、これまで生きてきた人生より、これから生きられるであろう人生が短いことが確実になったころから、医学・医療関係の本を少しずつ読むようになった。 本書の著者は、イギリスの著…名な脳神経外科医だそうだ。手術室の息詰まるような描写、患者やその家族との苦しいやり取り、専門医としてのプライドの一方、判断ミスその他の過ちから患者を死に至らしめ、あるいは重大な後遺症を与えてしまった悔恨も率直に述べつつ、自らの半生を振り返っていく。 また、どんどん官僚主義的になっていくイギリスの医療改革に対する著者の失望が率直に語られるほか、関係のあった医師への支援として訪れたネパールやウクライナにおける厳しい医療環境などについても、その実体験を通して深い考察がされている。 それらに加えて本書では、人生の終わりに近づきつつある著者の〈死〉への向き合い方、対し方が、全編にわたり色濃く映し出されている。 特に安楽死に関する著者の考え方については、人により異論もあるだろう。自分にしても判断力もあり死が差し迫っているとは感じていない時期と、周りからはどうしようもないと思われてしまう状態を想定した時とでは考えが変わるような気がする。本書を読みながら、色々な想いが湧き起こってきた。続きを読む
投稿日:2021.11.08
katsuya
イギリスで大英帝国勲章をもらうような著名なお医者様が「死」について語っているもの。死は不可避、これは分かっている。ただ、人生最後の数日〜数週間を、少ない人数の人々が、病院で、チューブに繋がり、尊厳も本…人の意思もなく「生かされている」。その結果、本人も家族も苦しい時間を過ごし、やがて死にいたる。死が不可避である以上、延命措置で得られるメリットと、そのせいで避けられない苦痛などのデメリットを測り、メリットが大きければ延命すべきだが、そうでなければ意味がないのではないか。このような考え方は、著者の担当が脳神経外科であり、手術によって命は長らえても失明や障害が残ることが多いということも一因だろうから、主張をそのまま受け入れるには抵抗がある。とはいえ、ロジカルな反論はできない。受け入れ難いが、受け入れることになるんだろうなあ。また、医療政策や病院の経営にも言及されているが、人命は地球より重いとか言いながら、法律や政治はそうなっていないことを痛感する。「死すべき定め」以来の衝撃の一冊。続きを読む
投稿日:2021.05.12
Verfassungslehre
いかにもイギリス人らしい諧謔に富んだ本であると同時に脳神経外科医としての率直な告白の書でもある。著者はわたしと同年代、まさに残された時間を意識しながら自らの終焉をどう迎えるかに思いを巡らすあたりは、我…が身に迫るものがある。これを十代に読んだら理解不能、バリバリに働いていた四十代、五十代では、著者の思いは十分には伝わらなかったと思う。原題は「Admissions : A Life in Brain Surgery」というもの。訳者あとがきにあるが、表題を副題に移して自省としている。なかなかの好著。 書評 https://allreviews.jp/review/5475続きを読む
投稿日:2021.04.29
arno
みすず書房にしては、すらすら読めます。 ただ考えさせられます。 人の死について。「よき死」について。 ページivが金言のように美しい。 主に各章の終わりと、ページ288-289には著者の死への思いを…読み取れますが、基本的に死とは距離を置いた方なので淡々としています。 本当にみすず書房の本は装丁もよく内容もいいな〜と思うのですが、いかんせん高価です。本書も3520円です。 図書館で借りて読んでます。 本書の様な本を本棚に並べられる方が羨ましい。続きを読む
投稿日:2021.03.23
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